講義2 平成29年度 第1回目

2017年6月9日。

今日から講義2(普通の科目名なので、科目名を出しても構わないが、講義1とのバランスで講義2としておく)の開始。今日は1回目。昨年度の記録を見直すのは、役に立つ。昨年度には、出張で2回休講にし、補講を行っている。本年度は、個人的な都合で休講1回となるので、本日に補講について学生と相談して決める。免疫抑制剤服用者なので・・・と言う話の後にするのが効果的かと思う。それに加え、昨年度は研究関連の出張だった、つまり「あなが方は、最先端で活躍している大学教員から講義を受けられる」ことに言及。昨年度は、熱力学は科学リテラシーである、と言うのを述べずに、反省しているので、本日は述べる。補講の時間は決まったが、欠席者が多いのが気掛り。

そのような話の後に講義。教科書を購入していない学生が多数。まず、巨視的なものの見方をする体系だという説明。統計力学が微視的なものの見方をする体系で、原子・分子の微視的な情報を平均して巨視的な量、例えば温度とか圧力とかを求めるものであるのに対し、熱力学は原子・分子に立ち入らない、と言う話をする。教科書に該当のページも板書。巨視的な体系としては、流体力学や弾性論などの連続体の体系があることに言及。毎回のことだが、教科書に該当の項目はない。私が講義をするのだから、というもの。流体力学で扱うのは平衡状態ではなくて、流れのあるもの。

温度とはなにな? それを学ぶのは熱力学の一つの目標です。今まであなた方が習ってきた温度は、経験的温度というものです。厳密な熱力学温度を習います。

教科書を少し戻って、系と外界の話を。まず、系と外界への分離の話を、実験系を引き合いにしてする。その後、系と外界の話を。孤立系から入り、閉鎖系、開放系を説明。

(あなた方がこれから学ぶ)初等熱力学は、平衡状態を対象とする。時間が十分経過して、変化がなくなった状態が平衡状態だが、注意が必要。物体を低温と高温の熱源の間に挟んだ例を挙げ、十分に時間が経過した後に温度分布は変わらなくなるが、これは非平衡定常状態。(定常な)熱流が存在する。熱力学第ゼロ法則の話へ。断熱容器の中に物体A、B,Cと閉じ込めて、AとB、BとCを熱接触させる。十分に時間が経過しすると、状態に変化がなくなる。AとB、BとCが平衡になる。ここで、Bを取り除いてAとBを接触させても、AとCは平衡になっている。化学熱力学では、この推移則の形の第ゼロ法則が出てくる。「温度計で温度を測る」ということに関連して重要性があるから。物体Aを温度計に接触させて温度を測り、次に物体Cを温度計に接触させて温度を測って、同じ温度だったら・・・というような話。実は、十分に時間が経過すると、巨視的には変化のない状態、平衡状態になること自体の方が重要性は高い。動的平衡と言う話をしましょう。液体と気体の平衡を考えましょう。液体からの蒸発と気体からの凝集が釣り合った状態が平衡状態で、平衡状態を微視的に見ると、蒸発と凝集の変化がありますね。巨視的に見ると変化がない、というのが重要なんですが、変化のないような(時空の)スケールが存在するというのが正確です。そのようなスケールの現象に熱力学が適用可能なのです。

推移則の形の第ゼロ法則に基づいて、非平衡定常状態の例の系を考えてみましょう。平衡にある系の部分系は、また平衡にある、とも言えます。定常な温度勾配のある系の一部を取り出して、断熱容器の中に入れたとしましょう。時間と伴に状態は変化しますね。平衡状態ではないことが分かりますね。第ゼロ法則のA~B~Cの系については、部分系が平衡にあるりますね。

理想気体の話を先にしましょう。あなた方が理想気体の状態方程式PV=nRTで知っている温度は気体の体積を尺度にした経験温度です。次に、Rについて22.4l・atm / K・molと習ったことを思い出してください。1気圧・1Kにおいて1molの気体の体積は22.4lと習いましたよね。実は、間違いです。1気圧というのが間違いで、1×10-3などとし、体積を22.4×103などとすれば正しくなります。理想気体は全ての気体が低圧でしたがう漸近的性質で、1気圧は低圧ではないので、理想気体からずれてきます。どのように連れるはは次回に行います。低圧で理想気体に近つくことは、教科書の図○○に示してあります。圧縮率と膨張率は次回にしましょう。

さて、系と外界の関係で分類を行いましたが、今度は熱力学量の分類を行いましょう。温度、圧力・・・と体積、エネルギー・・・について。前者は、同じ系をN個一緒にした合成系を考えた場合、同じ値ですね。それに比べ、後者は合成系ではN倍になります。前者を示強変数、後者を示量変数といいます。熱力学状態量と言った場合は、示強(性)状態量などという言い方が適当になります。熱力学変数に対応したのが、示強変数という言い方ですね。議論を深める上で、この分類は重要になってきます。