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博士前期課程講義 平成29年度 6回目

2017年5月24日。

夏の陽気に体が追い付いて行っていない。昨日の博士前期課程の講義の記録。

臨界現象とフラクタルが内容。しかし、臨界指数の話を二次相転移一般の話を前置きして行った分で9割。スケーリング性、不偏性の話をしないと、フラクタル次元と臨界指数の関係に入れない。スケーリング仮説からスケーリング関係式を導くのがミソ。残りの1割でフラクタル次元の入った臨界指数の間の関係式。

ランダウ理論は、一コマ費やしてやっても良かったかも。

講義1(前期開講分) 平成29年度12回目

2017年5月23日。

昨日の午後イチの講義。朝イチの演習の自分の担当分は終っているが、1日遅れで講義の記録を。

1次元のフラウンホーファー回折として、各種開口についての計算を行うところに入る。今回と次回がそれ。物理が見やすいので、平行光が回折されるものとする。積分の前の定数が1となるような単位と取って開口面上の位置xにおける振幅u(x)を計算する。

最初は、単スリット。幅が2a、つまり開口関数f(ξ)は、-a<ξ<aで1、その外で0。簡単な積分によりsinc(x)=sin(X)/Xを用いて、u(x)=2a sinc[(2πa/λR)x]となる計算は、簡単。Rは開口面と観察面の距離。ここから、まずx=0で振幅が最大になることを述べ、次いで暗線条件を調べる。暗線条件は厳密にxm=m(λR/2a)=m(λR/d)と求まる(m≠0)。d=2aはスリット幅。暗線間隔Δx=xm+1-xm=λR/dをまず説明。光軸と第m暗線の角度をθmとして、|θ|<<1のときにtanθ~θ~x/Rを図を描いて示して、隣り合う暗線の間隔に相当する角度Δθ=θm+1m=λ/dも説明。回折の広がりは、波長λに比例して大きくなり、スリット間隔dに反比例して小さくなる。Rは、相似に拡大するだけで、角度は変わらない。明線位置に関しては、xが大きいときにはsin[(2πa/λR)x]=±1を与えるxで近似できるが、厳密んにはdu(x)/dx=0を解くんですよ。演習問題として、各自で考えてみて下さい。回折の広がりについて述べましたが、中心の一番大きなピーク、0次回折光の半値幅や第1暗腺までの距離、1次回折光のピーク位置によって評価するやり方もありますね。流儀でなくて、それぞれ物理があるんでよね。

さて、暗線間隔についての議論、高校でやったことを思い出しませんか? 二重スリットによる干渉のところで全く同じ議論をしましたよね。実は、高校でやった明線の条件と今の単スリットの暗線の条件が一致するんですよ。高校と大学の違いは、何ですかね? 振幅uの分布が計算できるのが大学、光路差だけで暗線条件・明線条件を出すのが高校なんです。二重スリット(間隔2a)による干渉の振幅の分布を計算して見ましょう。(図を描いて)上側のスリットからの光波の振幅をu+、下側からのをu-とし、観測点ではu=u++u-。u±=u0exp(-kl±)、l±=(R2+(x-/+a)2)1/2のようにして計算を進め、u(x)=u(0)cos[(2πa/λR)x]を導出。

干渉の計算で、それぞれのスリットの内の異なる位置を通って来た光波の足し合わせは考えてきませんでしたね。そのような足し合わせが回折で、今日は二重スリットによる回折を行って終わりです。その前に、どのような条件で回折の効果が生じなくなるのか、考えておきましょう。スリット幅が小さい場合ではありませんよ。u(x)=2a sinc[(2πa/λR)x]なので、a→0でu(x)→0になってしまいますね。光源を発する光の可干渉性という問題です。光源に質が悪いと、スリットの内の異なる位置での光波の位相の差異は問題にならない訳です。初期位相に関して、可干渉性の説明をしましょう。レーザーは、可干渉性のいい光源ですから、初期位相は一定とみなせますが、やはり長い時間経つと初期位相は異なってしまいます。時間とともに初期位相が変化する訳で、その時間が短ければ質の悪い光源ということになります。スリット内の異なる位置での光な波の位相の違いが問題にならないのは、光源の質の問題なのです。

さて、二重スリットによる回折に入りましょう。二つのスリットの真ん中に原点ξ=0を取るやり方と、一つ目のスリットの真ん中に原点を取るやり方が考えれれますね。ここでは、後者のやり方で計算します。スリット幅を2a、間隔を2bとして、開口関数を書く出して積分を計算。一つ目のスリットからは単スリットの単スリットによる回折の結果u1(x)=2a sinc[(2πa/λR)x]が出てきて(添え字の1は単スリットを表す)、二つ目のスリットからはexp[i(2πx/λR)2b] u1(x)が出てくる。尚、前者の原点の取り方だと、一つ目のスリットからの回折光の振幅に位相因子exp[-i(2πx/λR)b]が付き、二つ目に位相因子exp[i(2πx/λR)b]が付く。二重スリットに依る回折の結果は、これら二つを加えた形で、u2(x)={1+exp[i(2πx/λR)2b]}u1(x)となる。位相因子の和の部分は1+exp[i(2πx/λR)2b]=exp[i(2πx/λR)b]{exp[-i(2πx/λR)b]+exp[i(2πx/λR)b]}となり、cos[(2πx/λR)b]が出てくる。最終的には強度I(x)=u*(x)u(x)が観察されるので、位相因子exp[i(2πx/λR)b]は効いてこない。干渉と回折の積になるという説明をした後に、へたくそなグラフを描く。最後に、欠線の話をして終り。

少し余裕があったのは、次のようなことのため。毎年、時間一杯になるのですが、今日は少し余裕がありますね。何か言い落としたことがあるかと思ったら、例年は回折の広がりについて、もう少し具体的に説明してましたね。

目標2のレポート問題を作成中なのが時間がない事情でもある。そりゃ、もう12回目で文字通り終盤ですから。

講義1(前期開講分) 平成29年度11回目

2017年5月18日。

昨日の午後イチの講義の記録。まず、前々回の講義の些細なミス二つの訂正のコメント。そのうちの一つは、今回の講義の主題のフラウンホーファー回折とフレネル回折の出発点の式を記すもの。尚、今後は今回の講義以降は、積分の前の変数をCとしてしまって問題にしないので、傾斜因子を2で割るかどうかは影響して来ない。また、フーリエ変換の演習問題のプリントと前回の試験に関して、「正解はAですが、Bと書いたものも正解とします」というプリントも配布。後者に関しては、講義で口頭説明はしないと明記。

さて、フーリエ変換の演習問題を配ったのだから、回折の計算がフーリエ変換になることを示すのが今回やることなのはわかるでしょう。既に開口の中心と光源Qの距離R0と開口の中心と間測点の距離Rは、前々回に導入しましたね。回折積分フーリエ変換になるためには、遠視野の条件R0>>λ、R>>λより厳しい条件が必要となります。その前に、開口上を動く成分変数で面積分を行うと観測面上の座標の関数としての振幅が得られることを表すのに便利なように座標の取り方の変更をしましょう。開口の中心をO(0,0,0)、開口面上の点をX(ξ,η,0)、観測点をP(x,y,z)としましょう。R,R0,r=XP,r0=XQをこれらの変数で表した後、R,R0が大きいとしてr,,r0を展開。ここで、exp[ik(r+r0)]の中の、例えばkrについて考えると、k=2π/λなので、kr=kR+...の次の項は分母にλとRの積が現れ、遠視野条件で小さくなるλ/Rのような量ではない。開口の大きさDを導入して(-D<ξ,η<D)、少し誤魔化して、D2/λR<<1がkr=kR+...の高次が無視できる条件だという。ξ,ηの1次までで近似できる場合をフラウンホーファー回折といい、それでは不十分で2次まで必要となる場合をフレネル回折といいます。英語だとR>>D2/λはフラウンホーファー条件というように訳せる語になっていますが、日本語ではフラウンホーファー回折の条件という語になっているかもしれません。フラウンホーファー条件もRが十分に大きい条件ですが、遠視野条件が一般的であったのに対し、フラウンホーファー条件が破れる光学系は簡単です。

次回以降いろいろな実例を扱いますが、学部学生だからということで、フラウンホーファー回折に限定して計算を行います。これは、平均レベルではそんなところという以外に、フーリエ光学という一つのメジャーな分野があることもあります。フレネル回折が前面に出てくるような光学系は、少し特殊な気がします。また、レンズを使っ焦点面で結像させれば、コンパクトにフーリエ光学系を実現できますので。そのようなレンズをフーリエ変換レンズといいます。

30分程度残して、演習を。残念ながら、時間内に演習を黒板でやってくれる学生は出なかった。どの問題をレポートにするかを決めて終わり。

博士前期課程講義 平成29年度 5回目

2017年5月17日。

本日は、新入生の導入科目を朝イチにやってから、学科会議を挟んで(昼食の時間がなかった)、午後イチに講義1。ここに記すのは、昨日のマスター生に対する講義について。

「結晶成長」の話をした。雪の結晶を見たことがありますか? 幼少に頃に見た記憶があるが、最近は雪が降らないな・・・てところでしょうか、という導入。結晶の形って、単に子供への科学入門のように見えるでしょう。単なるサイエンスに思えるかもしれません。スキーをしたことがありますよね。今日の雪は滑りがよい、さくさくしている、がりがりだ・・・ってことは感じますよね。雪の結晶がどんな形だったら、どんな雪質になるんでしょうかね? スポーツに限定された話ではありませんよ。雪の結晶の研究、工学分野でも重要なんですよ。土木工学・都市工学、道路の問題ですよ。どんな雪の結晶だったら滑りやすいかとか、融雪剤はどれがいいかとか。最近は、なだれなど災害対策が注目されていますが、これも土木工学の分野ですね。どんなゆきの結晶だったら、なだれがおきやすいか。

ウルフの定理をやって、結晶の成長形(漸近形)をやる。速度の遅い面で囲まれる話をした後、再び雪の結晶の写真を見せて、成長速度の速い「角(かど)」が伸びてしまっている、と。更には、「角」が伸びるだけでなく、枝分かれも、と。

途中、半導体表面の構造形成の紹介も。つまり、結晶形の問題は、量子ドットなんかとも関連しているんです。

表面張力による安定化の話と遮蔽効果による不安定化の話をし、線形安定性解析のあらましを話す。界面の時間発展方程式の例として、KPZ方程式を紹介して終り。

講義1(前期開講分) 平成29年度10回目

2017年5月16日。

昨日の午後イチは、講義1(前期開講分) の10回目で、前半の試験。試験と言っても、月曜の朝イチの演習とは違い、基本知識等を問う問題。単純には、穴埋め問題ならば問作も大変ではなくて、講義よりは体力は使わないことになる。しかし、やはり疲れた。問作には気は使う(それでも、試験問題に対し「こうすればよかった」ってのはある)。TAに試験監督の補助をやってもらい、学生証のチェック、答案の整理を手伝ってもらうようにしているので、かなり楽になっている。来年度は、演習の担当を外れるので、一日に2つの試験を行うことはないだろう。

試験終了後に休憩を挟んで、試験に対する解説、演習の返却、レポートの解説の配布を行った。演習については、n×H=0に関する記述について、減点を行ったものが多数と述べたが、既にプリントを配布済なので、説明は繰り返さない、とした。レポートは、まだ40%位しか採点が終っていないが、既に複数の再が出ている。本来ならば、返却用コピーができていないので、その返却は後日しますが、再のものについては指導をします、としたかった。しかし、残りの60%の中に再が出た場合に、不公平が生じるので、行わなかった。

演習 平成29年度6回目

2017年5月15日。

演習の6回目(私の担当の5回目)は、私担当分の試験。

TAに監督補助を行ってももらって、朝イチに試験を終了。補助監督ありがとう。

調和振動子運動方程式(二階の微分方程式d2f(t)dt2=-ω2f(t))が解けない学生の多さに、TAの院生も唖然。exp(±iωt)は電気回路で頻出ですよ、とのこと。記号が合ってないので、他の教科で散々やった問題だってことが認識できてないんじゃないでしょうか、と。fでなくてxだったら力学の調和振動子、IとかVだったら回路の問題だと認識できる訳か。尚、微分方程式の問題としてではなく、複素関数の章の問題なので、exp(at)の形を仮定して解くヒントを与えてある。df(t)/dtを掛けて、一回積分してエネルギー積分の形を得る方法のヒントも与えている。

演習をやってくれた学生が、問題I(a)とI(b)とあるうちのI(b)だけを解いてくれて、「難易度的に問題があるので、I(b)だけを試験問題とする訳に行かない。ここで、I(a)も誰かがやってくれて『試験に出ても大丈夫です(今やったから、試験でチェックしなくても大丈夫です)』ってことになるといいが。」とのコメントにそのまま誰も反応だったので、「この問題は、黒板でやらなくてもできるかから、『試験に出しても大丈夫』ですか?」と言うことになって、引っ込みが付かなくなって出題した問題のできが悪い。

午後イチは講義1の試験。採点が溜まって来つつある。

講義1(前期開講分) 平成29年度9回目

2017年5月11日。

昨日は、朝イチに新入生の導入科目(新入生オリエンテーション・新入生研修の続き)の授業。そして、午後イチに講義。タフな一日だったのは、午前の後半にペーパーワークを行ったこと。また、二つの授業の試験問題作製中でもある。学生委員の関連のイベントの日程調整の返事が遅れていて、催促されてしまった。

さて、講義はヘルムホルツ・キルヒホッフの積分公式(前回の講義の最後)にキルヒホッフ近似を行い、計算可能な形式に近づけること。積分公式における面積分を行う領域を(A)開口部、(B)開口面で開口の開いていない部分、(C)観測点Pより遠方に分け、(B)と(C)に関する積分自体をゼロにすることがキルヒホッフ近似。(B)の積分をゼロとみなすことは、開口の開いていない部分に回りこむ波は、今考えている遠視野条件では寄与しないと考えられるから。これは、毎年述べている。遠視野条件は、波長λと開口上の点Xから観測点Pまでの距離rについて、r>>λとなることに言及。ついでに、光源Qから開口上の点Xまでの距離r0についてもr0>>λを記述。毎回述べているのは、(C)における積分をゼロとすることは、数学的には破綻した近似であること。振幅uは球面波のように振舞い、被積分関数は∝1/rのようにゼロになる。しかし、被積分関数がゼロに収束しても、1/rの積分は発散しますね。その類の近似ですよ。それにもかかわらず、その近似を使った理論で現象は上手く説明できてしまうんです。教科書には書いてないことですが、光波の場合、周波数が高いので、振幅uそのものは観測できなくて、その二乗が観測される、そんな事情かもしれません。

さて、実は球面波u=Aexp(ikr0)/r0の方向微分で小さなミスを犯してしまいました。積分公式中の(v=)exp(ikr)/rの方向微分を∂[exp(ikr)/r]/∂z = (∂r/∂z) ∂[exp(ikr)/r]/∂rと計算するのと形式的に同じ形です。つまり、∂[exp(ikr0)/r0]/∂z = (∂r0/∂z) ∂[exp(ikr0)/r0]/∂r0まではよくて、さらに開口面法線とrおよびr0のベクトルとのなす角のコサインで表現するものも間違いは犯していません。X(x,y,z)、P(0,0,0)の場合は、r=(x2+y2+z2)1/2なので、 ∂r/∂z=z/rです。しかし、Q(x0,y0,z0)のときr0=[(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2]1/2で、∂r0/∂zも∂r0/∂z0も同じであることに言及し、 ∂r/∂z=z/rに添え字0を付けたものを間の計算で書いてしまいました。計算すれば一目瞭然ですし、∂zを∂(z-z0)で置き換えても(∂(z0-z)で置き換えても)同じというところまで言えば良かったんですね。次回はうっかりしないようにしたいと思います。

遠視野条件を不等式で書いたことは、この方向微分における∂[exp(ikr)/r]/∂rと∂[exp(ikr0)/r0]/∂r0に対する近似を正当化するのにいいんですね。k=2π/λはrやr0に較べて十分に大きい。

開口の中心と光源の距離R0と開口の中心と観測点の距離Rを定義して、被積分関数中のexp[ik(r+r0)]/rr0において、分母をRR0に置き換えるが、分子の指数関数中ではその置き換えの近似はできない。精密さのためにこの段階でRとR0を出している(フラウンホーファー回折・フレネル回折に進む前に)。遠視野条件を不等式で書いておいたことは、指数関数の肩が大きな数であることを示してもいる。

平行光が回折される場合に、回折光について近軸近似を行って、回折光と光軸とのなす角の関数としての傾斜因子を積分の外に出した形を補足。これは、ホイヘンスの原理でで排除できなかった後退波を自動的に排除するものである、と説明。前回に「ホイヘンスの原理のこの欠点は、回折理論では解決される」と述べていて、その答を示した訳です。傾斜因子に1/2を付けた方が良かったと少し反省。