講義1(後期開講分) 平成29年度9回目

2017年10月31日。

夕方に講義。後半(目標2)の第2回目。フレネル・キルヒホッフの積分定理にキルヒホッフ近似を行う。その後、更に近軸近似を行い、傾斜因子まで。

最後の傾斜因子のあたりのところでミスをしてしまった。そこまでは、例年通り。また、前期と同じミスをしないように心掛けた(ひょとすると∂r0/∂z = (z-z0)/r0 = cos(ν,r0)と正しいのを書いてから、誤りの(z0-z)/r0に修正してしまったかも --- ∂r/∂z = z/r = cos(ν,r)は誤りようがないし、電磁気学でやっていること)。

キルヒホッフ近似において、開口部に光源Qを発した球面波が到達するのは、近似というよりも理想化なので問題はない。開口面において、開口のない部分での振幅とそのほう線方向の方向微分をゼロとするのは、遠視野条件においては良い近似といってよいであろう。問題は、観測点より十分遠方で振幅が1/rのようにゼロになるからと、フレネル・キルヒホッフの積分定理において、表面のその部分にわたる積分自体をゼロとしてしまうこと。1/rを積分すると、対数発散する。このことは毎回説明している。従って、数学的には破綻した近似である。これに対し、実際に測定できるのは振幅ではなく、その二乗に比例する強度である、ということを指摘し、「そのような事情で、この近似を行った式に基づいて実験結果を正しく説明できている」とそれ以上は深入りしない。

遠視野の条件はr>>λとなる。従って、k=2π/λ>>1/rとなり、∂[exp(ikr)/r]/∂rの計算で出て来るik-1/rは、ikで近似できる。光源についても遠視野条件が成り立つとすると、∂[exp(ikr0)/r0]/∂rの計算で出て来るik-1/r0も同様にikで近似できる。遠視野という術語を出すようにしている。そのようにすると、被積分関数はきれいにexp[ik(r+r0)]/rr0とcos(ν,r)-cos(ν,r0)の積になる。

傾斜因子のところへ行く前に、開口の中心Xcを定義し、光源Qおよび観測点PとXcとの距離をR0およびRと定義し、exp[ik(r+r0)]/rr0のrr0をRR0で近似し、積分の外に出す(この段階でcos(ν,r)-cos(ν,r0)もcos(ν,R)-cos(ν,R0)で近似して積分の外に出す方がいいかも)。その後、近軸近似の説明を行う。つまり、入射光および回折光が光軸にほぼ沿っていれば、積分変数が動いて(開口上の点Xが開口部分を動いて)もrとr0がRおよびR0と大きく異ならない。ミスは、回折光も入射光も近軸光の場合に(ν,r)=δ~0および(ν,r0)=π-δとなるところ、それが逆になってしまったこと(実際には回折光はXからPへ向うのでこのミスが置きた訳だが、その実情に合わせると光軸の向きも開口面のP向きの法線方向となる)。次に、入射光が完全に光軸に沿っている場合を扱い、傾斜因子K(δ)=(1+cosδ)/2を導出してその意味の説明をし、「ホイヘンスの原理の欠点が克服できた」として終り。もちろん、ミスは引きずっりつつで(この段階で「あれ?」だたかも) 、cos(ν,r)-cos(ν,r0)でなく、cos(ν,r0)-cos(ν,r)でしたか?・・・として、誤魔化してしまって・・・。

講義終了後、この点に関して疑問解決を試みた学生がいて、大変感心した。また、その真摯な姿勢に大感謝である。