講義2 平成28年度第7回目

2016年7月2日。

とうとう7月ですね。早いですね。

7/1(金)は、講義2の目標1(前半)の最後の講義。何人かが60%の出席率に満たないようで、心配。

エントロピーの計算、エントロピーの分子論的意味、熱力学第3法則、標準エントロピーが内容。

エントロピーの計算は、まず理想気体の等温膨張から。まず、第1法則の式を書いて、温度T=一定だからdU = 0。従って、d'q = -d'w。準静的過程に沿ってd'q/Tを積分するから、d'wは静水圧力による仕事d'w=-PdVになる。従って、d'q=PdV。理想気体の状態方程式を用いて、P = nRT/Vと表現して、ΔSの積分を実行。まず計算してみましょうとしてここまで。次に、ΔS = nR ln(V2/V1)の結果についての解釈。体積が増加するとΔSが正となることから、自由膨張は自発的に起きるが、その逆はエントロピーの減少する過程だから自発的に起きないことを説明。次に外界のエントロピーΔSeの計算を行う。自由膨張では系は外界と相互作用しない。全系が孤立系になるように外界を定義して、系の体積変化に伴って外界から熱qが系に流れ込む場合を考える。外界を系と考えると、外界に対て「流入」する熱は-qである。エントロピーの計算と同様にしてq = nRT ln(V2/V1)となる。外界の温度Tは一定だから、エントロピーの定義に従って計算するとΔSe = -q/Tとなり、今のqの結果からΔSe = -ΔSとなる。つまり、系が外界と相互作用しながら準静的に変化する場合は、全系のエントロピー変化はゼロである。自由膨張では外界のエントロピー変化はないので、全系のエントロピー変化は正である。

温度変化に伴うエントロピー変化は、熱容量が定数の場合は同じ形になるから省略。教科書では定圧変化を扱っているが、定積変化の場合も同様。次に相転移に伴うエントロピー変化の説明。まず、ΔS = ΔH/T の形が、q/Tと同じことを説明。等温定圧での相転移を考えるんhttp://blog.hatena.ne.jp/charlie_amori/charlie-amori.hateblo.jp/edit#sourceだよと言って、沸点において準静的に沸騰が起きるという話をする。え、沸騰って、液体中に気泡が発生して、「ボコボコ」ってなるものでしょ。それが、準性的に起きるって…!?□△…。融解meltingを考えましょう。固体と液体が共存していて、界面が動いて液体領域が増加する。これなら、界面の動きがゆっくりなな場合を想像できますね。沸騰の場合も同様です。ここで、慣用の話。融解はmeltingなのに、ΔSfus = ΔHfus/Tと融合を表すfusionというのが使われていますね。潜熱についてもこの慣用が横こっていて、融解熱、融解の潜熱と言う場合、latet heat of fusionと言われますね。さて、もうひとつ慣用の話、International Union of Pure and Applied Chemistryでは、変化をΔの前に付けることを推奨しています。Δ変化□ = □ -□ です。

分子論的な意味の前に、皆さんにdS = d'q可逆/Tと印象付ける冗談を言いましょうかね。昔、わかっている学生がいて、「今日の私の体温は何度です。朝食で摂取したカロリーは幾つ幾つです。従って、増加したエントロピーはそれを体温で割ってこれこれになります。と言うことです。」と説明していました。これが冗談であることはわかりますよね。可逆的食物摂取ってできると思います? 準静的ならばできますか? 昨年度もこの話をしましたが、「可逆的食物摂取って、こんな感じでしょうかね」と考える学生がいました。冗談でやるのならいいけれども、体を壊すから実際にはやらないように。えげつないことになってしまい兼ねません。準静的についても。

エントロピーの分子論的意味といては、ボルツマンの原理を出してしまう。そして、(微視的)状態の数が、一分子の場合は体積Vに比例し、N分子の場合は体積VのN乗に比例することを説明。それをボルツマンの原理に用いると、S = kB ln VN = NkB ln Vと理理想気体の膨張のところの同じ意味の式になる。N~NAアボガドロ数)なので、状態の数は膨大な数になります。そのような数を扱う場合、対数微分という方法がありましたよね。ボルツマンの原理も「確からしい状態」=もっとも状態の数の大きな状態を求めるのにそれの相当する方法を用いたと思って下さい。

次の第2法則へ進むが、ネルンストの熱定理を介して進めるのが公理的熱力学のやり方になるが、ここでは分子論的に理解する。状態の数の対数エントロピーなので、エントロピーゼロは、状態の数がひとつであることを意味している。純物質、完全結晶と言うのがミソ。T = 0なので分子は振動しない。格子点に固定されている。不純物が含まれていれば、どの格子点に不純物を置くかの自由度が残るので、状態はひとつではない。また、完全結晶でない場合は、どこに格子点を入れるかの自由度が生じる。例えば、空格子点をどこにするか。エントロピーゼロとは、そういうものです。

標準エントロピーについては、標準状態におけるエントロピーということで、標準エンタルピーと同じ意味。標準状態 = 1気圧。第3法則エントロピーと言う語があるが、今までのエントロピーの計算では、相対値つまりエントロピー差を計算してきたことを思い出して下さい。第3法則を用いて、相対値でなくて絶対的な値を決めましょうというものです。反応エンタルピーと同様に反応エントロピーがあります。また、そのうちで特別なものとして、生成エントロピーがありますが、これも生成エンタルピーと同様ですね。