講義2 平成28年度第8回目

2016年7月6日。

後半(目標2)の1回目。目標1の試験は、来週行うので、8回目が後半1回目になる。

その前に、講義終了後に、かつて○○センターというところの教員を兼担していた頃に一緒だった先生をお見掛けし、少し立ち話。旧交を暖められるのは、いい。

自由エネルギー、平衡条件、熱力学の関係式、開いた系が節タイトルだが、前の二つは一緒に行う。つまり、自由エネルギーを導入して、熱力学第2法則を等温過程に対して書き換える。これを行うために、前回の「外界のエントロピー」のところを復習。また、理想気体の断熱圧縮のところも引き合いにして、今までは基本的には孤立系が対象であったということを認識させる。さて、等温系の外界、熱欲とは何ぞや、という問い掛け。なぞ掛けを残したまま進んで欲しいような雰囲気もあったが、外界と系の間で熱のやり取りがあっても、温度の変化が無視できるくらい外界の大きさが大きいということは述べる。等温過程の場合に熱力学第2法則を書き換え、更に定積の場合と定圧の場合にその不等式をそれぞれヘルムホルツエネルギーとギブスエネルギーを使って表現して、孤立系におけるエントロピー増大則と同様な説明を行う。正力学の問題における平衡の条件が力学的ポテンシャルが最小だったことと同様な意味を自由エネルギーは持っていて、熱力学ポテンシャルと呼ばれることもある。つまり、熱平衡を求める問題は、熱力学ポテンシャル最小の問題であった。実は、もうひとつの「ポテンシャル」の意味も持っている。高さhにある質量mのおもりに滑車をつけて仕事を取り出す場合、摩擦がない場合に取り出せる最大の仕事は、重力ポテンシャルmghに等しかった。熱力学的な場合にも、系から仕事を取り出すとき、摩擦がなく、準静的に仕事を取り出せる場合の最大の仕事は、熱力学ポテンシャルの差になる。逆に、系の状態を変えるのに必要な仕事という問題にすると、ΔU-TΔS≦wの符号を変え必要はない。等号が成り立つのは準静的可逆過程の場合で、最小仕事が熱力学ポテンシャル差だということが導かれる。教科書では、正味の仕事というのを定義して書き換えているが、数式をいじくって理解したいのならばそうする必要があるが、wを静水圧による仕事と正味の仕事に分けるってところで混乱してしまうので、これで済ませましょう。

熱力学関係式は、微小なだけ異なる二つの状態を考えて、その間にどんな関係式が成り立つかを考えて見ましょう、とのイントロ。熱力学をよくわかっていない者は、そのような熱力学関係式を熱力学のポイントだというが、熱力学の魂は第2法則、つまり不等式でう。もちろん、平衡状態に限定した関係式の重要性は言うまでもないが。まず第1法則 dU = d'q + d'wを書く。二つの状態を準静的可逆過程で結びつけることを考えましょう、として静水圧による仕事 d'w = -PdV と第二法則 d'q = TdS を書いて、dU = TdS - PdVを得る。dU = U(S+dS,V+dV) - U(S,V)を書いて、SとVを制御した実験を行うことを考えましょう(エントロピーを制御した実験は難しいですが)。そうすると、この式の意味がわかるでしょう。Hを用いてdU = TdS - PdVを書き換えることもできるし、AやGを用いて書きえることもできる。それぞれがどの状態量を独立状態量、状態変数とした場合の式か、どの量を制御した実験なのかは、同様にわかるでしょう。これらの式は、第1法則と第2法則を併せたものなので、熱力学基本式と呼ぶ人もいます。非平衡の熱力学の分野では、ギブス関係式と呼ばれることもあります。次に、dU = U(S+dS,V+dV) - U(S,V)をテーラー展開して、温度Tおよび圧力Pを内部エネルギーUのS編微分およびV編微分で表すことができることを言う。これも、こういう実験を行って・・・と言う話をする。H、A、Gについても同様。巻マクスウェル関係式まで説明して、ギブス・ヘルムホルツはそれを使うところでやります(予習しておいてくれてもいいですよ)でここは終わり。

T = (∂U/∂S)V、-P = (∂U/∂V)Sを残したまま、開放系へ拡張しましょう、という話をする。dU = TdS - PdV (閉鎖系 n=一定)と書いてから、「系に物質量dnの物質が流入したときに系にされる仕事が μdn となるように係数μを導入する」と書く。dU = TdS - PdV(閉鎖系)は、dU = TdS - PdV + μdn(開放系)に拡張される。T = (∂U/∂S)V、-P = (∂U/∂V)Sの下付き添え字に「,n」を加えた後、「同様にとして」μ = (∂U/∂n)S,Vを書く。dU = TdS - PdV + μdnをH、A、Gで書き換えた式も書いて、(∂G/∂n)T,P = (∂A/∂n)T,V = (∂H/∂n)S,P = (∂U/∂n)S,V = μを書く(敢えて(∂U/∂V)S,Vまで)。実験がイメージしやすいのは(∂G/∂n)T,Pでしょうと言って、化学ポテンシャルμが状態に依存した量であることをいう。

これで終わり。この記録を書いていて、熱力学関係式のところのイントロで、もう一言加えればよかったことに気が付く。つまり、「微小なだけ異なる二つの状態」を考え、状態量の間の変化を調べる訳だから、「二つの状態にのみより、途中の過程に寄らない」のである。