講義2 平成28年度第12回目

2016年7月20日。

前回、うっかり「今日は演習をやる」って伝え忘れ。

さて、今日はまず相律(Gibbs phase rule)。c成分系でp相が平衡に

あるときの熱力学的自由度fを求める問題。まず、fの説明。独立な示強「的」変数の数。水と水蒸気の相平衡条件で、分量の異なる場合でも、例えば1気圧ならば沸騰温度は同じと言う例から、問題にしているのが示強変数であることを言う。蛇足で、沸点というのは、標準圧力におけるboling temperatureのことで、区別をするために沸騰温度と表現し、自由度1の線を点と誤解しないようにしたという。そして、示量変数のを密度量に直すとそれも「示強的」な振舞いをすること、具体的には多成分系を扱うのにモル分率を使ったことを説明。相平衡の条件を再度文章に表現した後に、それをc成分系のp相共存の場合について式で表現。まず独立な式の数を数える。次に、示強「的」変数の数を数え、引き算によって相律の導出は終了。次いで、c=1の場合に、p=1ならばf=2で温度とr力が独立に変えられ、p=2ならばf=1となってboing temperature Tb(P)のような自由度1の線になることを説明。p=3の場合はf=0だから自由度0の点。例として、三重点を説明。相律という形で、統一的にまとめられる。c=2の場合は、組成の自由度が入ってきて、三次元の相図となるが、例えば標準圧力である1気圧に限定して、三次元の相図の断面を見ることになる。

次の章は、二成分系の相平衡で、二成分系の相図の話。先立ってInGaNの組成不均一の話を出して、相図が材料創成のキーであることを強調。まずは全率型の相図から。いわゆる「てこの原理(てこの関係)」の説明は、相図を読むときのキーなので、全率型の場合を例に説明を行う。共沸はさらっと流す。上部臨界共溶温度は、すでにInGaNの例で説明済みだが、ここではエントロピー効果により高温で均一な混合によってエントロピーを得することによる自由エネルギー最小の現象だと説明。下部臨界温度の現れる物質もある。このタイプの相図でも「てこ」が成り立つ。次に共晶の説明。ここでも、「てこ」。そして、合金と溶液と区別せずに扱ったが・・・ということで、alloy、solid solution、mixed crystal混晶など、同義の言葉があり、liquid solution溶液に対してのsolid solution固溶体という見方を受け入れられると、同様であることがわかる、と。この節の最後に置換型合金と格子間原子型合金の説明を行う。もちろん、置換型合金のところでは不規則型と規則型があることも。

クラペイロン・クラウジウスの式の前に演習問題(レポートにするもの)を決める。

少し間が空いたので、後15分で一気にクラペイロンの式を終わらせます、と言ってはじめる。クラペイロンの式が一般的なもので、それにクラペイロン近似といわれるものを行うと、クラペイロン・クラウジウスの式になると述べる。二相共存曲線の傾きを表す式がクラペイロンの式ですと言って、まず温度T、圧力Pでのα相とβ相の二相共存を考える、と問題を定義。二相共存条件は・・・と言って、化学ポテンシャルが等しい式を書く。次に、ギブス・デュエム関係式を書き、化学ポテンシャルの温度微分がモルエントロピーで、圧力微分がモル体積で表されることをいう。そして、T+dT、P+dPにおける相平衡の条件を書き、「もう、dT、dPが小さいとして展開して、dPとdTの関係を求めることはわかるでしょう」と言って、時間がないから省略せずに全部式を書きますね、と進める。が、途中で学生から「あ、まだ消さないで」と言われ、頓挫。5分オーバーでクラペイロンの式の導出まで終了。反省があり、あらかじめ「β相が高温相で、高温相のエントロピーは低温相のエントロピーより低いから」と言って、ΔSをβ相のエントロピーからα相のエントロピーを引くように定義して、ΔS>0としておけばよかった。