講義2 平成27年度2回目

2015年5月12日。

気体分子運動論、van der Wallsの状態方程式、気体の液化(気液臨界点)をシラバス通り終了。ただし、最後の気液臨界点については、後ろの方の節に載っている相図を紹介しようとして、そのページを見つけられないという、不格好をやってしまった。仕方なく、一般の(クラペイロンの係数が正の)相図を、温度を縦軸に取って板書した。温度を横軸に取った方がいいのは、固液共存線の傾きが正の場合と負の場合との説明が、共存線が左上に来た方がやりやすいから。水の相図が載っているのは、「相変化に伴う熱量」の節の最初。

気体分子運動論に先立って、22.4l・atm/K/molの誤り([講義2 平成27年度2回目])を正す説明の板書をサイドの黒板にしておいた。気体を運動している質点の集合としてモデル化する根拠として、「希薄」という条件があることを強調できてよかったのではないか。

「気体分子運動論は、熱力学の範疇でない」という教科書の記述をそのまま紹介。補足は、一切原子分子の描像を使わないという「公理的熱力学」と分野があり、理論物理学などでは重要な分野でしょうが、材料の物性を予測したり解析したりするのが目的だから、理解の助けのために原子分子の描像の助けを借りても一向にかまわない、とのこと。

気体分子運動論の功は、壁への粒子の衝突が圧力の起源であるという描像を描くこと。これにより、分子間引力があれば、圧力が減ることは直ぐに理解できる。図を上手く描けば、1粒子について、回りの粒子からの引力で壁に当たる速度が減速される度合いが粒子数密度に比例することも直ぐに分かる。圧力に寄与する粒子自体も密度に比例するということと併せて、van der Waalsの状態方程式の-a(n/V)2は出てくる。分子の大きさの効果nbは自明に近いだろう。

気液臨界点は、今までは(昨年度は忘れた)van der Wallsの状態方程式をVm=V/nの三次方程式とみなしたときに、それが三重解を持つ条件ということだけで済ましてきた。しかし、状態方程式をP=P(Vm,T)の形に変形してから、∂P/∂Vm=∂2P/∂Vm2=0で求めた方が一般的である。その計算は行わなかったが、説明だけはした。教科書に合わせて、「気体の液化」というタイトルで講じたが、「気液臨界点」「超臨界」という言葉を声を大きくして言った。

途中、演習は昨年と同じvan der Wallsの状態方程式のビリアル展開にしようと思う。もし、熱力学第一法則の章で「この問題が興味深いので是非、というのがあったら、言って下さい」と。