博士前期課程講義 平成29年度 11回目

2017年6月28日。

昨日の講義には、難解なハウスドルフ次元の話が含まれる。講義1の採点を今月中に終らせようと悪戦苦闘しているなかで、どこまでできるか。正確にやりつつ、ある程度はわかった気にもさせる必要がある。

ベクトル空間の次元から入り、位相次元を説明。その後、ハウスドルフ測度などの数学の準備を行った後にハウスドルフ次元へ。相似次元を再定義。最後にボックスカウント次元の定義。ハウスドルフ次元が従来次元を含むことは説明した。ボックスカウント次元がハウスドルフ次元の簡略版の意味を持っていることも説明した。

実は、本日は代休。臀部皮膚膿瘍/粉瘤の切除。

講義2 平成29年度 第6回目

2017年6月23日。

もうこれで「補講を受けられなかった学生」にわずらわせられるのはやめられる・やめよう。

さて、本日は熱力学第二法則の2回目。カルノーの定理、熱力学的温度、クラウジウスの式(不等式)と進んで、最後にエントロピーの定義を行う。高校で化学を履修していない学生ばかりなので、既に戸惑うところはあった。しかし、本日の内容については、問題ないだろう。前々回の相転移熱(潜熱)や反応熱は、化学を履修していないことをもっと意識したやり方にすべきだった。次回の相転移や反応のエントロピーのところでは、そうしたいと思う。

カルノーの定理の証明は、トムソンの原理とクラウジウスの原理の等価性を示すのと同様に、背理法を使うもので、論理学にアレルギーを持っている学生にとっては、うんざりでしょうね。その前に、トムソンの原理で否定されているサイクルが存在すると仮定すると、クラウジウスの原理で否定されている過程が「合成機関により」実現できてしまう。カルノーの定理で否定されている過程が実現できたと仮定すると、トムソンの原理で否定されているサイクルが「合成機関により」実現できてしまう。と再度繰り返し、「合成」を強調。熱機関・過程を分解して、トムソンの原理に反する部分を分離するとか、クラウジウスの原理に反する部分を分離するというのは、取り出した部分が熱機関・過程として動作するかの保障ができない。合成ならば、そのようなことはない。エンジンの1/2のミニチュアを作ったら、それを二つ合成した熱機関が元のエンジンと同じだとは保障できないし、ミニチュアが動作するとは限らない。エンジンを相似に縮小した場合、摩擦の割合が増加するので、縮小度合いによっては動作しなくなる。その前置きの元、カルノーの定理(の後半)を否定すると、クラウジウスの原理に反する過程が合成機関によって実現できてしまう説明を行う。基本的には、教科書の通り。次に、カルノーの定理(の後半)を否定すると、トムソンの原理に反するサイクルが合成機関によって実現できてしまうやり方のポイントを説明。カルノーの定理の前半は、後半が証明できれば、理想気体を作業物質としたカルノーサイクルの計算は行っているので、自明。

熱力学的温度は、おそらく論理学をやると更にうんざりする学生が出るだろうから、ポイントだけを述べることににする。可逆サイクルによって、熱源からサイクルに流入・熱源へサイクルから流出する熱によって定義する、とポイントだけをまず述べる。可逆サイクルの場合に、サイクルの一方がカルノーサイクルの場合の式から、比例することを説明。原点が経験的絶対温度と一致するように選ぶと、熱力学温度と経験温度は一致するから、今後は同一視する。例年はこれで終ることも多かったが、少し余裕があったので、サイクルを縦に並べて、二つのサイクルの間の熱源を含む合成サイクルを考えることにより、サイクルへ流入する熱とサイクルから流出する熱の比が、高温熱源と中間熱源の温度の関数でもあり、同時に高温熱源と低温熱源の温度の関数でもある、と言うようなことが出てきて、最終的に「熱源からサイクルに流入・熱源へサイクルから流出する熱によって定義する」形にできる、と少し説明を加えた。

カルノーの定理からクラウジウスの式へは、省略はしない。それを省略したら、何のために「苦手な論理学」に基づく、”「トムソン⇔クラウジウス」⇔カルノーの定理”をやってきたのか、ってことになる。まずは、系(=サイクル)のエネルギーが増加する方向を正の方向にとる流儀に戻すと言って、カルノーの定理(の後半)を熱と温度で書き換えた式を変形して、熱欲が二つの場合のクラウジウスの式を導出。これが本質なので、後は説明を省略して、熱源が複数の場合と熱源の温度が連続的に変化する場合のクラウジウスの式を書く。

最後にエントロピーを定義する節へ。いつものことだが、エントロピーについては「新しい状態量を定義します」「新しいことを(単なる高校の熱力学の拡張ではないこと)を学びます」と言うことを強調。クラウジウスの式(不等式)で等号が成り立つのは、可逆過程のときだということを強調する板書を。可逆な経路に沿ってd'q/Tを積分したものとして、エントロピー差ΔSを定義。可逆な場合は、クラウジウスの式が、d'q/Tの周回積分がゼロになるという形になり、状態量の性質の式となるので、新しい状態量の存在が示唆され、それがこのように定義されるエントロピーである。エントロピーを用いてクラウジウスの式を書き換え、孤立系に適用して、熱力学第二法則エントロピー増大則と表現できることに言及。さて、今まで、一般性のある表現への熱力学第二法則の書き換えを行ってきたが、ここで孤立系に限定した表現になっていまい、戸惑っているのではないか? 孤立系に対して、エントロピー増大則とかエントロピー最大の原理とかの表現が、はやり一般性が最も高いから相するのです。系と外界を合わせて、全系が孤立系に成るように外界を定義することができるという訳です。系の状態量で記述するのが便利だという話を以前にしましたが、外界を含めて考察する必要が出てきてしまっていますが、それでもエントロピー増大則が一般的なのです。

昨年度の記録を見ると、「神様、もうエントロピーを(無駄に)増やすことはしませんので、これまでエントロピーを増大させてきたことはなかったことにして下さい、と言ってもできない」ことについて言及ていました。それは、次回に致しましょう。ビーカーとウオーターバスを全系とみなせば足りる場合、実験室を全系とみなせば十分な場合、地球全体を全系といて扱う必要がある場合、地球+その周りの宇宙の場合、更に外側の宇宙・・・(たとえ宇宙が開放系であったとしても、エネルギーの伝搬速度は有限、光の速さを超えませんので、光の速さ以上でしか相互作用できない外側は考慮しなくて良い訳です)「と話をしましたので、熱死と言う言葉を紹介して終わります。全宇宙のエントロピーが最大に達したら、それで平衡なので、宇宙は何の変化も起きない、死んだ世界になってしまう、言う話です。さて、宇宙全体を孤立系として考える場合、どんな現象が熱力学の対象となるんでしょうかね。

講義2 平成29年度 第5回目

2017年6月22日。

補講で熱力学第二法則のところの第1回目。まず、序論(具体的には実在気体の状態方程式に関するもの)と第一法則のところの演習だが、誰も黒板にやらない。仕方ないので、レポートとして提出する問題を決めて、演習は終り。

第二法則の最初は、カルノーサイクル。それに入る前に、覆水盆に返らずを繰り返す。一度摩擦熱が発生してしまうと、それを元に戻すことはできない、を繰り返す。また、では環境中に汚染物質を排出してしまった場合はどうか。海水に汚染物質が拡散してしまった場合、回収困難ですが、汚染された海水をポンプでくみ上げて、フィルターに通せば、元に戻りますね。しかし、ものすごいエネルギーが必要となりますね。ポンプを運転するのに燃料が燃焼して熱を発生するし、ポンプ自体が摩擦熱を発生しますね。発生した(摩擦)熱を回収することはできませんね。サイクルは既に定義しているから、等温度過程と断熱過程からなるサイクルとして、カルノーサイクルを定義。その後、作業物質として理想気体を用いた場合のカルノーサイクルの熱効率を計算する。最後に可逆サイクルの定義を述べて終り。

次の節は、自然には起こりえない現象の列挙から。熱の仕事等量のジュールの実験、熱伝導の例、気体の自由膨張、物質の混合をまず挙げ、これら経験的に知っているものは熱力学第二法則としてまとめられる、と。論理的に書いたものにトムソンの原理とクラウジウスの原理があると、教科書の記述を読んだ後に、図を描く。第二種永久機関は存在しないという形の第二法則は、オストワルトの原理と呼ばれると補足。トムソンの原理とクラウジウスの原理が等価であると述べ、まずトムソンの原理に反するサイクルが存在したら・・・ということからはじめ、トムソンの原理→クラウジウスの原理を板書しながら説明。クラウジウスの原理→トムソンの原理については、教科書の図で説明。合成機関による証明には、実は注が必要なのですが、今日は述べません。数学的に厳密な論理としての熱力学を期待していたかもしれないが、熱力学は計算の学問ではなく、思索の学問、と補足。

最後に可逆過程と不可逆過程の節。私の言い方の「環境・外界まで含めて全てを元の状態に戻すことができる過程が可逆過程」と既に言っているので、軽くそれを繰り返した。「可逆過程=準静的過程」も既に述べているが、これは板書した。そして、力学の問題では準静的でない可逆過程が存在すると、教科書の例を見て述べる。この力学の場合は、摩擦が存在しない、と念押し。無限にゆっくりであるだけでは、準静的可逆過程にはならない。過程の途中で状態が定まらないといけない(平衡を保っていなければならない)、と言うことを、教科書の下線を引いてあるところを示しならが繰り返す。最後に、サービスと称して、老化等を考えなければ、毎日同じ食物を摂取し排泄を行っていれば、1日経てばあなた方のからだは同じ状態に戻りますね。しかし、食物摂取と排泄により、環境は変化してしまっているんですよ。環境に排出したもの、元に戻せませんね。と加える。

講義2 平成29年度 第4回目

2017年6月21日。

よろしくない。もう、補講に関して何も申し出ていない学生に振り回されるのはやめよう。例年と同じ程度の重みで「第二法則の重要性」を述べるように戻す。そもそも、補講はもう明日。

第一法則の微分形は書いていないので、書く必要がある。そうしなければ、熱容量の定義(偏微分による)へ進めない。その後の展開、例えば、理想気体の断熱変化にも支障が出る。これを書いて置くと、後の展開に便利なので、再度の黒板に残すようにしよう。その類のものに、静水圧による仕事がある。それも同様にしよう。

準静的過程、可逆過程・不可逆過程などというものが出てくると、どうやら混乱するらしい。教科書の前書きの通り。しかし、過程途中で状態が決まっていないと、議論が進まない。もし、実現不可能な準静的過程を理解しようとして、前に進めなくなっているとしたら、議論が進まないから、過程の途中で状態量が決まると仮定すすると割り切って、当面は、習うより慣れろをやる積りになって下さい。

熱容量から入り、その中でエンタルピーを定義することにする。熱qを温度の変化量ΔTで割って、ΔT→0の極限を取ったものが熱容量。同じ温度変化であっても、qは過程によるので、熱容量Cも過程をしてしなければ決まらない。定積変化の場合は、V=一定、dV=0なのでw=0, d'w=0。従って、第一法法則dU=d'q+d'wはd'q=dUとなる。これから、定積熱容量CVは、状態量である内部エネルギーUの偏微分で表される。CV=(∂U/∂T)V。定圧変化(P=一定)の場合は、(準静的なので)d'wは正水圧による仕事-Pdvになります。すると、第一法法則dU=d'q+d'wはd'q=U-d'w=U+PdV=d(U+PV)となり、エンタルピーH=U+PVを定義すると、d'q=dHとなります。従って、CP=(∂H/∂T)P

次に、偏微分で一定に保つ変数を変えたときの公式の説明を行う。z(x+Δx,y(x+Δx,w)-z(x,y(x,w))をΔxが小さいとして展開することにより説明。z(x,y(x,w))でyを一定にしたときのxの変化に対する変化率とz(x,y(x,w))でwを一定にしたときの変化率の違い、ということも加える。純粋に数学的な問題としてやるのが私の流儀。その後、この応用としてCP-CVの計算ができることを言うが、計算は(時間の都合上)やらない。

ジュールの法則(理想気体の内部エネルギーに関する)。最初に、熱の仕事当量を求めるためのジュールの実験ではない、と。ついでに、その実験の困難さについて言及。理想気体については、U=U(T)あるいは(∂U/∂T)V=(∂U/∂T)P=0となるのがジュールの法則。ジュールの実験の説明をし、ジュールの法則を導く。もちろん、論理的にジュールの法則の導出はできるが、ここではジュールの実験がどういうもので、どんな結果になったかからせの説明だと、補足。その後、気体分子運動論的に考察を加えると、有益な知見が得られると言って、単原子分子理想気体、直線状分子理想気体、非直線状分子理想気体についての内部エネルギーを計算。分子間相互作用ないことから、内部エネルギーへの分子間ポテンシャルからの寄与(平均分子間距離に依存)がなく、体積依存がなくなることは、前置。分子内振動の寄与については後置。自由の凍結という概念を補足。

次の節は、比熱比の計算。まず、理想気体についてCP-CV=nRを導出。前節のUに対する結果を用いてCVを計算し、最終的に比熱比に。

相転移熱と反応熱は軽く。ただし、定温定圧で相変化が起きる場合に相転移が完了するために必要な熱のことだから、相転移熱(潜熱)はエントロピー変化となることは強調。また、反応には、定圧反応と定積反応があることにも言及。キルヒホッフの式については、エネルギー保存則に過ぎないから、説明を割愛、とした。ヘスの法則も同様、と言うのは言い忘れ。

最後に理想気体の断熱変化をやって終り。5分時間超過したが、明日の演習について話して終わり。

博士前期課程講義 平成29年度 10回目

2017年6月20日。

博士前期課程の講義の後半2回目。前回は1次元版だった、厳密に定義されるフラクタル。今回は、それの2次元版。シアピンスキー・ガスケットとメンガー・スポンジ。もちろん、シアピンスキー・カーペット等もやるし、3次元版にシアピンスキー・ガスケットもやる。相似次元の定義をやるのが、新しいこと。

10進数の「端点」の表現が一意でないことは、慣れているものなので問題ない。慣れていない3進数について「同様に」だと、何か不満足感のようなものがある。の旨の言葉が学生から漏れ聞こえていたので、3進数についてもこの時間の最初にやることにした。シアピンスキー・ガスケットのところでも同様な扱いが出てくるから、と。

カントール集合の2次元版としてのシアピンスキー・ガスケットの説明。イニシエータ・ジェネレータの方向が最初。パスカルの三角形によるもの。セル・オートマトンによるもの。パスカルの三角形のよるもので出て来る二項係数に関する漸化式から、セル・オートマトンによるものがそれを等価であることも説明。写像xn+1=f(xn)による構築に相当するカントール集合の定義に相当する、ランダム・ゲームによるもの。反復写像による構築法を説明した後、シアピンスキー・ガスケットの面積を計算し、がゼロになることを示す。カントール集合と同じ。次に、シアピンスキー・ガスケットの周囲の長さを計算し、それが無限大になることを言う。相似次元の説明。シアピンスキーガスケットの変形とそれらの3次元版の説明をする。メンガー・スポンジも含む。これまでにやった各種のフラクタルについて一覧を挙げる。

講義前に委員の仕事をし、講義後はDLS用にコロイド分散液を希釈し、キュベットに詰め、その後DLS測定。少し忙しい日であった。

講義2 平成29年度 第3回目

2017年6月16日。

今日は第3回目で、例年通り熱力学第一法則へ入る。第ゼロ法則と第二法則が重要な意味を持っている、と言うことを今年度はまだ述べていない。今回と次回で第一法則を終らせ、第5回目から第二法則。重要な第二法則の第一回目は、補講として行うので、欠席者が多い模様。「第ゼロ法則と第二法則が重要な意味を持っている」と言うことを言うついでに、第一法則のところで既に出てくる(=それを使わないと、議論が進まない)準静的過程について、「準静的過程=可逆過程」を述べておくのがいいだろう。また、微分d(完全微分)と微少量d'(不完全微分)、熱と仕事のところでも、第一法則への序としてだけでなく、サイクルも定義してしまい、熱機関の効率についても(熱効率の定義はやらないが)触れよう。エンタルピーの定義は問題ないと思うが、熱容量のところは時間切れになるかもしれない。熱容量のところは、一部を次回に行うことにしよう。時間が足りなくなることを予想して、冒頭でそれを述べたが、実際は熱容量のところの後半どころか、エンタルピーまで次回に持ち越すことになった。

私は、第一法則については、公理的熱力学の立場は取っていない。つまり、エネルギー保存則の拡張として説明しているが、その出発点を微視的なエネルギー保存則としている。昨年度の記録を見て、「分子間ポテンシャル」が分かっているかどうかで、その方がわかりやすいどうかが決まってくる。物理を取っている学生が大半でそこは少し安心をした。

熱力学の法則のうち、第ゼロ法則と第二法則が重要で。第一法則は単にエネルギー保存則の拡張。第三法則が第二法則の章に含まれていることから、第二法則に付随するものだ。しかし、第二法則の初回の第5回目は補講で、出られない学生が多い。そこで、だ第一法則のところから、第二法則と関連がある事項については、それを述べることにする。そう断って始めた。

最初は、状態量の性質。状態が決まると一意に決まる量が状態量であるという定義から出発。状態Aから状態Bへ状態が変化したときに、状態量Zの変化Z(B)-Z(A)はA->Bの間の経路Cにそった積分といて表されるが、それは経路Cにはよらない、ということを述べる。その後、周回積分がセロになることに進むが、そこでサイクルについて触れる。余分に時間が掛かった(当然)。最後にZ=f(X,Y)のときは、dZ=(∂f/∂X)YdX+(∂f/∂Y)XdYと掛けることを説明。経路に沿った積分を定義したときの一般δだと必ずしもそうはならない。微分かただの微少量か違いは、熱力学第二法則と大きく関係してくる。

次に「仕事と熱」。いずれもエネルギーの移動形態。これらは、一般的には経路に依存する。摩擦熱を考えてみたら、直ぐわかる。ぐねぐねの経路か最短距離かで発熱量は異なる。仕事も摩擦がある場合は、経路に依存する。力学的な仕事は力×変位で表されるが、その拡張として表されるのが熱力学的仕事。熱力学的仕事×熱力学的変位。その形に表せないエネルギーの移動形態が熱。具体的に外圧Peのもとで気体が圧縮される例の計算をする。過程によって仕事が異なることも述べる。その際に系のエネルギーが増加する方向を正にとる流儀だと補足。

次に第一法則。エネルギー保存則の拡張だと話す。従って、微視的な視点の助けを借りれば、新しい概念ではない。状態量の変化かそうでないかは、熱力学第二法則とかわっている。覆水盆に返らず、って言葉を知っていますね。それを数学的に表現したものが第二法則です。熱が発生する過程では、発生した熱をもとに戻して、例えば重力エネルギーが熱エネルギーに変換した場合に、熱エネルギーをもとに戻して物体をもとの位置に戻すことはできない。しかし、どちらの過程でもエネルギーは保存される。エネルギー保存則の一形式である第一法則では、変化の方向を決めることはできない。教科書は、公理的熱力学といって、微視的な視点に立ち入らず、巨視的な立場だけから第一法則を導出しようとしている。理論物理学としてはそれは意味のあることだが、本講義は材料の創成や材料の応用に役立てることを目的としているので、微視的視点の助けを借りて理解を深めることは行う。N粒子からなる系、分子間ポテンシャルがΦ(r)の場合の外場(重力のような)相互作用のあるときの力学的エネルギー保存則の式を書きましょう。さて、ここで実験室で実験するばあいと、等速直線運動をしている乗り物の中で実験する場合とを考えて見ましょう。熱力学的性質は、どちらも同じですね。熱力学的性質は系の重心の運動によらないのです。エネルギー保存則の式を系の重心に関するものと、それに相対的なものに分けてみましょう。重心に関しては、重心の運動に関するエネルギー保存則が出てきます。K+ΦG=一定。K=(1/2)MvGは重心の運動エネルギー、Φ(e)Gは重心に働く外場のポテンシャル。分子ポテンシャルΣ(ij)φij(ただし、φij=φ(rij)からの重心への寄与はない。相当する重心に相対的な運動についての式も書いたが、この段階では外場との相互作用の項も書いた。まず、K+ΦG=一定をΔを使った式に書き換えた。その後、ΔU=w+qを書き、まず仕事wと熱qを説明。内部エネルギーUを内部自由度に関する運動エネルギーと分子間ポテンシャルと外場との相互作用の和だと説明。その後、重力の場合に外場との相互作用が重心のみに依存したように、内部自由度と外場との相互作用は、大抵はゼロですね、と加える。時間がなかったので、dU=d'w+d'はできなかった。

最後に準静的過程。系の変数を使って仕事を表したいが、先ほどの気体の圧縮の例のように、Peは外圧です。圧縮の過程においては、系の圧力は決まりません。気体中に流れ等が生じてしまうからです。流れの場合は、それが起きないように十分にゆっくりとピストンを移動させればいい。どのくらいゆっくりかというと、実は無限にゆっくり、となります。つまり、静的過程では実際に変化を起こすのに無限の時間が掛かってしまうので、それでも(無限の時間が掛かっても)変化は起きる、という意味で「準」がついてます。十分というのは・・・過程の途中で系の状態が決まればいいので、その程度に遅ければ十分なのです(無限に遅いのは、必要条件で)。第二法則のところで、可逆過程と言うのが出てきます。外界も含めて状態をもとに戻すことができる過程のことです。先ほど、サイクル、つまりエンジンの例を出しましたね。系だけを考えれば、同じ様態に戻っていますね。しかし、熱が外界に排出されてしまっていて、もとには戻せませんね。準静的過程=可逆過程でうす。可逆過程の詳細は、その節で行います。

余分なことをやったから、またその分時間がオーバーしました。エンタルピーと熱量量は次回にします。

講義2 平成29年度 第2回目

2017年6月14日。

夕方に講義2。今日は第二回目。昨年度の記録を見直すのは、役に立つ。一杯までやらないようにしないと。前回も、補講の調整に費やした時間の分だけ時間オーバーしているので。ただし、先週から体調不良であることは、明言しなければならない。顔面右半分が痛くて、話づらい(先週から頭が重くて話しづらかった)ことを言った後、「ご協力お願いします」です。具体的には、補講等についてです。私は自分が正規のコマ以外に行う補講に関しては、他の講義等につかえないように最大限の努力を払います。その逆、私が正規のコマに講義を行っているものに関しては、私の瑕疵によらない場合は、変更等を行いません。例外は、学生自身の体調不良や自身および身内の事故の類と・・・(・・・のところは今日は述べない)。

さて、まず前回遣り残した体膨張率と定温圧縮率についてやる。これは、平衡状態の物質については、定温圧縮率は必ず正だが、体膨張率については、例外的に負の物質が存在することを言えてよかった。今日の最後の気体の液化のところで、不安定状態について言及できた。

まずは初等気体分子運道論。いつも通りにPV=(1/3)Nm<u2>を導出する。uは分子の速度。これも例年通り、「運動量変化=力積」を途中に挟んでいる。導出したベルヌーイの式と理想気体の状態方程式PV=nRTから、運動エネルギー分配則を出す。分子を質点とみなすとを最初に言うべきだと気付いたのは、次のファンデルワールス状態方程式に進もうとして。

ファンデルワールス状態方程式は、「気体分子運動論では1分子が壁に衝突するときの運動量変化の計算を単純に全ての粒子について加え合わせ、理想気体の状態方程式について考察した。つまり、粒子同士の衝突も粒子間の引力も考えなかった。さて、それらの影響を考慮に入れると、理想気体の状態方程式PV=nRTはどのように修正されるであろうか?」と導入を行った。粒子の大きさの効果として、単に粒子が自由に動ける範囲が減ることと説明。そして、これは簡単と述べ、V→V-nbと書く。気体分子運動論のところで、粒子数Nとモル数nの関係はやっている。自由に動ける空間の現象の大きさは、粒子数に比例する。(自由に動ける空間の減少に関しての)有効的な粒子の体積とNを掛けたもの。と、説明した後、nに比例するからnbと書けるとした。引力の効果は、壁に粒子が衝突するときに、速度が減速されること、それによって圧力Pが減少する、と述べる。一つの粒子が減速される度合いは、周囲にある粒子の数に比例する(それを説明する図を描く)。そしてそれについて∝n/V、単位体積あたりの粒子数に比例する、と述べる。壁に衝突する粒子の数は、これも同様にn/Vに比例する。そこまで述べて、P(V-nb)=nRTをP=nRT/(V-nb)と変形してから、P=nRT/(V-nb)→P=nRT/(V-nb)-a(n/V)2を書く。[P+a(n/V)2](V-nb)=nRTまで書いて、次へ。

気体の液化。体膨張率・定温圧縮率のところで、体積変化について少し触れているので、それを前提にして「ファンデルワールス状態方程式は単に理想気体からのずれを表すだけでなく、何桁も体積が変わる気液相転移をも記述するもの」と導入を述べる。まず、PV=nRTのグラフを描く。その後、ファンデルワールス状態方程式はどうなるでしょうか、と述べる。横軸がモル体積Vm=V/nで縦軸が圧力P。少しミスをしたが、[P+a(n/V)2](V-nb)=nRTをまず[P+a(1/Vm2)](1-b/Vm)=RT/Vmと変形し([P+a(1/Vm2)](Vm-b)=RTの方がよかったかも)、Vmが十分に大きいときは、右辺のカッコ内の第二項が第一項に較べて無視できて、理想気体の状態方程式に一致することお述べる。次に、消さずに残していたP=nRT/(V-nb)-a(n/V)2を使って、高温では-a(n/V)2が無視できて、P(V-nb)=nRTと双曲線を横に移動したものになることを述べる。さて、すると低温ではどうなりますか、と言うことになり、低温で気液相転移が起きることを説明します、と。Vmで書いたファンデルワールス状態方程式の分母を払い、三次方程式であることに言及。一般に三次方程式は3つの解を持つ。それが低温で、高温では解の数が一つになる。P-Vm図に一つに圧力Pに対し3つのVmが存在するように点を描き入れた後、大きなVm理想気体になるとして描いた線を延長するように、横向きのS字を含む曲線を書き入れる。その後、マクスウェルの等面積側を説明。最後に、横S字型と単純な双曲線の境界の温度という導入で臨界温度Tcを定義し、臨界点を求める方法を説明する。教科書は三次方程式が三重解を持つ条件として臨界温度Tcを出しているが、一般には三次方程式になるとは限らないので、(∂P/∂V)=(∂P/∂V)=0によってTcmの解が臨界体積Vcで、相当する圧力が臨界圧力Pc