講義1(後期開講分) 平成29年度5回目

2017年10月17日。

夕方に講義1の「第2章」の2回目。講義の完成度が高すぎて、学生がついて来れなかったのではないかと、ちょっと不安。まず、屈折率の定義、入射面の定義の復習。電荷と電流の存在しない場合の電磁場の境界条件誘電率透磁率が不連続に変化する境界面を挟んで、電磁場がどのように接続するか)については、成分で表したものを対応するマクスウェル方程式とともにサイドの黒板にあらかじめ板書しておいた。境界条件を解くことにより、反射・屈折の法則が導出できるというのを、振幅条件からフレネルの公式、位相条件からは(広義の)スネルの法則が導出できるという説明の際に、位相の説明と波面=等位相面という補足を加えた。スネルの法則については、既に知っていることなので省略します。ただし、「波動光学的にはこんなやり方になるんだ」というのを、教科書で自習しておいて下さい。入射面の定義(=入射光線と境界面法線のなす面)から出発して、反射光線・透過光線が入射面内にあることは(教科書通り)簡単に示せますが、入射光線・反射光線・透過光線が同一面内にあることを先に示して、それが入射面と一致することをやろうとすると、恐ろしく難しい問題になってしまいますという補足も。

メインのフレネルの公式は、それに先立って、S偏光=TE偏光とP偏光=TM偏光の復習。そして、講義ではS偏光=TE偏光についてやり、レポート課題をP偏光=TM偏光についてとする、と宣言してしまう。自分で講義にならってレポートを仕上げる積りで本日の講義は聞いて下さい。

昨年度からやり方を偏光しているのは、xy面を境界面としした場合、DとBのz成分の連続性は、EとHのxおよびy成分の連続性が満たされれば自動的に満たされる、ということを使うように方針変更したこと。以前は、学部の2年生や3年生にとって、それを確かめることが学習だ、との考えでした。DとBのz成分の連続性は、∇・D = 0および∇・B=0から導出されるが、これらの式は∇×H = ∂D/∂tおよび∇×E = -∂B/∂tが満たされれば自動的に満たされる(正確には単色平面波に対して、かな)。単色平面波に対しては、a=k/kとして、∇×H = ε∂E/∂tおよび∇×E = -μ∂H/∂tはそれぞれa×H = -(ε/μ)1/2Eおよびa×E = (μ/ε)1/2Hとなるが、aE = 0およびaH = 0はこれらが満たされれば自動的に満たされる。これは、前回説明済み。電場または磁場の一方を与えて、他方をこれらのいずれかの式を使って計算するやり方をするので、自動的にz方向の境界条件は満たされてしまう。

S偏光=TE偏光の場合は、Eを与えて(y成分のみがゼロでない)、H = (ε/μ)1/2(a×E)を使って計算する。係数が分数の平方根だと、皆さんは解いている内に間違えてしまうので・・・とい事項については、企業秘密。

まず、垂直入射の場合ついて計算を行う。入射波と反射波についてはa = (0,0,1)で、透過波についてはa = (0,0,-1)。外積の計算を行い、Hを求める。入射波と反射波についてはHxに負号が付き、透過波については付かないので、「あれ、計算間違いをしたかな?」といいながら --- 間違いではありません(入射波に対してE = (0,E,0), H = (-H,0,0)の形は正しく、同時にE = (E,0,0), H = (0.H,0)の形お正しい)---、正解までたどり着く。つまり、最終的に係数をn/μに書き換えた後、両媒質のμを等しいとすると、教科書に書いてあるS偏光についてのフレネルの公式(垂直入射)になる。

時間がなかったので、まず斜入射の場合のaの式を書き、「あとは外積の計算を行うだけだ」という人はそれだけなので、計算して下さい(終わりです)、と。次いで、ここでは、Ey → Hxの変換係数が斜入射の効果でどうなったか、という見方をします。もちろん、|E|と|H|の変換係数は変わりません。cosがか掛って小さくなった形にななります。こうして斜入射の場合のフレネルの公式に至り、更に屈折率を用いた表式が教科書と一致することに言及。最後に、Hxを計算するということからは、垂直入射の場合のaのz成分が順にcosθi、-cosθi、cosθtに変わったということから、計算せずに今のことを理解することもできることを述べる。

予告編として、来週の講義では式だけでなく、数値例を示すことを述べえて終り。

時間がなくて、不細工な計算を行わなかったことが、「きれい過ぎて、学生の理解が不安」の所以。