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講義1(前期開講分) 平成29年度5回目

2017年4月25日。

昨日の午後イチは、講義1(前期開講分)の第5回目。前回にマクスウェル方程式から電磁波ー振動解が存在することーをやった。本来はその継続としてやることろだが、電磁場の境界条件についての演習を先にやることにする。従来のやり方では、境界面に電荷も電流も存在しない場合に、例えば電場が境界面を挟んで連続であることをまず複素振幅で書く。その後、その条件が振幅についての条件と位相についての条件に分離できることを説明。位相条件から反射・屈折の法則(スネルの法則)が出てきて、振幅条件から”これからやる”フレネルの公式が出てくる。従来は演習を行っていなかったので、スネルの法則についても、「位相条件からスネルの法則を導出するのは、こんなものです」という程度(積りはそうでも、いつも詳細までやってしまっていた)の紹介をしていた。

演習問題は、実質は垂直入射に関してのフレネルの公式の導出。しかし、上の振幅条件・位相条件をやっていないので、それを回避する問題設定としてある。更に、電磁波が境界面に入射し、一部が反射され、一部が透過するとしている。電磁波一般の問題としている。そして、入射波の進行方向をz方向、境界面をxy面とし、磁場をy方向と既定した。従って、電場はx方向。反射波については、進行方向が-z方向になるようにy軸を中心に回転させると、磁場はそのままだが、電場の方向は-x方向に向くということを記している。私は、単に媒質1(入射波のある側)内の電磁場は、入射波のものと反射波のものを足し合わせたもの、というだけで電場と磁場の方程式を立ててくるものだと予想していた。黒板で問題を解いてくれた学生は、何と「電場の(x成分)が正の方向を電磁波の振幅が正とする流儀」で、媒質1側の電磁場は入射波のものに負号を変えて反射波のものを加えたもの(反射波のものを引いたもの)として電場と磁場の境界条件の式を立てた。言われなくても気付いたことに驚きを隠せない。講義中でも驚きを隠さずにコメントした。

「流儀の問題」というコメント。S偏光(TM偏光)では磁場の方向が(y軸の)正の方向を光波の振幅が正で、P偏光(TE偏光)では電場の方向が(y軸の)正の方向に取る流儀もあり、その場合には反射波の電場・磁場の前に負号は付かない。どちらでもいい。ちなみに、垂直入射の場合は、S偏光とP偏光の区別はないので、電場の振幅の比は同じになるはずだが、教科書ではS偏光については、(n1-n2)/(n1+n2)、P偏光については(n2-n1)/(n1+n2)となっており、符号が異なっている(nは屈折率で、1および2は媒質を表し、透過側を2としている)。これは、流儀の問題で、どちらでも構わない。ついでに、今まではS偏光・P偏光の語を主に使っていたが、TM偏光・TE偏光の方が斜入射の場合に入射角に依存しないのが磁場なのか電場なのか(この流儀だと、光波の振幅の正の方向の基準とするのが磁場なのか電場なのか)と対応していて、本質的に見えるので、それを使うようにします、とも。もちろん、光波の場合は、電場でもって振幅を表す慣例なので、S偏光(TM偏光)の場合に電場の方向で光波の振幅の正の方向を既定するのは、それに対応している。

このように演習を終了した後、上に述べた振幅条件・位相条件の話をして、フレネルの公式へ。今では、TE偏光が(流儀の問題もなく)電場を基準にして問題を解くのが、光波の振幅の慣例とも一致しているので、TE偏光についてのフレネルの公式を導出することをレポート課題にしてきた。しかし、この演習問題のように、TM偏光の場合は電場Eを磁場Hと媒質の特性インピーダンスZで表して、H基準で(Hについて連立方程式を立てて)問題を解くのが自然であった。インピーダンスZは、どの教科書にも出ているもの(インピーダンスZでフレネルの公式を表したものは、電磁波一般に対するもので)。そこで、TM偏光の場合をレポート課題にします(更に斜入射になった場合の物理的解釈にも困難がないこともに軽く言及)、と。更には、TE偏光の場合に、E基準で問題を解く、つまりHを消去する場合は、連立方程式の係数が1/Zとなる。もちろん、そんなものは面倒なだけで本質的困難ではない、という学生はそれでいい。この中にもそのような学生はいるかもしれないが、それが著しい煩わしさになってしまう学生もいるはずである。

TE偏光に関するフレネルの公式については、一部企業秘密的なところがあるので、詳述はできない。上の段落の関係では、1/Zが係数だと間違いを犯すならば、1/Z=Yとおけばいい。Z=(μ/ε)1/2なのでY=(ε/μ)1/2である。尚、演習の最後で、Zで表したフレネルの公式を比磁性体の場合に屈折率nで表すことはやっていて、その際にn~(ε/ε0)1/2=(εr)1/2もやっている(ここで~は、非磁性の近似を意味する)。するとY~(定数)×nが直ぐ見える学生もいることでしょう。斜入射の場合に係数がYである連立方程式を書き、それを垂直入射の場合と比較し、まず垂直入射の場合のフレネルの式を書いた。ただし、時間がなかったので、振幅反射係数については、分子で添字1が先か2が先かは、各自確かめて下さいとした(TE偏光については流儀が一意なので、結果も一意で、1が先)。それと較べて、入射角のコサインと屈折角のコサインが入った場合についても各自計算して下さい、で済ませた。

既に宣言をしている、TM偏光についてのフレネルの公式の導出をレポート課題にすることについて。どちらの流儀でやるかは、採点の都合を考えて問題中に指示します、と述べている。どちらでもよいと思っていたが、教科書のE(r)/E(i)=(n2cosθi-n1cosθt)/(n2cosθi+n1cosθt)、E(t)/E(i)=(2n1cosθ)/(n2cosθi+n1cosθt)に一致する方の流儀を指示するのがよいという考え方に変わった。つまり、電磁波一般のZを使った表式から、教科書のものが導出できることまで経験させたらいい。

こうやって、記録を残しておくことは、役に立つ(既に先日役に立った)。nを使ったフレネルの公式で、nをn/μに置き換えれば、非磁性体に限定しない表現式となる。例年はこれを強調して述べていたが、今回は時間がなかった。慣用の光学材料は非磁性である。しかし、新規光学材料は非磁性に限定されない。Zを使った表式が電磁波一般のものであることも、もっと強調すればよかった。尚、講義の後片付けをしているときにその教室を次に使う建設工学科の先生と話をし、地震波に対するフレネルの公式をもう少し後の回で教える予定だと聞いた。電磁波だと横波なのでモードは二つしかないが、弾性波だと縦波もあるので、複雑なんでしょうね、とコメントを返した。更に、光学では係数は屈折率で表すのが慣例ですが、電磁波だとインピーダンスとかが本質ですよね。地震波の場合は波速で表します。そうすると、屈折率で表すのと等価ですね。という情報交換も。