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講義1(前期開講分) 平成29年度9回目

2017年5月11日。

昨日は、朝イチに新入生の導入科目(新入生オリエンテーション・新入生研修の続き)の授業。そして、午後イチに講義。タフな一日だったのは、午前の後半にペーパーワークを行ったこと。また、二つの授業の試験問題作製中でもある。学生委員の関連のイベントの日程調整の返事が遅れていて、催促されてしまった。

さて、講義はヘルムホルツ・キルヒホッフの積分公式(前回の講義の最後)にキルヒホッフ近似を行い、計算可能な形式に近づけること。積分公式における面積分を行う領域を(A)開口部、(B)開口面で開口の開いていない部分、(C)観測点Pより遠方に分け、(B)と(C)に関する積分自体をゼロにすることがキルヒホッフ近似。(B)の積分をゼロとみなすことは、開口の開いていない部分に回りこむ波は、今考えている遠視野条件では寄与しないと考えられるから。これは、毎年述べている。遠視野条件は、波長λと開口上の点Xから観測点Pまでの距離rについて、r>>λとなることに言及。ついでに、光源Qから開口上の点Xまでの距離r0についてもr0>>λを記述。毎回述べているのは、(C)における積分をゼロとすることは、数学的には破綻した近似であること。振幅uは球面波のように振舞い、被積分関数は∝1/rのようにゼロになる。しかし、被積分関数がゼロに収束しても、1/rの積分は発散しますね。その類の近似ですよ。それにもかかわらず、その近似を使った理論で現象は上手く説明できてしまうんです。教科書には書いてないことですが、光波の場合、周波数が高いので、振幅uそのものは観測できなくて、その二乗が観測される、そんな事情かもしれません。

さて、実は球面波u=Aexp(ikr0)/r0の方向微分で小さなミスを犯してしまいました。積分公式中の(v=)exp(ikr)/rの方向微分を∂[exp(ikr)/r]/∂z = (∂r/∂z) ∂[exp(ikr)/r]/∂rと計算するのと形式的に同じ形です。つまり、∂[exp(ikr0)/r0]/∂z = (∂r0/∂z) ∂[exp(ikr0)/r0]/∂r0まではよくて、さらに開口面法線とrおよびr0のベクトルとのなす角のコサインで表現するものも間違いは犯していません。X(x,y,z)、P(0,0,0)の場合は、r=(x2+y2+z2)1/2なので、 ∂r/∂z=z/rです。しかし、Q(x0,y0,z0)のときr0=[(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2]1/2で、∂r0/∂zも∂r0/∂z0も同じであることに言及し、 ∂r/∂z=z/rに添え字0を付けたものを間の計算で書いてしまいました。計算すれば一目瞭然ですし、∂zを∂(z-z0)で置き換えても(∂(z0-z)で置き換えても)同じというところまで言えば良かったんですね。次回はうっかりしないようにしたいと思います。

遠視野条件を不等式で書いたことは、この方向微分における∂[exp(ikr)/r]/∂rと∂[exp(ikr0)/r0]/∂r0に対する近似を正当化するのにいいんですね。k=2π/λはrやr0に較べて十分に大きい。

開口の中心と光源の距離R0と開口の中心と観測点の距離Rを定義して、被積分関数中のexp[ik(r+r0)]/rr0において、分母をRR0に置き換えるが、分子の指数関数中ではその置き換えの近似はできない。精密さのためにこの段階でRとR0を出している(フラウンホーファー回折・フレネル回折に進む前に)。遠視野条件を不等式で書いておいたことは、指数関数の肩が大きな数であることを示してもいる。

平行光が回折される場合に、回折光について近軸近似を行って、回折光と光軸とのなす角の関数としての傾斜因子を積分の外に出した形を補足。これは、ホイヘンスの原理でで排除できなかった後退波を自動的に排除するものである、と説明。前回に「ホイヘンスの原理のこの欠点は、回折理論では解決される」と述べていて、その答を示した訳です。傾斜因子に1/2を付けた方が良かったと少し反省。