講義1 平成28年度第15回目

2016年6月4日。

6/3の午後イチは、講義1の第15回目。後半の目標2の7回目で、異方性媒質中の電磁波(結晶光学)の2回目。この講義の試験前の最後の授業。

ともかく、屈折率楕円体を使って、「光波の伝搬方向aが与えられたときに、二つの固有モードに対する屈折率を求める」方法をやる。フレネルの法線方程式によるものと同じである証明は、いつも通り省略。教科書では法線方程式でなく、波面速度方程式としていることについては、コメントしょう。位相速度は波面(=等位相面)の伝搬速度のこと(波面法線速度)で、異方性媒質の場合はエネルギー伝搬速度(光線速度)と区別する必要があった。つまり、波面法線aに対するものを、「波面」を省略して法線方程式と呼んでいる。波面速度方程式は、エネルギー伝搬方向の単位ベクトルを与えて光線速度を求める光線速度方程式がすることを示唆する表現。

肝腎の屈折率楕円体の使い方は、屈折率楕円体を描いて、原点を始点にaを入れて、原点を通るaに垂直な平面を「考えて」と言って、それと屈折率楕円体との交線を描く。交線が楕円になることを言い、楕円の軸の半分が二つの固有モードに対する屈折率であり、軸の半分のベクトルが対応する固有モードの電束密度だという説明をする。

次に光学軸の定義を板書。nx = ny ≡ no、nz ≡ ne(no ≠ ne)の場合の屈折率楕円体を描いて(ordinary、extrordinary等についても補う)、この場合はz軸が光学軸となるという説明。二つの固有モードの光波が一致する伝搬方向aという説明を、「あ、光波は一致しませんね。光線ですね。」と訂正。光学軸の数による異方性媒質の分類として、nx = ny = nzの場合が等方性、nx = ny ≡ no、nz ≡ ne(no ≠ ne)の場合は一軸性、全て異なるnx ≠ ny ≠ nzの場合は二軸性。二軸性の場合は光学軸の数は2で、三軸性とか四軸性とかはないという説明。一軸性の場合について、フレネルの法線方程式を解いて、vp2 = vo2の常光(位相速度がaに依らない)とvp2 = ・・・の異常光(位相速度がaに依存)を示す。異常光については、「教科書を参考に」と、式を板書するのを省略。二軸性の場合は、二つのモードがともに異常光、つまり位相速度がaに依存とだけ説明。

結晶の晶系と光学的異方性の関係を述べる。まず、立法晶系の説明をし、その場合に対称性かから等方性(nx = ny = nz)となることと説明。次に、正方晶系、三方晶系、六方晶系の説明をし、長さの異なる軸の方向だけ異なる主屈折率となるから、一軸性になると説明。ここで、教科書に従って格子パラメータa、b、c、α、β、γの話を挟む。α = β = γ = 90°だが軸の長さa、b、cが全て異なるのが斜方晶、α、β、γのうちひとつだけ 90°と異なる(傾いている)場合が単斜晶、三つとも傾いているのが三斜晶。ただし、これらの中で(格子パラメータの間に)特別な関係のあるものについては別の呼び名がついている。等方性、一軸性のもの意外は全て二軸性となる。斜方晶の場合は結晶軸が主軸になるが、それ以外は結晶軸と主軸の関係は複雑になる。

最後に偏光素子について説明をして終了。軸に沿って切り出して二つのモードに対する光線が重なるようにしたものと、斜めに切り出して異なる方向に伝搬するようにしたものに分類できる。前者が位相板、後者が偏光プリズム。位相板は移相子retarderとも呼ばれ、偏光状態の変換が行える。光の進行方向をzとし、ExとEyとの間の位相の差を移送子が変えることを、いい加減な絵を描いて説明。1/4波長板が45°偏光を円偏光に変換することを説明する際に、進相軸と遅相軸の説明も加える。進相軸、遅相軸の違いにより、円偏光の回転方向が違うことを説明。1/4波長板は、直線偏光⇔円偏光の変換を行う。次に半波板について。πの位相を加減すると三角関数(コサイン)の符号が変わることを述べ、それに基づいてθ偏光と-θ偏光の間の変換ができることをまず説明。進相軸と遅相軸の違いは影響しない。同様に円偏光について、(cosφ,sin(φ±π)) = (cosφ,-sinφ)から、回転方向の変換を行えること説明。偏光プリズムについては、教科書プラスアルファのお話で済ます。直線偏光を作るための二コルプリズム、微分干渉法で使われるウォラトンプリズムやサバール板がそれ。