講義2 平成29年度 第7回目

2017年6月30日。

今日で6月も終りですね。熱力学第二法則も今日で終わりです。今日は、エントロピーの計算を行います。その後に第二法則に付随する事項をやります。前半のレポート課題も配布する。嫌なことも通知しなければないらい・・・本年度は、出席の不足している学生にポートフォリオを提出させて(試験を受けるに値するだけの学習を尾行っているかチェックして)、試験の受験資格の認定を行うことはしない。もう、一杯なので、他の職務に支障が出てしまうから。

まずは、第一法則のところの演習問題の回収。

dS=d'qrev/Tを印象付ける話で、可逆的食物摂取の話。冗談ぽい話がツボにはまって、理解を深めたり、記憶に残ったりすることがある。生身の人間が講義する意義。今日の私の体温は36.5℃でした。いつもは36.1-2℃なので、膠原病の関節症状があって、熱が少し高いのかもしれません。これは、十数年前の学生が言ったことですんので、冗談で言ったのかもしれません。今日は36.5℃で〇〇カロリーを摂取したんで、これだけのエントロピーを増やしました。普段だと、もう少し体温が低いので同じカロリー摂取でもエントロピー増加は少し多いことになります。ポイントは、「可逆」です。可逆的にカロリーを摂取した場合はそうなります。可逆的食物摂取と言う話に進むと、飛んでもないことになります・・・。摂取したカロリー排出すれば元に戻ったことになるのでしょうか。あなた自身、系は元に戻ったのかもしれませんが、環境は元に戻りませんね。

そんな話をした後に、エントロピーの計算を。まずは、理想気体の等温膨張。次いで温度変化に伴うエントロピー変化。相転移に伴うエントロピー変化は、相転移熱の説明が薄かったので、それを補うように話した。第一法則のところの順番だと、次は反応エントロピーとなるが、それは別の章で詳しくやることになる。混合のエントロピーは、少し仰々しく。理想気体の混合の場合は、等温膨張と同じだが、仰々しく「混合のエントロピー」といって、モル分率を使った式を書くのがためになる。つまり、理想気体でなくても、分子の(大きさ)相互作用がなければ同じものが出てくる。

エントロピーの分子論的な意味を説明し、第三法則について話した後、マクスウェルデーモンの話もする。皆さん、神様の話し、待っていたでしょう。反省してもうエントロピーを増やすことはしませんので、神様、私が無駄に増やしたエントロピーを元に戻して下さい、の話。可逆的カロリー摂取/食物摂取と同じで、印象付けにしかならない人もいれば、高度な話として捉えられる学生もいるかもしれない。あ、その前に「可逆」について。医学などでは、例えば関節が変形してもそれが元に戻せたり、胃に穴が空いても元に戻せたりする場合に「可逆」、そうでない場合に「不可逆」っていいますね。体に不可逆変化が起きてしまうと、今後の人生が大変になりますよ。環境に変化を残したくないと言って、体が不可逆な変化をしてしまわないように。さて、神様の話。物理学では、神様でなくてデーモンって言葉を使います。まじめに議論されてきた話です。気体の自由膨張を考えましょう。不可逆変化ですね。ところが、気体が入っていた容器と真空だった容器をつなぐ管を分子1個が通る程度の細さにし、分子が右向きに動いていたらシャッターを閉め、左向きに動いていたらシャッターを開けるという操作をしたとしましょう。元の状態に戻ってしまいますね。このような操作をするデーモンをマクスウェルデーモンって呼びます。昔はデーモンだったかもしれませんが、今は計算機制御で分子を識別してシャッターを開け閉めする装置はできそうですね。デーモンということで計算機の電力は問題にならない程度に理想化したとしましょう。その場合、自由膨張を行う前の状態に戻ったのですから、系のエントロピーは減少しますね。最新の研究によると。計算機が情報処理を行ったことに伴うエントロピー変化と系のエントロピー変化を合わせると、トータルではエントロピーが減少することはないということです。管とシャッターの系にとっては、計算機は外界だったのですね。