講義2 平成28年度第10回目

2016年7月10日。

7/8の午後イチが10回目の講義。その前に、画面が切り替わってしまって書いた部分が失われてしまった、朝イチ(9回目)の残りを記す。

 

9回目

示強変数と示量変数を丁度熱力学的共役名ものが上下になるように列記した後、dU = TdS -PdV +μdnを指して、示強変数と示量変数が組みなっていることに言及。このような組になっているものを互いに熱力学的に共役というと説明。上下になるように列記したところ、共役な組を枠で囲む。さて、dU = TdS -PdV +μdnは、S, V,…が独立変数とし、T, P,…が従属変数であることを表していた。変数の間の関係式を示量変数の性質から考えて見ましょう。dU = TdS -PdV +μdnが書いてあるので、それに関する考察をしますね。Gについて行っている教科書が多いんですが、それは教科書を見て下さい。エントロピーS、体積V、モル数nの系を考え、その内部エネルギーをUとしましょう。その系をλ個合わせた合成系の内部エネルギーを考えましょう。それは、一つの系の内部エネルギーのλ倍になりますね。エントロピーS、体積V、モル数nの系の内部エネルギーをU(S,V,n)と書くと、λU(S,V, n) = U(λS, λV,λn)となりますね。この両辺をλで微分して、・・・、U = TS -PV +nμが得られます。同次式の定義と同次式に関するオーラーの定理を説明し、途中の U = S(∂U/∂S) + V(∂U/∂V) + n(∂U/∂n)が1次の同時式についてのオイラーの定理そのものであることを述べ、関係式U = TS -PV +nμはしばしばオイラーの関係式と呼ばれること言う。熱力学基本式と呼ぶ人もいる dU = TdS -PdV +μdn の類のものを、非平衡の熱力学の人などはギブス関係式と呼ぶことは、既に説明済み。ギブス・エネルギー定義 G = U -TS + PVを用いると、オイラーの関係式は G = nμとなる。のオイラーの関係式を微分して [微分はd、(∂U/∂S)などは(偏)部分係数]、dU = TdS + SdT -PdV -VdP + ndμ + μdn。dU = TdS -PdV +μdnを用いると、0 = SdT - VdP + ndμとなる。これはギブス・デュエム関係式と呼ばれる。分野によって呼び方が異なることはない。田成分系の場合は、nとμには分子種を表を添字が付き、積については全ての分子種に渡って和を取ることになる。単成分系の場合のギブス・デュエム関係式はモルエントロピーとモル体積を用いて更にdμ = -SmdT + VmdPとも表せる。化学ポテンシャルが温度の圧力の関数であることを表しています。μ(T,P)。

理想気体の化学ポテンシャル、これは正確には理想気体の化学ポテンシャルの圧力依存性。標準状態を表す添字「プリムソル」を説明する。教科書は標準圧力における化学ポテンシャルを基準にそれとは異なった圧力のが化学ポテンシャルを表す式が書いてあるが、それを板書し、Tが同じで圧力が異なることを言う。まずdμ = -SmdT + VmdPから(∂μ/∂P)T = Vm = V/nを言い、「一般に」と言うことで、μ(T,P2) - μ(T,P1) = ∫P1P2 (∂μ/∂P)TdP = ∫P1P2 (V/n)dP =  ∫P1P2 (RT/V)dP = RT ln(P2/P1)をやる。見慣れた形でしょう。理想混合気体の場合も同様。また、ダルトンの法則を使うと、理想混合気体については、モル分率xを用いた表現式になる。これは混合のエントロピーと同じ形をしていますね。G = ΣniμiとGにおける混合のエントロピーの部分の式(ΔmixG = RT Σni ln xiのこと)を比べると、混合のエントロピーによる化学ポテンシャルがわかると思います。

最後に質量作用の法則。ここでも、化学平衡ということをまず明言。相平衡のところでも、平衡 = 自由エネルギー最小の問題を解いた。ここでは、等温定圧の元での化学反応を考え、ギブスエネルギー最小の問題を解きます。例としては、水のイオン積を思い出して下さい(もちろん[H+][OH-] = ・・・も書く)。溶液の化学ポテンシャルをやった後にモル濃度用いた質量作用の法則はやります。ここでは、気体の科学ポテンシャルをやったので、教科書の気体の反応の例を挙げます。ダルトンの法則を用いてモル分率を持ちた表式には書き換えられますので、分圧を用いた表式をやります。以前に失敗したことがあるので、化学両論係数の符号の定義を明確にしておきます。まず、第1法則(熱化学方程式)のところで出てきた、反応系(原系)と生成系という語を再確認しましょう。材料の立場だと、反応物などという言葉も使われます。化学反応式の右辺を左辺へ移しても、左辺を右辺へ移しても本質的には同じだといいましたね。ここで、Δ反応○ = ○反応後 - ○反応前だったことを思い出しましょう。反応式の原系を生成系の側に移行すると、原系の化量論係数には自然に負号が付くんですね。この流儀で進めます。何に関してギブス・エネルギーを最小にするかを明らかにしますね。化学反応 ΣνiAi= 0 を考えましょう。モル数n1,n2,…に関してΔG = G生成系 - G反応系を最小にする問題です。aA + bB = cC +dD の場合だと、ΔG はcモルの物質Cとdモルの物質Dのギブス・エネルギーcμC - dμDからaモルの物質Aとbモルの物質Bのギブス・エネルギーaμA - bμBを引いたものです。モル数がn1→n1+dn1,n2,→n2+dn2,…と変化したとき、「aA + bB = cC +dDの場合にaモルの物質Aとbモルの物質Bが反応してcモルの物質Cとdモルの物質Dが生成すること」を一般化し、dn11 = dn22 = … = dnii = …が成り立ちます。dnii = dξとおくと、dn1 = ν1dξ, dn2 = ν2dξ,…,dni = νidξ,…となります。ξは反応進行度と旧呼ばれます。ξを使わずに汚く計算をした方が演習としてはいいのですが、時間がないのできれいにやります。δG = G(n1+δn1,n2+δn2,…) - G(n1,n2,…)を計算するしましょう。テーラー展開を行うと、δG = Σ(∂G/∂ni)T,Pδni = Σμiδni = Σμiνidξとなります。従って、G最小の条件はΣνiμi = 0となました。さて、この式にμiを標準圧力における化学ポテンシャルμi0(プリムソルの変わりに0を付けました)を基準に分圧piで表した式を代入しましょう。Σνii0+ RT ln(pi/P0)] = 0。時間がないので、丁寧に式変形しましょう。Σνiμi0 +RT Σνi ln(pi/P0)] = 0。Σνiμi0 の下に下線を引いて=ΔG0と書いた後、ln xyz = ln x + ln y + ln zの公式を逆に使えば、πi (pi/P0)νi = KP0, KP0 = exp[-ΔG0/RT]が得られる、として講義終了。

5分のオーバーであった。

 

10回目

午後イチの講義では、出席をとる前にΣνiμi0 +RT Σνi ln(pi/P0)] = 0 からπi (pi/P0)νi = KP0, KP0 = exp[-ΔG0/RT] までの途中過程を板書して、「朝イチの講義の終了後にこの導出の詳細を問われたので、補います」とした。標準圧平衡定数KP0を用いた式から、圧平衡定数を用いた式への変形は教科書通りですし、濃度平衡定数を用いた表現式への変形も同様です。また、講義の区切りと教科書の区切りが区別しにくいところがある、との指摘があった。7割くらいいは「区切り」よりも「繋がり」を重視してそしているが、残り1-2割では不要なのに区切りがわからないようにしており、更に残りの1-割は教員の無頓着さでしょう。ノートを取った後に整理するときに、自分だけの虎の巻を作る積もりになるといいのではないでしょうか?

 標準ギブスエネルギー変化、平衡定数の温度変化、熱力学と平衡定数がこの時間の内容。標準ギブスエネルギー変化については、標準に関しては標準状態(標準圧力)での値であることを表しており、後は標準エンタルピーや標準エントロピーのエンタルピーやエントロピーがギブスエネルギーの替わっただけで、反応○○だけでなく生成○○に付いても全く同じ。平衡定数の温度変化は温度依存性のことで、van't Hoffの定圧平衡式のこと。熱力学と平衡定数は、二つの内容が含まれ、本講義では区別する。

平衡定数の温度依存性を表すvan't Hoffの定圧平衡式は、途中まではKP0の温度依存性を表すのに、対数微分の形で解析するものとして進める。(d/dT) ln KP0 = (d/dT) [-ΔG0/RT] = -(1/R) [(∂/∂T)(ΔG0/T)]Pまで書いて、「さて、ここで以前に『それを使うときに詳細を述べます』といった、ギブス・ヘルムホルツの式を使うのですが、どうしましょう?」と。定義からG = H -TS。また、dG = -SdT - VdPなので(∂G/∂T)P = -S。Gの定義式はG = H +T(∂G/∂T)となる。つまりH = G - T(∂G/∂T)。「第二項の前の符号がプラスだったら、[∂(GT)/∂T]Pと直ぐに簡単にまとまるんですが・・・。」「まっ、計算したいのが [(∂/∂T)(ΔG0/T)]Pなので、[∂(GT)/∂T]Pでなく[(∂/∂T)(G/T)]Pを計算してみましょう。[(∂/∂T)(G/T)]P = -[G-(∂G/∂T)]P/T2が出るが、うっかりH = -(1/T2)[(∂/∂T)(G/T)]Pと書いてしまい、後で(1/T2)をT2に修正。= -(1/R) [(∂/∂T)(ΔG0/T)]Pの後に = -(1/R)[-ΔH0/T2]を書いてから最終の式(d/dT) ln KP0 = ΔH0/RT2を書いたときも、分母の2が抜けていてあとで修正した。物理的な解釈が重要である。つまり、ΔH0 > 0ならばdKP0/dT > 0、ΔH0 < 0ならばdKP0/dT < 0。ΔH0 > 0つまり反応後のエンタルピーが反応前のエンタルピーよりも大きい吸熱反応の場合は、温度が上昇するとそれを課緩和するように、反応が右へ進む。ΔH0 < 0の場合もも同様に、温度変化を緩和する方向に反応は進む。教科書に書いてあるように、ルシャトリエの原理し従う。

最後のところの前半は、たとえΔG0 < 0の場合でも(pCνCpDνD)/(pAνApBνB) = KP = exp[-ΔG0/RT] → ∞(pAνApBνB = 0)にはならないし、たとえΔG0 > 0の場合でも(pCνCpDνD)/(pAνApBνB) = 0のはなぜか(反応が完全に右や左に進んでしまわないのはなぜか)、という説明。必ずわずかでも成分が残って、ln xの形の混合のエントロピーの分だけ得をした方が、トータルの自由エネルギーとしては小さくなる、と言うことです。それがエントロピーというものです。

最後のところの後半は、「今まで理想混合気体の式を使ってやって来ましたね(希薄気体を対象にして、理想気体の近似を用いました)。最初の序論のところでも理想気体をやった後に非理想気体でしたね。」「すると、次にどの方向に進むかは想像がつきますね。」非理想気体の場合の扱いをやります。物理(統計物理)の人と化学(物理化学)の人でやり方が方針が異なります。非理想混合気体の質量作用の法則は、Σνiμi = 0に非理想気体の化学ポテンシャルの式を用いればよいというのが物理の人の立場です。それに比べると、化学の人はπi (pi/P0)νi = KP0の形を保とうとこだわるんですね。非理想気体ですから、μi = μi0  + RT ln (pi/P0) は成り立たないのですが、ある関数f(p)を導入して、μi = μi0 + RT ln (f(pi)/P0)と書くんですね。そうすると、質量作用の法則はπi (fi/P0)νi = KP0と書けますね。fはヒュガシティと呼ばれます。希薄極限で理想気体となることから、p~0でfにp漸近する、という性質があります。先ほどから対数微分という言葉を出していますが、逆なんですね。実験的にμを決めるところ、f = exp(μ/RT) + const.を決めるいうことになっています。μとfの関係の定数は標準状態の化学ポテンシャルと一意に決まるので、定数も決まってしまいます。

15分くらい早く終わった。目標1の試験について、問われて、少しコメントをした。

講義2 平成28年度第9回目

2016年7月8日。

今日は、朝イチに9回目の講義。午後イチに10回目の講義。朝の講義終了後に医者へ行ってから午後の講義の積りだったが、戻ってくる自信がなかったので、予定変更。既に疲れている。

9回目は、後半の2回目。化学ポテンシャルの性質、理想気体の化学ポテンシャル、質量作用の法則。朝イチなので集まりが悪い。出席を取るのを少し待って、dU = TdS -PdV +μdnを書いて、d'q = TdS (等号のところを強調して、「!?])とd'w = -Pdv + μdnを書き、「前回は、微小に離れた二つの状態を考え、それらを準静的可逆過程で結ぶ」と書きましたが、論理的には問題はないが「あれ!?」と思いませんでしたか? dU = U(S+dS,V+dV,...) - U(S,V,..)は、状態量の変化だから終状態と始状態にのみ依存して、途中の過程には依存しないから、準静的可逆過程で結び付けても構わないんですよね。準静的可逆過程外で結びつけると、d'wには摩擦による仕事が余分に加わるんですよね。そして、摩擦による発熱があるから、d'qからはその分を引くことになるんですね。それらがキャンセルして、準静的可逆過程での計算と一致するんです。

化学ポテンシャルの性質は、相平衡の条件を述べるもの。相平衡の条件のうち、力学的な平衡に相当する、共存する相の圧力が等しいというのも説明したいので、いつもヘルムホルツエネルギーを用いたものをやっている。ギブスエネルギーを用いたもの(等温定圧での相平衡)が(いろいろな)教科書に書いてあるが、それは教科書を見て下さい、と。まず、第2法則...自由エネルギー最小=平衡条件、と書く。等温定積閉鎖系の図(二相共存=α相とβ相の共存)と定積および閉鎖系の条件式を書き、ヘルムホルツエネルギーを体積およびモル数の分配の仕方に関して最小化する問題を解くことを述べる。独立変数が何かを認識しましょう。以前にも述べましたが、それができないと混乱してしまいます。全系のヘルムホルツエネルギーをV(α)について最小にする問題をといて、二相の圧力が等しい条件を出す。同様に計算して、二相の化学ポテンシャルが等しい条件を出す。相共存条件として、共存する相の温度、圧力、化学ポテンシャルが等しい、というのを書き、線で囲む。体積の分配に関して圧力が等しいことが出てきて、物質の移動に関して化学ポテンシャルが等しいのが出てきます。温度が等しいのは、エネルギーの移動に関するものです。

dU = TdS -PdV + μdnを残したまま、ギブス・デュエム関係式の説明へ。dU = TdS -PdV + μdnは、独立変数としてS, T,..をとり、T, P,...は従属変数であることを表していました。そのような、状態変数の間に成り立つ関係式について述べます。示強変数と示量変数と言う分類があったことを思い出して下さい。

(勝手にトップ画面に切り替わって、入力した多くが消えてしまった。今日はもう元気がない。)

講義2 平成28年度第8回目

2016年7月6日。

後半(目標2)の1回目。目標1の試験は、来週行うので、8回目が後半1回目になる。

その前に、講義終了後に、かつて○○センターというところの教員を兼担していた頃に一緒だった先生をお見掛けし、少し立ち話。旧交を暖められるのは、いい。

自由エネルギー、平衡条件、熱力学の関係式、開いた系が節タイトルだが、前の二つは一緒に行う。つまり、自由エネルギーを導入して、熱力学第2法則を等温過程に対して書き換える。これを行うために、前回の「外界のエントロピー」のところを復習。また、理想気体の断熱圧縮のところも引き合いにして、今までは基本的には孤立系が対象であったということを認識させる。さて、等温系の外界、熱欲とは何ぞや、という問い掛け。なぞ掛けを残したまま進んで欲しいような雰囲気もあったが、外界と系の間で熱のやり取りがあっても、温度の変化が無視できるくらい外界の大きさが大きいということは述べる。等温過程の場合に熱力学第2法則を書き換え、更に定積の場合と定圧の場合にその不等式をそれぞれヘルムホルツエネルギーとギブスエネルギーを使って表現して、孤立系におけるエントロピー増大則と同様な説明を行う。正力学の問題における平衡の条件が力学的ポテンシャルが最小だったことと同様な意味を自由エネルギーは持っていて、熱力学ポテンシャルと呼ばれることもある。つまり、熱平衡を求める問題は、熱力学ポテンシャル最小の問題であった。実は、もうひとつの「ポテンシャル」の意味も持っている。高さhにある質量mのおもりに滑車をつけて仕事を取り出す場合、摩擦がない場合に取り出せる最大の仕事は、重力ポテンシャルmghに等しかった。熱力学的な場合にも、系から仕事を取り出すとき、摩擦がなく、準静的に仕事を取り出せる場合の最大の仕事は、熱力学ポテンシャルの差になる。逆に、系の状態を変えるのに必要な仕事という問題にすると、ΔU-TΔS≦wの符号を変え必要はない。等号が成り立つのは準静的可逆過程の場合で、最小仕事が熱力学ポテンシャル差だということが導かれる。教科書では、正味の仕事というのを定義して書き換えているが、数式をいじくって理解したいのならばそうする必要があるが、wを静水圧による仕事と正味の仕事に分けるってところで混乱してしまうので、これで済ませましょう。

熱力学関係式は、微小なだけ異なる二つの状態を考えて、その間にどんな関係式が成り立つかを考えて見ましょう、とのイントロ。熱力学をよくわかっていない者は、そのような熱力学関係式を熱力学のポイントだというが、熱力学の魂は第2法則、つまり不等式でう。もちろん、平衡状態に限定した関係式の重要性は言うまでもないが。まず第1法則 dU = d'q + d'wを書く。二つの状態を準静的可逆過程で結びつけることを考えましょう、として静水圧による仕事 d'w = -PdV と第二法則 d'q = TdS を書いて、dU = TdS - PdVを得る。dU = U(S+dS,V+dV) - U(S,V)を書いて、SとVを制御した実験を行うことを考えましょう(エントロピーを制御した実験は難しいですが)。そうすると、この式の意味がわかるでしょう。Hを用いてdU = TdS - PdVを書き換えることもできるし、AやGを用いて書きえることもできる。それぞれがどの状態量を独立状態量、状態変数とした場合の式か、どの量を制御した実験なのかは、同様にわかるでしょう。これらの式は、第1法則と第2法則を併せたものなので、熱力学基本式と呼ぶ人もいます。非平衡の熱力学の分野では、ギブス関係式と呼ばれることもあります。次に、dU = U(S+dS,V+dV) - U(S,V)をテーラー展開して、温度Tおよび圧力Pを内部エネルギーUのS編微分およびV編微分で表すことができることを言う。これも、こういう実験を行って・・・と言う話をする。H、A、Gについても同様。巻マクスウェル関係式まで説明して、ギブス・ヘルムホルツはそれを使うところでやります(予習しておいてくれてもいいですよ)でここは終わり。

T = (∂U/∂S)V、-P = (∂U/∂V)Sを残したまま、開放系へ拡張しましょう、という話をする。dU = TdS - PdV (閉鎖系 n=一定)と書いてから、「系に物質量dnの物質が流入したときに系にされる仕事が μdn となるように係数μを導入する」と書く。dU = TdS - PdV(閉鎖系)は、dU = TdS - PdV + μdn(開放系)に拡張される。T = (∂U/∂S)V、-P = (∂U/∂V)Sの下付き添え字に「,n」を加えた後、「同様にとして」μ = (∂U/∂n)S,Vを書く。dU = TdS - PdV + μdnをH、A、Gで書き換えた式も書いて、(∂G/∂n)T,P = (∂A/∂n)T,V = (∂H/∂n)S,P = (∂U/∂n)S,V = μを書く(敢えて(∂U/∂V)S,Vまで)。実験がイメージしやすいのは(∂G/∂n)T,Pでしょうと言って、化学ポテンシャルμが状態に依存した量であることをいう。

これで終わり。この記録を書いていて、熱力学関係式のところのイントロで、もう一言加えればよかったことに気が付く。つまり、「微小なだけ異なる二つの状態」を考え、状態量の間の変化を調べる訳だから、「二つの状態にのみより、途中の過程に寄らない」のである。

 

講義2 平成28年度第7回目

2016年7月2日。

とうとう7月ですね。早いですね。

7/1(金)は、講義2の目標1(前半)の最後の講義。何人かが60%の出席率に満たないようで、心配。

エントロピーの計算、エントロピーの分子論的意味、熱力学第3法則、標準エントロピーが内容。

エントロピーの計算は、まず理想気体の等温膨張から。まず、第1法則の式を書いて、温度T=一定だからdU = 0。従って、d'q = -d'w。準静的過程に沿ってd'q/Tを積分するから、d'wは静水圧力による仕事d'w=-PdVになる。従って、d'q=PdV。理想気体の状態方程式を用いて、P = nRT/Vと表現して、ΔSの積分を実行。まず計算してみましょうとしてここまで。次に、ΔS = nR ln(V2/V1)の結果についての解釈。体積が増加するとΔSが正となることから、自由膨張は自発的に起きるが、その逆はエントロピーの減少する過程だから自発的に起きないことを説明。次に外界のエントロピーΔSeの計算を行う。自由膨張では系は外界と相互作用しない。全系が孤立系になるように外界を定義して、系の体積変化に伴って外界から熱qが系に流れ込む場合を考える。外界を系と考えると、外界に対て「流入」する熱は-qである。エントロピーの計算と同様にしてq = nRT ln(V2/V1)となる。外界の温度Tは一定だから、エントロピーの定義に従って計算するとΔSe = -q/Tとなり、今のqの結果からΔSe = -ΔSとなる。つまり、系が外界と相互作用しながら準静的に変化する場合は、全系のエントロピー変化はゼロである。自由膨張では外界のエントロピー変化はないので、全系のエントロピー変化は正である。

温度変化に伴うエントロピー変化は、熱容量が定数の場合は同じ形になるから省略。教科書では定圧変化を扱っているが、定積変化の場合も同様。次に相転移に伴うエントロピー変化の説明。まず、ΔS = ΔH/T の形が、q/Tと同じことを説明。等温定圧での相転移を考えるんhttp://blog.hatena.ne.jp/charlie_amori/charlie-amori.hateblo.jp/edit#sourceだよと言って、沸点において準静的に沸騰が起きるという話をする。え、沸騰って、液体中に気泡が発生して、「ボコボコ」ってなるものでしょ。それが、準性的に起きるって…!?□△…。融解meltingを考えましょう。固体と液体が共存していて、界面が動いて液体領域が増加する。これなら、界面の動きがゆっくりなな場合を想像できますね。沸騰の場合も同様です。ここで、慣用の話。融解はmeltingなのに、ΔSfus = ΔHfus/Tと融合を表すfusionというのが使われていますね。潜熱についてもこの慣用が横こっていて、融解熱、融解の潜熱と言う場合、latet heat of fusionと言われますね。さて、もうひとつ慣用の話、International Union of Pure and Applied Chemistryでは、変化をΔの前に付けることを推奨しています。Δ変化□ = □ -□ です。

分子論的な意味の前に、皆さんにdS = d'q可逆/Tと印象付ける冗談を言いましょうかね。昔、わかっている学生がいて、「今日の私の体温は何度です。朝食で摂取したカロリーは幾つ幾つです。従って、増加したエントロピーはそれを体温で割ってこれこれになります。と言うことです。」と説明していました。これが冗談であることはわかりますよね。可逆的食物摂取ってできると思います? 準静的ならばできますか? 昨年度もこの話をしましたが、「可逆的食物摂取って、こんな感じでしょうかね」と考える学生がいました。冗談でやるのならいいけれども、体を壊すから実際にはやらないように。えげつないことになってしまい兼ねません。準静的についても。

エントロピーの分子論的意味といては、ボルツマンの原理を出してしまう。そして、(微視的)状態の数が、一分子の場合は体積Vに比例し、N分子の場合は体積VのN乗に比例することを説明。それをボルツマンの原理に用いると、S = kB ln VN = NkB ln Vと理理想気体の膨張のところの同じ意味の式になる。N~NAアボガドロ数)なので、状態の数は膨大な数になります。そのような数を扱う場合、対数微分という方法がありましたよね。ボルツマンの原理も「確からしい状態」=もっとも状態の数の大きな状態を求めるのにそれの相当する方法を用いたと思って下さい。

次の第2法則へ進むが、ネルンストの熱定理を介して進めるのが公理的熱力学のやり方になるが、ここでは分子論的に理解する。状態の数の対数エントロピーなので、エントロピーゼロは、状態の数がひとつであることを意味している。純物質、完全結晶と言うのがミソ。T = 0なので分子は振動しない。格子点に固定されている。不純物が含まれていれば、どの格子点に不純物を置くかの自由度が残るので、状態はひとつではない。また、完全結晶でない場合は、どこに格子点を入れるかの自由度が生じる。例えば、空格子点をどこにするか。エントロピーゼロとは、そういうものです。

標準エントロピーについては、標準状態におけるエントロピーということで、標準エンタルピーと同じ意味。標準状態 = 1気圧。第3法則エントロピーと言う語があるが、今までのエントロピーの計算では、相対値つまりエントロピー差を計算してきたことを思い出して下さい。第3法則を用いて、相対値でなくて絶対的な値を決めましょうというものです。反応エンタルピーと同様に反応エントロピーがあります。また、そのうちで特別なものとして、生成エントロピーがありますが、これも生成エンタルピーと同様ですね。

講義2 平成28年度第6回目

2016年6月29日。

第2法則の回目。熱機関の効率、熱力学的温度、クラウジウスの式、エントロピーが内容。熱機関の効率の内容は、カルノーの定理。熱力学的温度はそのものだが、最近は「可逆サイクルに流入および可逆サイクルから流出する熱を温度として用いることができる」で済ましている。もちろん、経験的温度(絶対温度)一致するように温度の原点を定めることができることは、述べる。クラウジウスの式は、カルノーの定理の書き換えだから難点はない。エントロピーは、可逆な経路に沿ってd'q/Tを積分するとエントロピー変化になる、というだけのこと。

その前に、前回疲れてしまって強調すべき点で強調できてないところがある。まず、熱力学第2法則は、「覆水盆に返らず」を定式化したものであること(エントロピー増大則のところで述べた)。可逆サイクルの定義は、カルノーの定理のところで再度明確に述べる。トムソンの原理とクラウジウスの原理の等価性の証明において、一方に反する過程が存在した場合、「それを他の過程やサイクルと組み合わせて」、他方に反する合成機関を構成することができる、という性質を言い忘れている。分解では不都合なのである。例えば、トムソン原理に反する熱機関があったとして、それを解析してその中でクラウジウスの原理に反して低温熱源から高温熱源へ熱が移動するだけの部分を残すように分解する。分解後の部分部分がサイクル(=エンジン)として動作する保証はない。ある大きさでエンジンが動作したとして、それのミニチュア(からなる合成機関)が動作するって言えますか?

カルノーの定理は、(同じ熱源の間で働く)可逆熱機関の効率は全て同じという前半と、一般の熱機関の効率は(同じ熱源の間で働く)可逆熱機関の効率を超えない問い後半からなる。前半は、カルノーサイクルが可逆サイクルであり、カルノーサイクルの効率が熱源の温度のみによっていたことから、可逆熱機関の効率は熱源の温度のみによるということと等価である。カルノーの定理の後半に反する機関が存在すると、クラウジウスの原理に反する過程が構成できてしまう、というのが内容。ここでも。「合成機関を構築することができる」である。カルノーの定理の後半に反する機関が存在すると、トムソンの原理に反する過程が構成できてしまう、という証明も可能であるが、コメントのみにする(前回よりは疲労の度合いはましだが、セーブします)。後半が理解できれば、前半は自明に近いと思う。

クラウジウスの式(不等式)では、サイクルを系として、系に流入する方向を正として、カルノーの原理の後半を書き換える。それを一般化する。そして、それに基づいて(それを参考にして)、(便宜のために)新しい状態量「エントロピー」を定義しましょう。すると、クラウジウスの式を更に書き換えることができ、孤立系に対しては「エントロピー増大則」「エントロピー最大の原理」となる。全系が孤立系になるように系+外界を定義すると、全系に対するエントロピー増大則になる(最近は、正のエントロピー生成という表現は紹介していない)。一度増えたエントロピーは、減少させることはできないんだよ。あと、折角私が担当講師なのだから、「デーモン」という語を紹介。「神様、反省していますので、なかったことにして下さい」とお願いしても、エントロピーを減らすことはできないんだよ。物理学では、神でなくデーモンと呼びます。エントロピーを減少させるデーモンを考えることはできて、例えば自由膨張の逆の過程を実現するデーモンは、マックスウェル・デーモンと呼ばれています。分子レベルのデーモンがいて、右方向の速度を持った分子に対しては膜の穴を開いて、逆方向だったら閉じることをしたら、自由膨張の逆の過程が実現できますよね。マッドに思えるかもしれませんが、計算機制御されたマックスウェル・デーモンを実現したとしましょう。分子(の速度の)識別などの情報エントロピーを含めた全系のエントロピーを考えると、増大しているというのが最新の研究です。計算機を含めて全系を考えるんですね。

講義2 平成28年度第5回目

2016年6月24日。

今日は、演習をやってから、熱力学第2法則へ。第2法則が熱力学の魂。カルノーサイクルをやって、熱力学第2法則(「トムソンの原理」と「クラウジウスの原理」まで)、可逆過程を不可逆過程まで。その前に・・・講義開始時に疲労困憊。最低の講義。

熱力学第2法則は、「第二種永久機関は存在しない」というオストワルトの原理も自然に含む。第2種永久機関を言うからには、第1種永久機関も言わなければならない。実は、第1法則の範疇に含まれる第1種永久機関は、まだ説明していない。演習終了後に、「第2法則が熱力学の魂」と並行して、永久機関の研究の「産業的」な点を述べる。騙し絵の第1種永久機関の話しは、絵が下手なのでしたくなかったが、やって後悔。自由膨張の不加逆性は、イントロとしてよいと思う。あらかじめ、「第2法則において、エントロピーという完全に新しい量を導入します」との宣言もする。第1法則の範囲の事項で明確に説明していないことがもうひとつ。第一法則の表式における熱と仕事の符号を、系の内部エネルギーが増加する方向を正に取ることを言っていない。つまり、「系に流入する熱」「系がなされる仕事」である。これは、サイクルを考える場合には例外的にエネルギーの流れる方向に矢印をつけて表すが、それ以外は暗黙に系に向かって矢印がついているものとする、問うようなもの。

イントロの後にカルノーサイクルに入る。講義では、「きれいに」行うことにしている。しかし、熱力学で初学者がつまづくのは、どれが独立変数でどれが従属変数かの区別がわからなくなること。かつては、それをフォローしながらやったこともあったが、コメントのみ。第2法則のイントロで行うカルノーサイクルは、「理想気体を作業物質として用いた」が頭につく。そして、最終的には熱効率が熱源の温度だけに依存する結論に至る。カルノーサイクルが可逆サイクルであることも、ツボなので、触れる。ただし、カルノーの定理は、次回の項目。時間がなくて、断熱過程の計算を省いてしまった。

熱力学第2法則として、「トムソンの原理」と「クラウジウスの原理」および「オストワルトの原理」の前に、ジユールの熱の仕事等量の実験の逆が起きないこと、熱拡散の不可逆性、物質の相互拡散の不可逆性、化学反応の不可逆性の例も出す。トムソンの原理とクラウジウスの原理の等価性は、論理学的な色彩が強いが、「これぞ熱力学」と言うもの。これに関しての私の言葉は、「熱力学は思索の学問」。

不可逆過程に関しては、私ならではの表現をしている。外界まで含めて全ての状態を本に戻すことができるか否かが可逆・不可逆の基準。最終的には、熱力学では「準静的過程=可逆過程」である、ということ。これは、現実世界では(摩擦の存在する世界では)、可逆過程は存在しないことを意味している。私が、ICUで3日間の昏睡から奇跡的な生還を果たした者が講義をするのだから、「全ての過程が不可逆だと言っても、いろんな度合いがあるんだよ」との付加的コメントを行うのがサービス。「外界に変化を残してもいいから、系の状態を元に戻しなさい」というようなことができるかどうか。つまり、回復不能な後遺症、「一般でいう」不可逆な変化が心身に残ることがある。人生を大切にしなさいよ。疲れてしまって、良くない。学生も疲れている。梅雨と夏が1日のうちに何回も切り替わるからか。

講義2 平成28年度第4回目

2016年6月22日。

熱力学第1法則の2回目(後半)。ジュールの法則、気体の熱容量、相変化に伴う熱量、反応熱、反応熱の温度依存性、理想気体の断熱変化。ジュールの法則は、熱の仕事等量のジュールの実験ではなく、理想気体の内部エネルギーに関するジュールの法則。熱の仕事等の実験は、前回の事項。これに関しては、エネルギーの変換と言うことを考えると、困難な実験である、とコメント。おもりの位置エネルギーを最終的に熱エネルギー(正確には、内部エネルギーの増分)に変換する実験。実は途中で水の流れのエネルギーに変換され、それが全て熱に変換される必要があるんですね。そう考えると、おもりに運動エネルギーが残っていてはいけないんですね。

理想気体の内部エネルギーに関するジュールの法則は、理想気体の内部エネルギーが温度のみの関数であるというもの。既に、大きさも分子間相互作用もない分子からなる系が理想気体であることを述べているので、直感的にはわかるはず。単原子分子の場合から、多原子分子への拡張を行う。並進の自由度、回転の自由度、振動の自由度等の導入を行う。ジュールの行った実験を理解することは、熱力学第1法則になれるののにいいので、多原子分子の話の前に行う。また、気体の自由膨張をここで導入する。凍結された自由度という語も出した。

気体の熱容量は、最終的に比熱比までをやる。定積熱容量の計算は、ジュールの法則のところの結果により直ぐにできる。Mayerの式を通じて定圧熱容量を計算するには、前回時間切れでできなかった、定積熱容量と定圧熱容量の関係を使わなければならない。これには、偏微分において一定に保つ変数を変更したときの公式(熱力学独特のものである)の説明をしなければならない。これを今回行うのは、いいアクセントではないだろうか? この公式の説明の後に「こんがらがった頭を冷やす、整理するのに、少し時間を置きましょうか。」と。

相変化に伴う熱量、反応熱、反応熱の温度依存性は、偏微分において一定に保つ変数を変更したときの公式に比べると、単なる算数である。ヘスの法則もキルヒホッフの法則も。もちろん、エンタルピーに慣れる意味は大きい。また、化学量論係数の導入も行う。吸熱と発熱の定義も行う。反応エンタルピーが正だと吸熱なのか発熱なのか、札とどちらなのか、各自確認を行っておいて下さい。吸熱や発熱の英語は初耳かも知れないが、それには触れられなかった。生成熱の定義や標準状態の定義もやる。標準状態って、人間が実験を行う上での言葉で、物質の状態が標準的って訳ではないよ。

理想気体の断熱変化は、「あ、熱力学第1法則だけでも、物質の性質の計算ができるんですね」というもの。しかし、次の事項(ツボ)は述べる時間がなかった。断熱変化だから、第1法則の式から熱が消えて、既にやっている静水圧よる仕事だけで計算ができるんですね。つまり、第2法則をやっていないので、熱d’qについての表式がないんです。熱容量の式では、第1法則を用いて熱を表現したんです。熱に対して、静水圧による仕事のような表式を当てはめて、何か計算した訳ではないんです。尚、理想気体の断熱変化は、第2法則の出発点のカルノーサイクルの計算を行うのに必要です。つまり、計算をしただけ。二分オーバーしたが、一定に保つ変数の変更の公式のあとの時間をもう少し短くすれば良かったのかもしれない。

さて、演習について伝えなければならない。実在気体に関する計算問題にするか、第1法則に関する計算問題にするか? この時間がないことは予想できたので、一定に保つ変数の変更の公式のあとの時間にコメントだけした。

実は、指がこわばっている。昨年度は、前期の終わりに関節痛で板書でき状態になり、パワーポイント講義にした。今は痛みは治まっている。カロナールを服用したせいだろうか。講義1の採点等を片付けてしまわないと、関節への負担が蓄積して、二の舞になり兼ねない。