講義1 平成28年度第13回目

2016年5月27日。

後半(目標2)の5回目。具体的な開口についての例の2回目。透過率分布が三角関数の空間分布を持っている場合を最初にやり、次に多重スリット(N重スリット)について触れる。

イントロとして、既に観測点を含む領域の表面での振幅がわかれば観測点での振幅を表面積分として求める公式が回折積分だから、開口関数は開口面上での振幅であった。従って、開口に入射する光の振幅を1とする単位系では、開口関数は開口の透過率分布となる、と言うことはやっている。ここでは、更に一般化できて、半透明物質の厚みが開口上の位置によって異なっているような場合を透明物質の場合に拡張できる。この場合、位置(x,y)での厚みをd(x,y)ならば、開口を通過した後に振幅はexp[-nkd(x,y)]のようになる。更に透過率を同時に考えることができるので、開口関数は一般には複素数となり得る。本講義では、開口関数が0と1の間の実数の場合を扱う。かつて、複素数の開口関数をやったこともあったが、困難さが大きかった。

正弦関数で開口関数が表現される場合の計算を行うため、まず1のフーリエ変換ディラックデルタ関数であることを述べる。もちろん、デルタ関数の説明は前置。正弦関数を複素数の指数関数で表現してから、1のフーリエ変換デルタ関数となる「公式」を使って、振幅を計算。デルタ関数の前に虚数単位が掛かったものが現れ、「訳わからんでしょう」と問い掛けながら、振幅がゼロでないのは0次光と±1次光であることを表すグラフを書く。グラフを書いてから、光強度分布を考えましょう。振幅の二乗、つまり振幅とその複素共役の積なので・・・と計算して、同じデルタ関数の二乗とクロスターム出てくることを述べ、クロスタームはδ(x-a)f(x) をδ(x-a)f(a)に置き換えられる性質を用いるとゼロになると言及。つまり、「このグラフの縦軸は光強度で、0次光と±1次光のみが現れている」と。

レポートの問題を配布してから、休憩を挟んで、N重スリット。まずは、二重スリットのときの計算を途中から再現し、スリットの位置がずれると単スリットの場合の振幅u1(x)に位相因子が掛かることを説明。N重スリットの位置がランダムな場合は、N個のスリットについて掛かる因子の位相はランダムなので、光強度においてクロスタームは打ち消しあってゼロになる。自身の大きさの二乗がN個現れ、光強度はN倍となる。スリットが規則的に配列していると、ゼロ次光のピーク強度はN2倍になることがポイントと述べる。Σn=0N-1an = (1-aN)/(1-a)を使って計算できることだけ説明して終わり。