講義1(後期開講分) 平成29年度13回目

2017年11月14日。

夕方に講義1。本日で回折のところは終り。昨日のミスを修正するのと、回折の広がりが開口幅に反比例し、波長に比例することを言うのにちょうどいいので、最初にレポート課題を配布してしまう。積分変数はξということを繰り返していながら、xを積分変数と間違えるようなことをやってしまい、動揺してほんの30秒で正せる(実際に教員室に帰ってから30秒位で正しくやってしまった)ことができなかった。レポートではそういうミスをしないように、とわざと間違いをやって、皆に気づいてもらうことはたまにやるが、それとは違い完全なミス、と告白を。

開口関数の拡張の話から。元は開口面での振幅であった。平行光が入射するとして、開口上での振幅は一定だとしたが、その条件が成り立たなければ、開口部で1でそれ以外で0とはならず、0≦f(ξ)≦1の値となる。ここでは、そんな難しいことを扱うのでなく、開口部が半透明で透過率が1以下の場合を考える。透過率に分布があれば、開口関数f(ξ)は透過率分布となる。透過率一定の媒質の厚みが異なる場合を考えてもいいだろう。屈折率が1と異なる透明物質の場合はどうだろう。開口部で場所によってその厚みが異なる場合を考えてみよう。。。u(ξ)~exp[-in1kd1]などを図に合わせて書いて、f(ξ)=exp[-iφ(ξ)]の形になりますね。大きさ1で位相だけ。半透明で透過率分布も屈折率分布もある場合は、それらの積になりますね。実は、屈折率分布がある場合は、難しい問題になってしまいます。透過率分布だけのあるばあを考えます。

f(ξ)=(1+sinKξ)/2の場合を考えます。教科書では、開口面上の座標をxといていますが、(黒板に書いた)フラウンホーファー回折の式に合わせてそれをξとします。計算に少し数学の復習が必要です。まず、x=0を中心とした幅εの範囲だけが値1/εを持つ関数δε(x)を定義し、ε→0の極限としてディラックデルタ関数δ(x)を定義して説明。次いで、1(つまりf(ξ)=1)のフーリエ変換としてδ(x)が書けることを。幾つかのデルタ関数の性質を説明した後、f(ξ)=(1+sinKξ)/2をフラウンホーファー回折の式に代入して計算。観察面上での振幅が3つのデルタ関数の和になる。0次回折光と±1次回折光が現れることと、強度比にするとこの場合は1対1/4になることを説明。高次回折光がf(ξ)がsinKξのみを含み、高調波成分を持たないから。もう一つの特徴は、矩形開口の場合と違い、回折光が幅を持たないこと。数学的に厳密なデルタ関すは不可能で、実際にはδε(x)。

次に予告したとおりN重スリット。その前に2重スリットの幾何学的な説明を補うと言う。u1(x)=2a sinc[(2πa/λR)x]とu2(x)=2exp[(2πib/λR)x]cos[(2πb/λR)x]u1(x)を書いて、ux(x)の包絡線の中にcos[(2πb/λR)x]の微細構造が生じることを「昨日の繰り返しです」と言って繰り返す。今度は、実際に包絡線の中に微細構造を書く。そして、u1(x)の暗線の条件を書いた後に、cos[(2πb/λR)x]の明線の条件を書く。暗線の条件と明線の条件が一致すると、現れるはずの明線が消える、と欠線の説明を。bがaの倍数になっている場合に生じると説明。

さて、N重スリットへ。昨日の二重スリットのときの積分の式の後に+…+を書いて、0番目のスリットの積分範囲は-aからa、1番目が2b-aから2b+a、N-1番目は2(N-1)b-aから2(N-1)b+aと説明して、N-1番目の積分を書く。次に、0番目はそのままで、1番目の積分ではξ'=ξ-2b変数変換、N-1番目の積分はξ’=ξ-2(N-1)bに変数変換と言って書き換え。そのようにして、まずuN(x) = {1+exp[(2πix/λR)2b]+…+exp[(2πix/λR)2(N-1)b]}u1(x)。ここで、r=exp[(2πix/λR)2b]とすると、{...}=1+r+...+rN-1等比数列の和の形になり、{...}=(1-rN)/(1-r)と計算できる。|r|<1のときに収束するが、Nでとめているので問題にならない。今の場合、rは大きさ1の位相因子のみである。元に戻すと{...}={1-exp[(2πix/λR)2Nb]}/{1-exp[(2πix/λR)2b]}となる。ここで、二重スリットのときに使ったテクニックが使えて、と計算を進めて、exp[(2πix/λR)(N-1)b] sin[(2πx/λR)2Nb]/sin[(2πx/λR)2b]の形へ。こおまで、きれいにまとまりましたね、で満足することもできるが・・・、更に次があることを匂わす。まず、N=2の場合にu2(x)=2exp[(2πib/λR)x]cos[(2πb/λR)x]u1(x)が再現できることを確認。その後、cosだから2重スリットではu1(x)の前の項は(高さ1で)有限幅ですね、とまず言う・・・2と言うべきだったか。次にN重スリットの場合を考えて見ましょう、と。x→0でsin[(2πx/λR)2Nb]/sin[(2πx/λR)2b]→Nになることを説明。強度だとN2倍になる。Nが大きくなると高さが無限大になるとともに幅も無限小になることを述べ、終了。X線で結晶を調べると、回折は点になることを補足。