講義1 平成28年度第14回目

2016年6月1日。

とうとう6月。暦の上では夏。

さて、後半(目標2)の第6回目。第6回と第7回は、異方性媒質中の電磁波。結晶光学と呼ばれることもある内容。7回の講義(+試験1回)の最後の2回にこの内容をやるのは、例年と同じ。回折の後に異方性媒質中の光波の内容なのは、今使っている教科書の順に従ったから。

誘電率テンソルの場合のマクスウェル方程式の扱いは、学部学生の平均からすると、少し難易度が高い。もちろん、新しい数学は不要なので、できないことはないが、「盛り沢山」は避けるべき。つまり、消化不良になると、今までわかったいたことまで「わからない気」になってしまうことがある。

まず最初は、DE0E+Pを異方性媒質の場合に拡張する。「結晶」ではなく、異方性分子を例に出して、電場の方向によって分極Pが異なることを理解してもらう。簡単のために磁気異方性はないものとする。これは、学部学生に対する講義だからで、基本的な扱いや概念を理解することが目的だから。「エネルギー的考察から」で済ますこともあった、誘電率テンソルεijが対称テンソルであることは、テンソル計算に慣れてもらうのがいいので、やる。昨年度は少し迷ったが、今年度は演習の自分の担当のところをやって、「慣れが足りない」と感じたので、迷いはない。誘電率テンソルが対称テンソルであることを「電場のエネルギーがスカラーであることから導出する」といったのは、混乱を生じ兼ねない言い方であったことを反省。その通りであっても、それを前面に出す形にせずに、「エネルギー保存則の式から」と言うのが、テンソルの計算に慣れてもらうという趣旨に合っている。次いで、対称テンソルは対角化でき、対称テンソルが対角化される座標系を主軸系というところに進む。行列の対角化は、さすがに省略。行列の対角化が座標系の回転になっていることも同様。主誘電率、主屈折率、・・・も紹介。

フレネルの法線方程式に入る前に、トリプレットの語を紹介。x軸方向の単位ベクトルをi、y方向の単位ベクトルをj、z方向の単位ベクトルをkとすると、k=i×jの関係が成り立っている。このような関係にあるベクトルijkに対し、トリプレットという語を使う。等方媒質中の電磁波については、TEM波の条件が成り立つことを強調した。電磁波の伝搬方向の単位ベクトルaと電場ベクトルEと磁場ベクトルHの間には、方向については同じ関係が成り立っている(H = Z (a×E);本年度から、媒質の特性インピーダンスZ = (μ/ε)1/2を積極的に前面に出している)。さて、異方性媒質の場合はこれがどのように変わるのか。マクスウェル方程式から出発し、それを示す。(a,E,H)の間に成り立っていた直交する関係は、(a,D,H)の間の関係に変わる。もはやDEは平行でないから、(a,E,H)の方向の間のトリプレットの関係は成り立たない。ポインティングベクトルSを計算すると、Saと平行ではないことがわかるが、これは教科書を参考にしてもらうことにする。エネルギーの伝搬方向s=S/|S|が異なることを強調し、aは波面(等位相面)の移動方向であるという説明を行う。位相速度とエネルギー伝搬速度の二種類の速度が存在することも。ただし、盛り沢山なので、教科書に沿った説明のみ。D=(n2/μc2)Eの図を使っての説明は丁寧に行った。

昨年度と同様、その後フレネルの法線方程式まで進み、そまでで終える。昨年度は、屈折率楕円体の話をする積りでできなかったが、本年度は最初から「フレネルの法線方程式に等価な図形的な方法に屈折率楕円体を用いるものがありますが、これについては次回に行います」のような。また、フレネルの法線方程式は少し難しいと感じているかもしれないが、屈折率楕円体に関しては基礎知識。試験でもよくその基礎知識を問うています。ともあらかじめ言ってしまう。疲れてしまって、また時間もなかったので、ポイントをの述べる形になってしまた。学生から要求されたら、次回にやろう。