講義2 平成29年度 第14回目

2017年7月27日。

昨日の講義の記録を1日遅れで。一昨日よりは、余裕があったように思う。一昨日に採点を終了させた目標1(前半)のレポートについて、返却用のコピーを割りとスムースに作製できた。しかし、次回7/28には、目標2の演習の回収と目標2のレポート課題の配布を行わなければならず、内心はあせっている。そのため(演習の解答・解説の作製をしていて)、教科書を講義室へ持っていくのを忘れるのをやらかした。返却を行っている間に(教室の前に置いておいて、取りに来てもらう)、教科書を取りに帰った。

さて、まず最初は部分モル量。導入として、理想混合気体・理想混合溶液の場合は、成分iのモル体積をVi*としたとき、全体積はV=ΣniVi*となる(niは成分iのモル数)。非想混合気体・非理想混合溶液の場合は、その関係は成り立たない。混合に伴う体積変化がある。部分モル量を定義すると、V=ΣniVi*に変わる式が得られる。例として、部分モル体積Vi=(∂V/∂ni)T,P,{nj;j≠i}を挙げましょう(一定に保つ変数がT,Pであることがポイントなので、その箇所は黄色で)。同じ系をλ個合成した系を考える、というギブス・デュエム関係式の導出のときと同じことをV(T,P,{ni})に行う。すると、、V=ΣniViが得られる。ギブス・デュエム関係式のところで出てきた、オイラーの関係式G=Σniμiと全く同じ形ですね。部分モル内部エネルギーも同様に定義できて同じ関係式が成り立ち、またエントロピーや他の量でも同様です。

次に理想希薄溶液。理想性つまり(混合による体積変化や内部エネルギー変化がなく)混合エントロピーの効果のみが存在するケースが理想溶液以外にもう一つ存在するといった、その条件をやります。この場合は、溶媒と溶質の区別が本質的になって来て、量の少ない方が溶質で多い方が溶媒です。溶質の量が少なければ、混合による体積変化や内部エネルギー変化は有効でなくなります。物質に依らず、このような無限希釈は必ず存在します。どの程度なら十分に希薄なのかは、物質に依ります。混合のエントロピーのみが効いてくるのだから、化学ポテンシャルにはRT ln xの形で入ってきます。溶媒については、μ溶媒(T,P,x溶媒)=μ溶媒*(T,P)+RT ln x溶媒, x溶媒~1となります。 x溶媒→1の極限が取れるので、μ溶媒*(T,P)は既に何度も出てきていますが、溶媒だけの純物質の化学ポテンシャルです。溶質については、、μ溶質(T,P,x溶媒)=定数+RT ln x溶質, x溶質~0となりますが、x溶質→1の極限は取れないので、定数は純物質の化学ポテンシャルとはなりません。μ溶質プリムソル(T,P)と書きますが、μ溶媒*(T,P)のようにすんなりと片の付くものではありません。x溶質~1のときには、非理想性の項が加わってくることになります。

最後にヘンリーの法則。ラウールの法則が理想混合溶液と理想混合気体の平衡だったので、今度は理想希薄溶液と理想混合気体の平衡を考えます。溶媒に関しては、ラウールの法則と全く同じです。溶質についてのみ平衡条件を考え直しても見ましょう。・・・結局、μ溶質*(T,P)がμ溶質プリムソル(T,P)に置き換わるだけで・・・しかし、μ溶質プリムソル(T,P)は得体が知れないので、x溶質(g)=x溶質(l)exp[・・・/RT]よりは進まなくて、両辺に全圧を掛けても分圧がp溶質= K溶質 x溶質(l)とはなっても、比例定数 K溶質という以上のことは何も言えない。

実は時計を見誤って、残り25分強のところで「4分位オーバーしてしまいました」と言ってから、あれ30分間違えている、と。そこで、圧力-組成のグラフを見て、溶媒についてはラウール、溶質についてはヘンリーという説明を加えた。あせって早く終ってしまったんです。しかし、「先生、これの説明が抜けていますよ」ってこともなかった(聞いたけれども)。

講義終了後に演習の解答・解説を完成させ、更にはレポート問題もほぼ完成させた。試験問題作成もやらねば。