博士前期課程講義 平成29年度 13回目

2017年7月11日。

今日の内容は、ランダム・ウォーク、レビー・フライト、DLA。

ランダム・ウォークについては、ランダムな高分子鎖の広がりないしはコンフォーメーションの模型として(習っている人は)習っているでしょう。回転半径(慣性半径かも知れません)が重合度nに比例する話です。第nステップでの位置をR(n)として、<R2(n)>-<R(n)>2=na2(aは格子間隔)を示した後、粒子の存在確率u(r,t)が連続極限(長時間経過後)に拡散方程式になることをまず示す。その後、空間フーリエ変換を使って拡散方程式をとく。確率分布u(r,t)がわかったので、時刻tに置けるr2の平均が計算でき、それがtに比例することがわかる。もちろん、これは<R2(n)>-<R(n)>2=na2と同じ意味の微視的な式。これから、ランダム・ウォークの軌跡のフラクタル次元はdw=2(空間の次元dによらない)ことが導出できる。

レビー・フライトは、ランダム・ウォークでステップあたりの移動距離が一定となっていた正弦を外し、べき分布としたもの。1<fw≦2ステップの長さsがSより小さい確率をP(S)=(S/a)fwとする(もちろんS≧a)。fw=1の場合は弾道模型なることをコメントし、fw>2nの場合はステップ長一定の場合のと透過である(「中心極限定理により」という難解なもの、とのこと)のコメントも。支配方程式をランダム・ウォークの場合と同じように連続近似して求め、それをフーリエ変換を使って解く。ただし、1次元の場合に限定。ポイントは、最終的に∂u~(q,t)/∂t ~ -qfw

u(q,t)を通じて、u~(q,t)=u~(q,0)exp(-Ddiffqfwt)となること。ランダム・ウォークの場合はu~(q,t)=u~(q,0)exp(-Ddiffq2t)であった。これからdw=fwが導かれる(積分してn ~ Rfwを示すのは困難)。異常拡散(平均二乗変位∝tβ)の話をして次へ。

DLAの実験例は既に挙げてある。少し補足をした後に、DLAのアルゴリズムラプラス方程式に基づいた解析について話。その後、DLAのフラクタル次元の定式を与えたToyoki and Honda (Phys. Rev. Lett.)の理論の紹介をして終了。

一杯まで掛った(30秒未満しか時間が余らなかった)。途中で休憩を入れて、測定中のサンプルのセッティングをしたかったが、とても無理。フーリエ変換を使って拡散方程式を解くことは、他の授業でも需要があるようで、講義終了後に「教えて下さい」という院生あり。