講義1(後期開講分) 平成29年度10回目

2017年11月6日。

もう10回目なんだ。目標2の3回目で、フラウンホーファー回折の式を出すのがメイン。前回の講義のミスの説明が、実際の回折の光学系に合わせて座標系を定義し直すことのイントロにもなっている。また、こうやって積分の前の係数を精密化したが、実際の問題では、それをCなどと置いてしまって、問題としない。時間の最初に来週に行うフーリエ積分の演習問題を配布。

座標系を定義しな直したら、あとは計算するだけでフラウンホーファー回折の式は出てくる。開口の中心をO(0,0,0)としている。開口面上を走る積分変数について展開して、1次までとるだけ。ポイントは、フラウンホーファー条件だろう。1次までとる扱いでは、近軸条件だけで十分。2次以降が無視できるためには、開口の大きさをDとして、D2/λR<<1の条件が必要・・・rを開口面上の点と観測点の距離とし、Rを開口の中心と観測点の距離としてexp(ikr)のkrを積分変数のべきに展開して、積分変数の2次の項のリーディングタームを見れば、この条件は出てくるが、実は、少し不正確でないかと思う。これを書き換えればR>>D2/λというフラウンホーファー条件が出てくる。遠視やR>>λ、近軸D<<Rに比べ、この条件は非常に微妙で、光学実験台上に光学系を組む場合は成り立つが、コンパクトな装置では成り立たないような感じになる。

ここまでは、光源と開口面の距離についても一般的な式を書いてきた。それでは、物理が見えにくいので(という理由付けをし)、平行光が回折される場合に式を変形することに。近軸の平行光だから、光源の座標Q(x0,y0,z0)のx0とy0がゼロだというのが直接的なもの。実質は、平行光だからQと開口の中心Oの距離R0が無限大になるという見方も重要。その後、更に1次元版に単純化し、図を描いて、expの方のx/Rが、開口中心から観測点P(x,y,z)を見たときの角度をθとして、tanθに等しいことを言う。Rが2倍になって、xも2倍になったら、θは同じ・・・という話も。

さて、フーリエ変換って言ってますが、「何のフーリエ変換?」となぞ賭けをし、開口関数を導入。開口関数の例としては、教科書にある矩形開口のところの式を出した。

最後にフラウンホーファー条件に関して、フーリエ変換レンズの話をして終り。

 

導入教育/創造科目 平成29年度1ラウンド目第3回

2017年11月1日。

共同研究のために先週の金曜は他の先生の課題をやってもらい、本日が平成29年度の1ラウンド目第3回。光重合によるゲル化の実験。月曜に予備実験を行い、臨んだわけだが、機器・機材が不足しているのはどうしようもない。昨年度の反省があるから、それでも5分の余裕を持って終了することができた。8班のうちの3班は薬品の配合比を変えて2回目の重合を行った。

昨年度は、水を多めの例を配合量の例の一覧の最初に載せていたためか、片栗のような性状のものが大半であったが、本年度はそれを削除したのでゴム様のものがほとんどで、固めのグミ状のものがちらほら。もちろん、ゲル化に失敗したものも幾つか。

今回余裕を持って行えたのは、TAのお陰でしょう。昨年度はTAなしでやり、疲弊し切っていましたので。指示していたビニール袋の持参をしていない班が4版あって、少し困った。大きい袋を持ってきていた班の袋を切って、それを縛って何とか。重合が完了していないモノマーが残っているゲルを素手で触らせる訳には行かないので。

第2ラウンド(約160人を二つのグループに分けて実施している)は、12月。

講義1(後期開講分) 平成29年度9回目

2017年10月31日。

夕方に講義。後半(目標2)の第2回目。フレネル・キルヒホッフの積分定理にキルヒホッフ近似を行う。その後、更に近軸近似を行い、傾斜因子まで。

最後の傾斜因子のあたりのところでミスをしてしまった。そこまでは、例年通り。また、前期と同じミスをしないように心掛けた(ひょとすると∂r0/∂z = (z-z0)/r0 = cos(ν,r0)と正しいのを書いてから、誤りの(z0-z)/r0に修正してしまったかも --- ∂r/∂z = z/r = cos(ν,r)は誤りようがないし、電磁気学でやっていること)。

キルヒホッフ近似において、開口部に光源Qを発した球面波が到達するのは、近似というよりも理想化なので問題はない。開口面において、開口のない部分での振幅とそのほう線方向の方向微分をゼロとするのは、遠視野条件においては良い近似といってよいであろう。問題は、観測点より十分遠方で振幅が1/rのようにゼロになるからと、フレネル・キルヒホッフの積分定理において、表面のその部分にわたる積分自体をゼロとしてしまうこと。1/rを積分すると、対数発散する。このことは毎回説明している。従って、数学的には破綻した近似である。これに対し、実際に測定できるのは振幅ではなく、その二乗に比例する強度である、ということを指摘し、「そのような事情で、この近似を行った式に基づいて実験結果を正しく説明できている」とそれ以上は深入りしない。

遠視野の条件はr>>λとなる。従って、k=2π/λ>>1/rとなり、∂[exp(ikr)/r]/∂rの計算で出て来るik-1/rは、ikで近似できる。光源についても遠視野条件が成り立つとすると、∂[exp(ikr0)/r0]/∂rの計算で出て来るik-1/r0も同様にikで近似できる。遠視野という術語を出すようにしている。そのようにすると、被積分関数はきれいにexp[ik(r+r0)]/rr0とcos(ν,r)-cos(ν,r0)の積になる。

傾斜因子のところへ行く前に、開口の中心Xcを定義し、光源Qおよび観測点PとXcとの距離をR0およびRと定義し、exp[ik(r+r0)]/rr0のrr0をRR0で近似し、積分の外に出す(この段階でcos(ν,r)-cos(ν,r0)もcos(ν,R)-cos(ν,R0)で近似して積分の外に出す方がいいかも)。その後、近軸近似の説明を行う。つまり、入射光および回折光が光軸にほぼ沿っていれば、積分変数が動いて(開口上の点Xが開口部分を動いて)もrとr0がRおよびR0と大きく異ならない。ミスは、回折光も入射光も近軸光の場合に(ν,r)=δ~0および(ν,r0)=π-δとなるところ、それが逆になってしまったこと(実際には回折光はXからPへ向うのでこのミスが置きた訳だが、その実情に合わせると光軸の向きも開口面のP向きの法線方向となる)。次に、入射光が完全に光軸に沿っている場合を扱い、傾斜因子K(δ)=(1+cosδ)/2を導出してその意味の説明をし、「ホイヘンスの原理の欠点が克服できた」として終り。もちろん、ミスは引きずっりつつで(この段階で「あれ?」だたかも) 、cos(ν,r)-cos(ν,r0)でなく、cos(ν,r0)-cos(ν,r)でしたか?・・・として、誤魔化してしまって・・・。

講義終了後、この点に関して疑問解決を試みた学生がいて、大変感心した。また、その真摯な姿勢に大感謝である。

講義1(後期開講分) 平成29年度8回目

2017年10月30日。

本日の朝イチは、講義1の8回目で目標2。目標1の試験は来週の火曜。目標2は回折をやった後に複屈折の話を少し。

初回は、回折とは何かというイントロをレーザー光の回折のデモンストレーションを交えて行った後、グリーンの定理から出発し、ヘルムホルツ・キルヒホッフの積分定理まで。イントロダクションとしては、ホイヘンスの原理についても話す。回折理論がホイヘンスの原理の欠点を解決するものであることも述べる。スカラー波近似を行った扱いをするので、波動一般の話しである注も。数学的には、波動方程式の境界値問題を解くという問題設定も。これには、開口面上での振幅が与えられたとき、観測面上での振幅を求める問題設定の図も。

グリーンの定理はいつも通り。その後、時間的には定常振動しているとして、複素振幅U(x,y,z;t) = u(x,y,z) exp(iωt)が波動方程式に従うときに、複素振幅の空間依存部分u(x,y,z)がヘルムホルツ方程式2u+k2u=0に従うことを示す。問題を「開口面で開口の形によって定められる振幅uが与えられたとき、観測面における振幅uを求める」と言い換える。その後はいつも通りに、観測点P(0,0,0)が表面Sで囲まれる領域内にあるとして問題を設定し直し、さらにグリーンの定理を適用する表面として「外側の表面Sと点Pを中心とする半径Rの球殻の内面S'」とし、領域として表面Sで囲まれる領域から球殻内部を除いたものとする。ポイントは、表面S'の法線ベクトルは、中心P方向を向くこと。つまり、表面S'上での方向微分は、rで編微分してから負号を付けたものになる。グリーンの定理に出て来るもう一つの関数v(x,y,z)は、点Pを中心とする球面波v=exp(ikr)/rに選んであるので、表面S'にわたる積分は計算できてしまう。一箇所、方向微分を-∂/∂rとするところを、負号を落としてしまっていて、途中で修正した(もちろん、R→0とすれば落ちる項ではある)。今回は、極座標を用いた表現を早めに出したので、スムースにできた。R→0として、表面S'にわたる積分が4πu(P(0,0,0))になることから、ヘルムホルツ・キルヒホッフの積分定理に至って終り。

計算機実習 平成29年度その1の第4回目

2017年10月28日。

だいぶ遅れて10/25の午後の計算機実習の記録。

例年通り、有限温度のシミュレーションを完成させないと、レポート課題がこなせないことを説明。課題1はエネルギーが下がる方向に系の状態を発展させるシミュレーションで、それを熱揺らぎの効果で上がる方向の変化も起きるように書き換えるのが課題2。メトロポリス法を採用している。レポート課題は、強磁性的な二次元イジング模型の相転移点を見積もること。

既に課題2が前に時間に終了している学生が1名おり、異なる系列の乱数を用いたシミュレーションを複数行って、エネルギーEと逆温度K=J/kBTの関係を複数得て、平均を計算する「実験」の設計に進んでいる。何とこの学生、この時間の終わりには、相転移点でエネルギーの揺らぎ<(E-<E>)2>が相転移点で発散することを示唆するグラフまで出した。

課題1が完成して、ほんの少し後に課題2を完成させた学生がちらほら。課題1から課題2への変更について、理解した上で「単純な条件変更なので、課題1ができれば直ぐに課題2もできるのは当然です」と話しながら、少し困っている学生が1名。その学生も単純なミスに気付いて、時間の終り近くには完成。だいぶ安心。

講義1(後期開講分) 平成29年度7回目

2017年10月24日。

夕方に講義1(後期開講分) 平成29年度7回目。講義の最後の方は、声が出ない。あたらめて来年度は、この時間のコマに講義を入れるのは断ろうと思った。

昨日の最後に「減衰波の解に物理的意味がある」と、入射角が全反射の臨界角よりも大きなときに透過波がエバネッセント波になるのが、単なる数式をいじくって出てくるだけのものではないことを言いうのに、振幅透過率が透過波の振幅と入射波の振幅の比であることを言ったが、全くレリバンスがないことだったことから始める。もちろん、それに従って、位相が加わる訳だが、減衰波の性質には関係がない。ここで、rS = ES(r)/ES(i), tS = ES(t)/ES(i)では、ES(j)(j=i,r,t)はy成分しか持たないので、ES(j)はそれと同一視するれば良いことはすぐわかる。しかし、rP = EP(r)/EP(i), tP = EP(t)/EP(i)のEP(j)については、EP(j)がx成分とz成分をもつので、同様には行かない。EP(j)は成分でなくて振幅なので、[EP(j)]2がそれらの成分の二乗の和と等しいが、符号が決まらない。「P偏光については、今度はHP(j)がy成分のみを持つから、代わりにこれを使って計算をして見ましょう」と言うのが、レポートの課題です。と説明を行う。

次いで、教科書のミスを板書する。その説明が、エバネッセント波の性質の説明になっている。少し補足をし、エバネッセント波の染み出し距離が波長と同じオーダーであることも説明する。その後、波数ベクトルのz成分が純虚数となる計算を行う。

その次に全反射のときの反射波についての説明に移る。フレネルの公式の振幅反射係数rP(S)の分子と分母が互いに共役な複素数になっていることを説明し、その大きさが1であることを説明。反射時に位相がシフトすることを述べる。P偏光とS偏光でシフトの大きさが異なることが興味深いことに繋がる、と次の項目へのイントロとする。単一の成分だけを考えてる場合は、exp[i(ωt-kz+φ0)]の初期位相φ0を消すような座標の取り方をすることができた。成分によって初期位相φ0が異なる場合は、それはできない。

最後の偏光(状態の分類)については時間が不十分であった。まず、偏光状態とは成分の間の関係であって、P偏光成分のみを扱うとか、S偏光成分のみを扱うというものではない、と説明。次に、多くの教科書では、複素振幅ではなく、実在波(コサイン)を使って議論してあることを述べ、教科書に従わずに、「かつて私がセミナーを行ったときのテキストに従って説明を行う」と。まず、電場ベクトルの先端の軌跡が一般には楕円を描くことを説明。ウォーミングアップとして、x方向の直線偏光になる場合とy方向の直線偏光になる場合の説明をする。次いで、一般の直線偏光。その次に円偏光。最後に円偏光の回転方向の説明をして終り(だが、ここで昔のセミナーのテキストミスプリントがあることに気付いて、板書を修正・・・とっさに修正できるくらいに頭は回っているが、冒頭に書いたように声が出ない)。理解に困難がある学生がいるようだったので、(cosφ,sinφ)と(cosφ,-sinφ)がφ=ωt-φ0xの増加に伴い、単位円上をどちら方向へ回転するかを考えるポイントを述べた。もちろんΔφ0(=φ0y0x)=π/2+mπ(m:整数)のときにcos(φ+Δφ)=±sinφも説明して。

講義1(後期開講分) 平成29年度6回目

2017年10月23日。

本日は、朝イチに講義1。それに次いで午前の後半は大学院の授業。

本日の講義1は、予定通りプレネルの公式の数値例(グラフ)から始める。グラフでブルースター角と全反射の臨界角の説明を行う。その後にエネルギー反射率とエネルギー透過率。ブルースター角の説明を再度(数式を使って)行った後、全反射についてで終り。全反射については、あらかじめ「時間がなければ、全反射のときの透過波の振舞いだけで、反射波については次回に行う」と断る。

フレネルの公式のグラフと説明の後は、まず光強度と光波の振幅の関係を。強度Iが振幅Eの二乗に比例することは分かっていることなので、I0∝nE2と屈折率nに比例することがポイントであることを述べる。ポインティングベクトルを用いた計算で済ました。断面を通過するエネルギーを問題にする場合、断面の法線ベクトルnと波面法線ベクトル(出伝搬方向の単位ベクトル)aが角θをなす場合、Iθ=I0cosθとなることも計算で。エネルギー反射率の計算を少し丁寧目にやって、ここではnの効果もcosθの効果も聞いてこないことを言う。その後、それが効いてくるエネルギー透過率の説明を。斜入射の効果で、境界面においては波束が垂直断面よりも広がっていて、単位面積を通過するエネルギー密度が小さくなるという幾何学的な説明も加える。

ブルスター角については、フレネルの公式の振幅反射率rpで、分母=0とした式を解いても得られことをまず述べる。その後、通常の教科書はでn1とn2をスネルの法則を用いて消去したrp = tan(θit)/tan(θit)で分母→∞となる入射角の条件(つまり、θit=π/2)かブルースター角を媒質の屈折率で表した式を得ていると説明し、実際にそれを行う。勘違いをして、全反射の臨界角でn1とn2が逆になっている式があるのを説明する図を描いてしまい、速やかに消した後に同じ図を描いて説明を始めた。全反射の場合は、屈折率の大きい法から光波が入射するので、n1<n2で媒質2側から光が入射する図が書かれる。n1<n2の場合に媒質1側から入射するケースが教科書のもの(以前にそれを間違えたことが頭に残っていて、フライングをしてしまった)。

全反射については、ブルースター角を屈折率で表した式を導きく過程で全反射の条件θt=π/2を用いると全反射の臨界角を媒質の屈折率で表した式がえら得るところは問題なし。問題は、時間がないと言って、全反射のときの透過波の振舞いののみを論ずるところで、フレネルの公式の振幅(反射率と)透過率が電場の振幅の比であることを板書したこと。特に今回は時間がなかったので、「これまでは振動解を探すのが目的だった(従って、変数分離定数を-ω2や-k2として微分方程式を解いた)が、マクスウェル法的式の解としては、減衰解も物理的に意味がある」いうイントロに限定したので、イレリバントでさえあった。全反射の場合に透過波がエバネッセント波になることの説明の場合も、フレネル公式における振幅透過率が透過波と入射波の振幅の比であることは無用なので、次回からはやらないことにしよう。

次回にその続きを行うこと(反射波については繰り返さなかった)は言ったが、偏光に関することを行うのは予告しそびれた。レポート課題を出題することは言った。