講義2 平成28年度第2回目

2016年6月15日。

平成28年度の講義2の2回目。気体分子運動論、実在気体(ファン・デル・ワールス状態方程式)、実在気体の液化。

まず、前回の補講に出席できなかった学生のための軽い補足。目次を見て、第三法則が第二法則の章の中の一節でしかないことに言及。それは、第三法則がその程度の、第二法則の補足程度の意味しか持っていないから。前回やった第ゼロ法則と第二法則が重要。物理系の熱力学と化学系の熱力学は、内容としてはほぼ同じだが、語法等に少し違いがある。として、化学熱力学では推移則としての第ゼロ法則に重点を置くが、物理では平衡状態の存在することの重要性を説く。私は、物理出身ですが、前回にゲルをベースとした材料開発の研究関連の用事で休講にしたように、化学に近いところが研究分野です。折角私が講師なのだから、メリットを生かすのがよい。物理系と化学系の間で会話ができるようにと言う意識をもって講義をします。

熱力学は原子分子に立ち入らない学問体系でした。公理的熱力学といって、完全にその形式で進める熱力学もあります。理論物理学としては意味がありますが、材料創成や材料の応用を目的とした場合は、適宜分子的な描像の助けを借りて、理解を深め方がいい。といって、気体分子運動論=初等気体分子運動論へ。結局はエネルギー等分配則がミソ。また、温度は、ボルツマン定数を掛けてエネルギーの単位に換算すると、kBT/2が一自由度当たりの運動エネルギーに等しい。これが、温度の正体でした。

ファン・デル・ワースル状態方程式も、公理的熱力学の体系よりも、分子論的な描像を用いた方がいい。初等気体分子運動論では、分子に大きさも分子間引力もないとした。ここでは、分子の大きさの補正と分子間引力の補正を入れると状態方程式PV = nRTがどのように変わるかをやる。分子の大きさの補正は、分子が自由に動ける空間が現象すること。分子の体積をvmとすると、V → V - Nvm(分子数Nは、気体分子運動論のところで導入済み)。ここで、Nvm ∝ nだから、V → V - nbとなる。次に引力の効果。分子が壁に衝突する絵を描いて、分子間引力により、衝突する分子が減速され、減速の度合いは単位体積当たりの分子数N/V(∝ n/V)に比例することを説明。更に、その効果を受ける分子数もN/V(∝n/V)に比例することを説明。少し難しいかもしれないが…といいながら、V → V - nbによりP = nRT/V → P = nRT/(V-nb)となり、更に→ P = nRT/(V-nb) - a(n/V)2と書き、最終的に[P+a(n/V)2](V-nb)=nRTを得る。

気体の液化のところでは、まずモル体積Vm = V/nを導入して理想気体の状態方程式をPVm = RTと書き換える。ファン・デル・ワースル状態方程式も(P+a/Vm2)(Vm-b) = RTの形に書き換え、希薄つまりVmが大きいときにPVm = RTになることを説明。次に、分母を払うとファン・デル・ワースル状態方程式はVmの三次方程式になるから、一般には解を3つ持つことに言及。そして、P = TR/(Vm-b) - a/Vm2と変形し、高温ではa/Vm2が無視できることを説明。すると、P-Vm図において、高温でPVm = RTに近づく曲線となり、低温ではSを横に倒したような部分をもつ曲線になる、と。さて、その境界を求めましょう。教科書では(P+a/Vm2)(Vm-b) = RTから分母を払った三次方程式が三重回を持つ条件をその境界の条件として求めている。一般には、P = TR/(Vm-b) - a/Vm2から、(∂P/∂Vm)T = (∂2P/∂Vm2)T = 0から臨界点(TC, PC, VC)を求める。教科書の(TC, PC, VC)と一致することを確かめて下さい。最後に、マクスウェルの等面積則やって本日は終わりです。横S字の上の部分では液相がのみが安定相、下の部分では気相のみが安定相、その間で最安定相、準安定相、不安定相が存在します(3つの解のうち、真ん中の解は圧縮率が負となる不安定相であることは済み)。さて、圧力を下げたときに「液相が最安定相、気相が準安定相」から「液相が最安定相、気体が准安定相」に入れ替わる条件はどこでしょうか? と言う問い掛けをし、答として等面積則を出す。

時間一杯までやってしまったのは、初等気体分子運動論のところがスムースでなかったからか? イントロを繰り返したからか? 授業予定のプリントのミスの説明がくどかったからか? 真ん中くらいで休憩を入れるような余裕が欲しい・・・