講義1 平成27年度14回目

2015年5月29日。

今回と次回で異方性媒質中の電磁波の話をする。フレネルの公式のところのレポートを採点をして(まだ終わっていない)、以前にも増して「この二回のうちの初回は、『再びマクスウェル方程式に基づいた電磁波の扱い』に触れてもらえばいい」という気持ちが強くなりました。「結晶光学」は、かつてはBorn and WolfのPrincipes of Opticsを使って、博士後期の学生に対して英語で講じていたものでした。

まずは、DEの異方性媒質の場合への拡張。次にaDHsEHがそれぞれトリプレットを形成する話(a=k/|k|は波面法線方向の単位ベクトル、s=S/|S|はポインティングベクトル方向の単位ベクトル; -Hとするのが正確かもしれません)。そして、フレネルの法線方程式まで終る。簡単な結晶学の講義をする積りだったが、時間切れ。これは次回。テンソル計算の例でもあるので、誘電率テンソルが対象テンソルであることを示す計算は省略せずにやった(かつては、省略したこともありました)。真ん中の事項については、sEHおよびDEの間の角度についての計算は省略。フレネルの法線方程式については、途中少し式の省略をした。学部生としては、主速度vx,vy,vzがわかっている物質に対して、a=k/|k|を与えるとそれに応じて二つの伝搬速度が決定されるということがわかればいい。講義の最後に、屈折率楕円体は毎回テストに出していると、次回の内容を予告。参考書も紹介し、ついでに「私もセミナーとか通信講座でテキストを作成しているが、誤字などが多くて恥ずかしいので」と。

冒頭の事項について詳述。フレネルの公式がナノフォトニクスの役に立つのかという問い掛けをしたくなってしまった訳です。プラズモニクスやフォトニック結晶の教科書(不正確です が)には、p偏光については磁場の振幅の比の計算結果を示して終わっているものもあります。光の振幅は、光電場の振幅でもって表すように現在は統一されています。それが直感と結びつくので、私もそれがいいと思います。しかし、フォトニック結晶中の電磁波を扱うに際しては、磁場を独立変数(従って、電場は従属変数)として扱った方が都合が良い訳です。E-H対応かE-B対応かの問題を避けられるので、初学者には電場を独立変数にした扱いの方が講義はし易いという面もあります。しかし、これは単に教える側の都合の問題でしょう。もちろんE-B対応が本質的であることは言うまでもありません。