講義2 平成27年度12回目

2015年7月17日。

演習の後に、ギブスの相律、相図、クラペイロンの式。ただし、今回は誰も演習をやってくれなかった。

相平衡の条件自体は既にやっている。スタンダードに独立な示強変数の数を数える。最初に行った「相平衡を論じる場合は示強変数が本質だ」という説明の、単成分系の気液共存の図の例を引き合いに、c=1の場合のf = c-p+2のp=1,2,3の場合の例を挙げる。

相図は、まずは単成分系の相図から始める。T-P図は軽く流して、T-ρ図をやる。その後に二成分系へ。まずは全率型の相図(気液だけでなく固液もやってしまう)。相図上の共存領域両端が共存する二相の組成(横軸が組成の場合)であることは強調。てこの関係とかてこの原理と言われる、共存する相の物質量の割合の関係もやる。次に共沸と共晶(共融)。次に液液相分離と固溶体の相分離。時間がないので、侵入型あるいは格子間原子型と言われる合金のタイプと置換型と言われる合金のタイプがあることは、教科書を勉強しておいて下さい、として次へ進む。

クラペイロンの式は、オーソドックスに二相間の化学ポテンシャルが等しい条件を変形する。二相共存線の傾きを表す一般的なものがクラペイロンの式。更に凝集相と気相の共存の場合に、気体を理想気体で近似し、かつ凝集相の体積を(気体に比べて)無視するという「クラペイロン近似」を行ったものがクラペイロン・クラウジウスの式。これを区別しない教科書もある。材料創成の観点からは、クラペイロンの式(クラペイロン近似を用いない)を理解しておいて欲しい。尚、私はギブス・デュエム関係式を出発点にするようにしている。

クラペイロンの式のところに最後の10分くらいしか掛けられなかった。従って、付随する事項は述べられなかった。シミュレーションで相境界線(共存線)を求めるのに、ギブス・デュエム積分法なるものが使われることがある。クラペイロンの式は、TP図における共存線の傾きを表す式であるが、他の平面でも同様なことができる。

時間が足りなくなったのは、「何を今更」ということを演習が終わって講義を始める最初に述べたから。演習を黒板でやらせようと、学生の席の中を回っていて、「レポート用紙にメモをとるような形のノートテイキング」が非常に多いことに気がついた。統計をとっていないのでわからないけれども、と前置きして「自分のレベルに合わない形のノートの取り方をしているものが多くいるんではないか」とコメント。大学入門講座で「ルーズリーフは後で整理して順番を変えたり、補足を挿入したりできることが長所だ」ってならっていませんか。つまり、それをできるレベルの人がルーズリーフを使うと有効なんですが、それに及ばないレベルの者にとっては、混乱するだけです。教科書に対するメモの形のノートも、そういうレベルのひとにしか有効でありません。半数がそのようなレベルだとは思えません。「自分だけの虎の巻を作って下さい」が言えたのは良かった。