講義1(前期開講分) 平成29年度 15回目

2017年6月1日。

昨日の午後イチの講義1。屈折率楕円体、媒質の光学的異性に関しての分類、結晶系と光学的異方性。偏光素子。これで、試験を残すのみ。

まず、今の異なる媒質中の光波の話が複屈折の話であることは分かりすか、との問い。反応無し。方解石やカルサイトという語をだしても同様。複屈折性媒質で文字とか図が二重に見えるデモンストレーション、見たことないですか? これも反応無し。高校の教科書に写真は載ってましたよね・・・。この辺で限界。

屈折率楕円体の定義は、前回に述べているので、軽く済ます。屈折率楕円体を用いて、主屈折率が既知の媒質中に光波(電磁波)が入射したときに、伝搬方向aが与えられたときに二つの固有モードとそれに対応する屈折率を求めるやり方を説明。今回は、aを原点から描き、aに垂直な平面を作図し、その平面と屈折率楕円体の交線の楕円の長軸と短軸の長さが二つの屈折率になることについて、教科書のそれを説明する式に触れた。

その後は毎回、フレネルの法線方程式の分母を払って、位相速度が二次方程式を解くことによって得られること説明。つまり、屈折率楕円体を使って求めるときに、「二つ」と限定したことを正当化。その後、nx=ny≡no、nz≡neの場合(vx=vy≡vo、vz≡veの場合)に分母を払ったフレネルの法線方程式を解き、常光を異常光の説明を行う。常光線と維持異常光線は、伝搬方向がz方向の場合に一致し、そのような方向を光学軸というと説明。nx=ny≡no、nz≡neの場合は、光学軸は1本で、一軸性と呼ばれる。もちろん、nx、ny、nzのうちの二つが同じで、残りの一つがそれらと異なる、というように一般化している。順番が逆になるがと断って、nx=ny=nzの場合が等方性であることを述べる。説明は省略するが(何でもかでも説明すればいいっていうものではなく、分かった気になっているのを分からない気させるのはしなくてもいい)で、二軸性の説明。

その後、まず正方晶を例に等方性を説明。微視的にx軸とy軸とz軸を入れ替えても構造がかわらなければ、巨視的な性質もそれを反映している。微視的な性質を平均して巨視的な性質を導くときに、微視的な非対称性が消えてしまって、巨視的性質に現れないことはある。これにより、正方晶系の場合にはnx=ny=nzとなり、等方性になる。まず、結晶の単位格子のパラメータa、b、c、α、β、γの説明をし、立方晶がa=b=c、α=β=γ=90°であることを述べる。その後、z軸が光学軸である1軸性になる条件を、x軸とy軸を入れ替えても変わらない結晶構造とのことで、まず正方晶a=b≠c、α=β=γ=90°を説明。z軸(c軸)関して対称とのことで、六方晶と三方晶の横にa=b≠c、α=β=90°、γ=120°とa=b≠c、α=β=90°、γ=60°を書き込む。c軸が底面に垂直で、底面が正方形、正六角形、正三角形の三つの場合、とまず説明。六方晶と三方晶の変換が可能であることも、説明はせずに(軸の定義の仕方とだけ言って)述べる。次は、二軸性ですが、今説明した以外の晶系は全て二軸性になります。それで終了ではなく、微視的な性質を巨視的な性質が反映することから、斜方晶a≠b≠c、α=β=γ=90°の場合に(既に微視的な非対称性を反映してnx≠ny≠nzは説明済)主軸が結晶軸と一致することを説明。他の場合は、必ずしもそのようなことは言えません。

最後に偏光素子。例として、まず偏光状態の変換を挙げる。最初に偏光プリズムを説明。複屈折性媒質を特定の角度に切り出して張り合わせれば、固有偏光を分離できる。教科書の例で済ます。偏光状態を扱う場合にまず直線偏光からスタートでしょう、と(波長板に入る前に)ワイヤーグリッド偏光子の話をする。スタートとなる直線偏光ができました。さて、それをもとに様々な偏光を作りましょう。そのための素子が位相板(移相子)=波長板です。反射・屈折の際の位相変化を考えると教科書のような組み合わせとなりますが、本質は主軸に沿って切り出した複屈折媒質で、振動方向によって屈折率nが異なることです。z軸が光学軸の1軸性媒質をxz面に沿って切り出した(厚みd)ことを考えましょう。軸対象ですのでx軸はy軸でも構いませんし、xy面内でz軸に関して対称なので任意に回転させても構いません。z方向とx方向で屈折率nが異なりますね。光波の進行方向をz方向、それに垂直な主軸方向にx軸とy軸を取りましょう。E||x軸の場合の屈折率をnxE||y軸の場合の屈折率をnyとしましょう。少し計算をしして、Exの初期位相φxとEyの初期位相φyがφx→φx+2πnxd/λ、φy→φy+2πnyd/λと変換され、加わる量が異なることをいう。少し計算して、Δφ≡φyxについてΔφ→Δφ+2πΔnd/λの形の変換となり、例えば直線偏光で二つの固有偏光の間に位相差がないものに対し、dを選べば、円偏光に必要な±π/2の位相差を与えることができる。π/2の位相差は1/4波長に相当するので、このような波長板を1/4波長板と呼ぶ。πの位相差を与える波長板は半波長板。もちろん、二つの偏光成分の振幅が等しくなければ円偏光にはならないから、±40°偏光が円偏光に変換される。半波長板は、右回り円偏光と左回り円変更を互いに変換する。また、θ偏光と-θ偏光を互いに変換する。最後に、進相軸・遅相軸の説明をして終了。