ハゲタカ出版社(1)

2015年12月12日。

www.gizmodo.jp

上の記事にてんやわんやになっている大学教員が多くいるのではないだろうか?

ハゲタカ出版社(predatory publishers)と言って、まともな査読(審査)をせずに、掲載料をふんだくるためにオープンアクセス誌に掲載論文を募る出版社にリストが出る。そこにリストアップされた出版社の雑誌に論文を掲載したことのある教員にとっては、看過できない問題である。これについて、何回かに分けて記述しようと思う。

まず上の記事の内容について。日本の大学の行き過ぎた業績主義の結果であるのは、全くその通り。強く同意するどころか、私が常々行なっている「短絡的成果主義批判」「行き過ぎた成果主義批判」に他ならないとも言える。しかし、少し待って欲しい。ハゲタカ出版社が刊行している論文誌には論文を掲載しない、というのも行き過ぎた成果主義ですよ。上の記事中に、「なぜそんな所に寄稿するのかと言うと、・・・」と、色々なケースが紹介してある。単に業績(業績数)が欲しいというのはもってのほかであるのは言うまでもない。しかし、萌芽段階の研究成果で、競争原理を不適当に適用すると潰れてしまうものを、「そのようなものを何とか『形』に残して置くために、オープンアクセス誌に出しておこう」というのは、戦略としてやっていいと思う。つまり、プライオリティーの確保という明確な目的のためなんです。それを、ハゲタカ出版社から論文を出すためには、「新領域」の芽なんで潰してしまえ、というのは行き過ぎた成果主義に思えます。

しかし、だからといって、本当に悪徳なハゲタカ出版社は、淘汰されるべきでしょう。そうすると、「萌芽段階の結果をオープンアクセス誌に出したいが、悪徳ハゲタカ出版社を助長させることは避けたい。どこに投稿するのが適当か?」という相談を大学(研究機関)が受ける体制があるべきだ、ということかもしれない。このリストは、潜在的(potential)、可能性のある(possible)・・・なリストです。つまり、リストされた出版社であることを判断基準にすべきではなく、実際の編集局の方針と掲載論文の質から判断しなければならないと思います。出版社がpotentially predatoryであっても、editorsによってpredatoryでない誌になり得るのではないか。これに関しては、日を改めて記述します。