講義2 平成27年度11回目

2015年7月15日。

ちょっと疲れ気味。しかし、先週のようなことはない。

どうもμi = μi* + RT ln xiなどにおいて、省略された引数が明示してないことが、化学平衡の法則を分圧を用いて書き換えたり、モル濃度を用いて書き換えたりするときのバリアになっているような気がする。従って、最初にそれを明記した。μi(T,P,xi) = μi(T,P,xi) = μi*(T,P) + RT ln xiおよびμi(T,pi) [=μi(T,P,xi)] = μi(T,Pプリムソル) + RT ln pi/Pプリムソル(ただし、分圧pi=xiP)。

まず、前置き。教科書が分圧を用いた化学平衡の法則で進めているので、本日はそれに基づいて話を進めます。変換するだけなので、モル濃度を用いた場合(モル分率を用いた場合だけでなく)と本質的に同じです。

最初にΔG = G(生成系) - G(反応系)の計算が生成ギブスエネルギーΔGfを用いて、ΔG = ΔGf(生成系) - ΔGf(反応系)と計算できることの説明を行なう。もちろん、「標準」を前置し、プリムソルのスーパースクリプトを付けて(以下、プリムソルに関する事項は省略)。

次に、lnK = -ΔG/RTなのでΔG<0ならば反応は右へ(生成系の方に)偏り、ΔG>0ならば反応は左へ(反応系の方に)偏るが、いずれの場合にも反応が完全に進み切ることはない、という説明。数式としてはK = exp(-ΔG/RT)なのでΠi∈生成系 pi|νi| / Πj∈反応系 pj|νj| = Kがゼロや無限大にはならない。物理としては、反応ギブスエネルギーΔGはプラス/マイナス無限大にはならないから、混合のエントロピーの寄与が残った方が事由エネルギー的には有利である。ΔGは純物質で計算していることに注意。

次に平衡定数の温度依存性。まず、ギブス・ヘルムホルツの式を説明。それを用いてファントホッフの圧平衡式を導出する。定積で反応を起こさせた時も同様にできますよ。ルシャトリエの原理による解釈を強調。

最後に、ヒューガシティーの説明。今まで、希薄気体を前提として、理想気体の式を使って来ました。さて、希薄気体の条件が成り立たなくなったら、どうなるでしょう。もはやμi(T,pi) = μi(T,P) + RT ln pi/Pはなりえませんね。今は、計算機が発達しているから、化学ポテンシャルに対する実験結果から、μi(T,pi)のフィッテング式を見つけて同じ議論をすれば良いわけです。しかし、理想気体の式に対応させてμi(T,pi) = μi(T,P) + RT ln fi(pi)/Pとすれば、形式的に今までの式が使えることになります。もちろんf(p)は得体の知れないものです。f(p)のことをヒューガシティー、逸散性(能)などと呼びます。得体が知れないのですが、「μを使って平衡の議論をするところを、f ~ exp(μ/RT)を使って議論する」という流儀とみなすこともできます。Kの温度依存性を議論するのにlnKを調べましたね。それと同じですね。Kについては、対数微分というテクニックを使ったことになります。それに比べると、μの代わりにf ~ exp(μ/RT)を使うのは、「けったい」ですね。「けったい」と思うのは、物理のバックグラウンドの人の感覚です。私も物理のバックグラウンドですので、「けったい」に思いました。ヒューガシティを使った議論に対して「けったい」に思う空気があったら、「あ、この人は物理のバックグラウンドだな」と思って会話を進めるといいでしょうね。そういうのがない人に対しては化学(物理化学)のバックグラウンドの人だと思って進めるのがいいでしょう。物理の側から言えば、化学の人ってそこまで理想気体信奉が強いんだな、ということになります。会話がうまく出来るといいですね。