博士前期課程講義 平成29年度 15回目

2017年7月26日。

1日遅れの記録。本日の講義2のときに採点済レポートのコピーの返却をするため、採点に時間を取られてしまっていました。

マスターの講義の最終回はマルチフラクタル。ボックスカウント法では、ボックスに「粒子」があるかないかだけを問題にする。ヒットしたボックスの数Nをボックスの一辺の長さlの関数といて両対数プロットしていた。しかし、ボックスiは、ヒットしたかどうか以上の情報を持っている。ボックスi中に何個粒子があるかの情報は、ボックスカウント法では解析の対象にしなかった。ボックスi中の粒子密度pl(i)を解析の対象にしましょう、と言うのが本日やること。

まず分配関数Zl(q)=Σi'[pl(i)]qを定義(Σi''はpl(i)=0のボックスを除いた和を表す)。多重フラクタル次元をD(q)=1/(1-q) liml→0logZl(q)/log lで定義。D(0)がボックスカウント次元dBに一致し、D(1)は情報エントロピーを用いた情報次元、D(2)は相関次元と言う話を。

数Zl(q)を、統計力学における分配関数Z=Σi∈z全状態exp(-βEi)の和をエネルギー状態密度Ω(E)を導入して書き換えたのと同じ書き換えを行う。まず、フラクタル性を反映してpl(i)∝lαiを仮定。リフシッツ・ヘルダー指数(特異性指数)という言葉を紹介。エネルギーがEとE+dEの間にある状態の数がΩ(E)dEであるのと同様に、指数の値がαとα+dαの間にある数をρ(α)l-f(α)dαとして、ρ(α)とf(α)を定義。Zl(q)=Σi'[pl(i)]q~∫ρ(α)[lα]ql-f(α)dα=∫ρ(α)l-f(α)+qαdα。これに対し、統計力学の分配関数Z=Σi∈z全状態exp(-βEi)=∫Ω(E)e-βEdE=∫eS(E)-βEdEを鞍点法で評価するのと同じことを行う。統計力学では、自由エネルギーF=E-TS最小は、expのかたが最大になるのと一致。Zl(q)=Σi'[pl(i)]q~∫ρ(α)l-f(α)+qαdαについても、lの指数-f(α)+qαが最小になるαを考える(最終的にl→0とする)。それをα(q)として、指数をα=α(q)の回りで展開する。τ(α)=(1-q)D(q)を導入して解析を進め、f(α)の最大がD(0)を与え、y=f(α)とy=αの接点がD(1)を与えることを説明。その後、セル(ボックス)への分割を線分を二分割することを繰り返す場合に、鞍点法の数理だけでなく、変数の間にもお統計力学とマルチフラクタルの間で対応をつける事ができるのを説明。

二項分枝過程の前にDLSクラスターの成長過程のマルチフラクラル解析を紹介。その後、二項分枝過程について手抜きの説明をして終わり。

次週は、時間としては試験となるが、課題は既に配布済みで、その時間終了までにレポートを提出してくれればよい。

講義2 平成29年度 第13回目

2017年7月21日。

ここのところ右手の指がこわばったり、左手首が痛かったりということが繰り返されてましたが、本日は左膝が笑っています。朝には右腰に湿布をして出掛けたのですが、講義前には左膝にも湿布をしました。

前回やり忘れた演習を講義の開始時に行うと宣言していたもかかわらず、誰も手を挙げない。仕方なので、レポートにする問題を決めて講義へ入ることに。本日は、理想溶液とラウールの法則。

理想溶液は、それに先立って固溶体=合金=混晶の話を。理想溶液に関係してくるのは、置換型合金。理想混合気体で混合の内部エネルギー変化と混合の体積変化がゼロなのは、分子の大きさと分子間相互作用が無視できるから。混合のエントロピーのみが生じる。原子の大きさがほぼ等しいときに置換型の合金となる。少し不十分で、二種類の成分(AおよびB)の混合の場合、例えばA-AおよびB-Bの相互作用に較べて、A-Bの相互作用が大きい場合、反発しあって混合しない、合金にならない、ということが生じる。理想的に大きさが等しくて相互作用も等しければ、混合の内部エネルギー変化も混合の体積変化もゼロとなり、混合のエントロピーのみが残る。これが理想固溶体。液体の溶液の場合は、平均粒子間距離などということになるので、もう少しゆるい条件で理想性が出てくる。

ラウールの法則は、理想混合溶液と理想混合気体の平衡の条件に対するもの。全章は化学平衡が主題だったが、本章は相平衡が主題。n成分系における液体と気体の相平衡を扱う。温度T、圧力Pの下で気液が平衡にあった場合、組成の間にはどんな関係が成り立つか、と言う問題。化学ポテンシャルが等しい式を書き、それを変形してラウールの法則を導く。私が講義をするんだから、この教科書やもっとわかりやすく書いてある教科書にも載っていない、「ラウールの法則が成り立つためには、この近似が必要ですよ」ってのをやる。最初に「これ」ってやった方がいいかもしれないが、寝とるひとがおるので、出し惜しみをします。で、順にpi=p*xi(l)までやる。

10分位余ったが、演習はやらずに、質問の時間に。実はその前に、1年生の授業で光重合によるゲル化、乾燥コロイド結晶の(色)の観察をやりましたね。私の専門はゲルとかコロイドです。液体は非圧縮性の近似が良く成り立ちます。しかし、非圧縮性の近似と化学ポテンシャルが圧力依存性を持たないことは、別のことです。ゲルだと圧縮性に対する扱いが重要そうなのは想像できますね。コロイドは、溶液ではりません。コロイド粒子が分散しているだけで、溶媒和を作りませんので、体積変化はありません。コロイド分散液の方が、化学ポテンシャルの圧力依存性をどう扱うかは重要な問題です。

講義2 平成29年度 第12回目

2017年7月19日。

第12回目は、後半の4回目。自由エネルギーを導入し、化学ポテンシャルを定義し、それらを化学平衡に適用する(質量作用の法則)節が終り、後は相平衡にそれを適用する節。

大きなミスを犯していることに気付く。予定では、演習を最初にやることになっている。講義のはじめには、相律をやって、二成分系の相図をやって、クラペイロン・クラウジウスの式をやってから、今日の最後の時間に演習をやりましょう、と言った。しかし、5分で演習はできないので(やっても効果はないので)、次の時間の最初に15分位掛けてやりましょう、とした。

相律は、c成分系のp相平衡で「状態を指定するために必要な変数」のうちで独立なものを勘定するだけのもの。しかし、熱力学的自由度を独立な、示強変数の数と言うのは少し不正確。組成(モル分率)は、示量変数のモル量(1モル辺りの量)。つまり、モル体積ならば、示量変数である体積を総モルで割ったもの。示量変数であるモル数を総モル数で割ったものがモル分率。単位体積辺りの量である密度も同じ性質を持つ。示強性変数という言い方は、示強変数と同義なものとして使われる。示強的変数としておいた。単成分系c=1の場合について、相律f=2-p+cの適用をp=1,2,3について説明して次へ。

二成分系の相図のポイントは、二相領域の相図の読み方、てこの原理とかてこの法則などと呼ばれるものであろう。気液平衡でも固液平衡でも同じ。全率型で説明し、共沸型はさらっと流す。更には、液液相分離についても基本的には同じ。一般的な上部臨界溶融温度の形のもので説明し、下部臨界臨界の型のものも存在することに言及。共晶相図についも、まず二相領域について説明。固相-固相領域の場合も同じ読み方ができることを説明するが、直ぐ後に液相-固相領域から固相-固相領域に入った場合に「共晶組織」ができることを示唆する説明も行う。置換型合金と格子間原子型合金の説明をして次へ。

クラペイロン・クラウジウスの式には、共存線の傾きを調べましょう、として入る。単成分系に限定し、T-P図を描く。共存上の二点(T,P)と(T+dT,P+dP)での相平衡の条件として、二相の化学ポテンシャルが等しい式を書く。(T+dT,P+dP)で化学ポテンシャルが等しい式をdTとdPが小さいとして展開し、ギブス・デュエム関係式dμ=-SmdT+VmdPから得られるμの偏微分に対する関係式を用い、クラペイロンの式を導出。高温相βが希薄気体で低温相αが凝集相である場合に、ΔVm=Vmβ-VmαをVmβで近似し、さらにβ相を理想気体だと近似する「クラペイロン近似」を行うとクラペイロン・クラウジウスの式になることを説明。実験的にクラペイロンが発見していたものを、クラウジウスが理論的に導出したということにも言及。

博士前期課程講義 平成29年度 14回目

2017年7月18日。

自己アフィンフラクタル。まず、ブラウン曲線から。1次元のランダムウォークを時間を横軸に、位置を縦軸にプロットしたものだから、新しいものではない。ハースト指数Hを導入するが、これもランラダムウォークについて<R2(t)>∝tからH=1/2は自明。H≠1/2のブラウン曲線である分数ブラン曲線については、レビーフライトで<R2(t)>がtの1でないべき乗に比例することをやっているので、「済」として説明。その後、自己アフィン指数を定義。

イーデンモデルの成長界面がブラウン曲線と同じ自己アフィン指数であることを説明。証明はなし。イーデンモデルは、説明していなかったので、説明。次にバリスティックモデルの成長界面。バリスティックモデルは、レピーフライトのところで説明済みだが、再度簡単に説明し、イーデンモデルの成長界面と同じで、ブラウン曲線と同じ自己アフィン指数であることを説明。これも証明はなし。バリスティックモデルについては、シミュレーションの図から一つの種から成長したクラスターが認識できる。このクラスターは、コンパクトで、クラスターに含まれる粒子数をs、クラスターの高さをh、クラスターの幅をwとすると、クラスターの面積はA(s)~h(s) w(s) ~ sととなる。hの自己アフィン指数νh=2/3とwの自己アフィン指数νw=1/3の間にνhw=1が成り立つ。シャイデッガーの河川網モデルの説明をし、これもイーデンモデルおよびバリスティックモデルと同じことを説明。証明はなし。イーデンモデルでも一つの種から成長したイーデンクラスターが定義できて、バリスティッククラスターと同じであることにも言及。

次に山岳図形へ。つまり、ブラウン曲線の横軸を二次元に拡張したもの。xz面やyz面、あるいはそれらをz軸周りで回転させた面で切断したときの断面がブラウン曲線になる。これが、分数ブラウン曲線になるように拡張する。等高線を定義、一番大きな島に対するz=0(海面)の等高線が海岸線。海岸線のフラクラル次元Dcに加え、全等高線に対するフラクタル次元Deを導入。島のサイズ分布の指数としてコルチャックの指数ζを定義。ζ=De/2は証明。

最後に、既に初めの方で紹介したゲルの切断面の自己アフィンフラクタル解析について紹介。少し進めたが、時間が掛かりすぎて中断中である。断面に出てくるパターン自体の異方性が対象だったため、そこに自己相似フラクタルの解析ソフトを使えなかった。

最近感じた違和感(2)

2017年7月15日。

例の豊田議員たたき(例えは、これ)には、私はその法的安定さの欠如したやり方に違和感を感じている。

法の上位・下位を認識してないよう。高速道路を逆行したら、怒鳴るのは当たり前。殴ろうが、胸倉をつかもうが、危険回避を行うべき。それだけの緊急性がある。高速道路で逆行して正面衝突による心中を行う自動車に同乗させれているようなもの。殺人未遂かもしれない。危険回避するのに強硬手段に出るのは、正当行為。正当防衛である。暴行罪には問えない。

ここまでの文で気付かれたかたはおられるでしょう。キーワードは緊急性。つまり、危険回避の緊急性があって強硬手段に出るのは、正当行為。それがなくなった状況では、もはら怒鳴ることは許されない。まして、蹴るなんて。過剰防衛。

私の感じている違和感は、危険回避の緊急手段までもを世間がたたいていること。彼女が強暴だとしても、危険回避の緊急手段を否定する理由にはならない。人を見て、法の適用を変えているように見える。皆さん、もっと法律を勉強して下さい。いや、たたけるものはたたけ、か。

尚、誤想防衛も正当防衛の範疇に入りますので、相手が命や身体の危険を感じるのが当然だと判断する状況(よく出る例が、空の拳銃で相手を撃つ動作をして、相手に反撃をさせ「空だから命や身体に危険はおよばない」と相手の反撃を不当化しようとするもの)作って、相手に反撃させるのは、あなたの負けですので。

もう一つは、秘書が「下手をすれば殺人未遂」の危険なトラップを仕掛けたこと。緊急性のある間は、違法行為を保護する法律の適用はされませんので、暴行は成り立ちません。自分で「下手をすれば殺人未遂」の行為の記録を残しているんです。緊急性がなくなってからの暴行を想定してトラップを仕掛けたといたら、あっぱれなもんです。自分自身も高速道路で正面衝突して死亡する危険もあるトラップでもあるんです。社会的な生命だけなく、生物的な生命を掛けての「命がけトラップ」。

この秘書も「もっと法律を勉強して下さい」に入るとみなすのが、失敗の程度が酷すぎることから考えて、妥当かもしれない。しかし、彼女の凶暴さは、「命がけトラップ」に値するのかもしれない。

講義2 平成29年度 第11回目

2017年7月14日。

講義2の第11回目は、前半の試験。既に書いたように、基礎知識や概念、定義などを問う問題。前年度までだと、30分程度の試験時間の前半で退席する学生が半分はいるが、今年はほんのわずか。問題は、例年と同じレベル。ただし、高校で物理を取っている学生の雰囲気として、こまごまとした定義を教えるよりは、「論理を展開する and/or 式をいいじくり回す and/or 本質を語る」がやりやすかったので、この定義の書かせるのはやめようかなと躊躇して、やはりやめたろことはあった。

試験終了に休憩を挟んで、試験の解説、演習の講評。演習の講評に関しては、例年は論理性について話をしていたと思うが、それに重点を置く必要がなかったので、軽く済んでしまった。

最近感じた違和感(1)

2017年7月13日。

最近、違和感を感じることが幾つかある。

その1は「大学生の保護者」。未成年者に対しては、親が保護者なので問題ないが、成年被後見人でもないのに成年に対しても「保護者」ってのが使われている。

今は、成人していてもそんな言葉で大学生を都合よくあしらうのが時代なのかもしれないが。

さて、いくつまで最近感じた違和感をしるせるだろうか。