講義2 平成29年度 第12回目

2017年7月19日。

第12回目は、後半の4回目。自由エネルギーを導入し、化学ポテンシャルを定義し、それらを化学平衡に適用する(質量作用の法則)節が終り、後は相平衡にそれを適用する節。

大きなミスを犯していることに気付く。予定では、演習を最初にやることになっている。講義のはじめには、相律をやって、二成分系の相図をやって、クラペイロン・クラウジウスの式をやってから、今日の最後の時間に演習をやりましょう、と言った。しかし、5分で演習はできないので(やっても効果はないので)、次の時間の最初に15分位掛けてやりましょう、とした。

相律は、c成分系のp相平衡で「状態を指定するために必要な変数」のうちで独立なものを勘定するだけのもの。しかし、熱力学的自由度を独立な、示強変数の数と言うのは少し不正確。組成(モル分率)は、示量変数のモル量(1モル辺りの量)。つまり、モル体積ならば、示量変数である体積を総モルで割ったもの。示量変数であるモル数を総モル数で割ったものがモル分率。単位体積辺りの量である密度も同じ性質を持つ。示強性変数という言い方は、示強変数と同義なものとして使われる。示強的変数としておいた。単成分系c=1の場合について、相律f=2-p+cの適用をp=1,2,3について説明して次へ。

二成分系の相図のポイントは、二相領域の相図の読み方、てこの原理とかてこの法則などと呼ばれるものであろう。気液平衡でも固液平衡でも同じ。全率型で説明し、共沸型はさらっと流す。更には、液液相分離についても基本的には同じ。一般的な上部臨界溶融温度の形のもので説明し、下部臨界臨界の型のものも存在することに言及。共晶相図についも、まず二相領域について説明。固相-固相領域の場合も同じ読み方ができることを説明するが、直ぐ後に液相-固相領域から固相-固相領域に入った場合に「共晶組織」ができることを示唆する説明も行う。置換型合金と格子間原子型合金の説明をして次へ。

クラペイロン・クラウジウスの式には、共存線の傾きを調べましょう、として入る。単成分系に限定し、T-P図を描く。共存上の二点(T,P)と(T+dT,P+dP)での相平衡の条件として、二相の化学ポテンシャルが等しい式を書く。(T+dT,P+dP)で化学ポテンシャルが等しい式をdTとdPが小さいとして展開し、ギブス・デュエム関係式dμ=-SmdT+VmdPから得られるμの偏微分に対する関係式を用い、クラペイロンの式を導出。高温相βが希薄気体で低温相αが凝集相である場合に、ΔVm=Vmβ-VmαをVmβで近似し、さらにβ相を理想気体だと近似する「クラペイロン近似」を行うとクラペイロン・クラウジウスの式になることを説明。実験的にクラペイロンが発見していたものを、クラウジウスが理論的に導出したということにも言及。

博士前期課程講義 平成29年度 14回目

2017年7月18日。

自己アフィンフラクタル。まず、ブラウン曲線から。1次元のランダムウォークを時間を横軸に、位置を縦軸にプロットしたものだから、新しいものではない。ハースト指数Hを導入するが、これもランラダムウォークについて<R2(t)>∝tからH=1/2は自明。H≠1/2のブラウン曲線である分数ブラン曲線については、レビーフライトで<R2(t)>がtの1でないべき乗に比例することをやっているので、「済」として説明。その後、自己アフィン指数を定義。

イーデンモデルの成長界面がブラウン曲線と同じ自己アフィン指数であることを説明。証明はなし。イーデンモデルは、説明していなかったので、説明。次にバリスティックモデルの成長界面。バリスティックモデルは、レピーフライトのところで説明済みだが、再度簡単に説明し、イーデンモデルの成長界面と同じで、ブラウン曲線と同じ自己アフィン指数であることを説明。これも証明はなし。バリスティックモデルについては、シミュレーションの図から一つの種から成長したクラスターが認識できる。このクラスターは、コンパクトで、クラスターに含まれる粒子数をs、クラスターの高さをh、クラスターの幅をwとすると、クラスターの面積はA(s)~h(s) w(s) ~ sととなる。hの自己アフィン指数νh=2/3とwの自己アフィン指数νw=1/3の間にνhw=1が成り立つ。シャイデッガーの河川網モデルの説明をし、これもイーデンモデルおよびバリスティックモデルと同じことを説明。証明はなし。イーデンモデルでも一つの種から成長したイーデンクラスターが定義できて、バリスティッククラスターと同じであることにも言及。

次に山岳図形へ。つまり、ブラウン曲線の横軸を二次元に拡張したもの。xz面やyz面、あるいはそれらをz軸周りで回転させた面で切断したときの断面がブラウン曲線になる。これが、分数ブラウン曲線になるように拡張する。等高線を定義、一番大きな島に対するz=0(海面)の等高線が海岸線。海岸線のフラクラル次元Dcに加え、全等高線に対するフラクタル次元Deを導入。島のサイズ分布の指数としてコルチャックの指数ζを定義。ζ=De/2は証明。

最後に、既に初めの方で紹介したゲルの切断面の自己アフィンフラクタル解析について紹介。少し進めたが、時間が掛かりすぎて中断中である。断面に出てくるパターン自体の異方性が対象だったため、そこに自己相似フラクタルの解析ソフトを使えなかった。

最近感じた違和感(2)

2017年7月15日。

例の豊田議員たたき(例えは、これ)には、私はその法的安定さの欠如したやり方に違和感を感じている。

法の上位・下位を認識してないよう。高速道路を逆行したら、怒鳴るのは当たり前。殴ろうが、胸倉をつかもうが、危険回避を行うべき。それだけの緊急性がある。高速道路で逆行して正面衝突による心中を行う自動車に同乗させれているようなもの。殺人未遂かもしれない。危険回避するのに強硬手段に出るのは、正当行為。正当防衛である。暴行罪には問えない。

ここまでの文で気付かれたかたはおられるでしょう。キーワードは緊急性。つまり、危険回避の緊急性があって強硬手段に出るのは、正当行為。それがなくなった状況では、もはら怒鳴ることは許されない。まして、蹴るなんて。過剰防衛。

私の感じている違和感は、危険回避の緊急手段までもを世間がたたいていること。彼女が強暴だとしても、危険回避の緊急手段を否定する理由にはならない。人を見て、法の適用を変えているように見える。皆さん、もっと法律を勉強して下さい。いや、たたけるものはたたけ、か。

尚、誤想防衛も正当防衛の範疇に入りますので、相手が命や身体の危険を感じるのが当然だと判断する状況(よく出る例が、空の拳銃で相手を撃つ動作をして、相手に反撃をさせ「空だから命や身体に危険はおよばない」と相手の反撃を不当化しようとするもの)作って、相手に反撃させるのは、あなたの負けですので。

もう一つは、秘書が「下手をすれば殺人未遂」の危険なトラップを仕掛けたこと。緊急性のある間は、違法行為を保護する法律の適用はされませんので、暴行は成り立ちません。自分で「下手をすれば殺人未遂」の行為の記録を残しているんです。緊急性がなくなってからの暴行を想定してトラップを仕掛けたといたら、あっぱれなもんです。自分自身も高速道路で正面衝突して死亡する危険もあるトラップでもあるんです。社会的な生命だけなく、生物的な生命を掛けての「命がけトラップ」。

この秘書も「もっと法律を勉強して下さい」に入るとみなすのが、失敗の程度が酷すぎることから考えて、妥当かもしれない。しかし、彼女の凶暴さは、「命がけトラップ」に値するのかもしれない。

講義2 平成29年度 第11回目

2017年7月14日。

講義2の第11回目は、前半の試験。既に書いたように、基礎知識や概念、定義などを問う問題。前年度までだと、30分程度の試験時間の前半で退席する学生が半分はいるが、今年はほんのわずか。問題は、例年と同じレベル。ただし、高校で物理を取っている学生の雰囲気として、こまごまとした定義を教えるよりは、「論理を展開する and/or 式をいいじくり回す and/or 本質を語る」がやりやすかったので、この定義の書かせるのはやめようかなと躊躇して、やはりやめたろことはあった。

試験終了に休憩を挟んで、試験の解説、演習の講評。演習の講評に関しては、例年は論理性について話をしていたと思うが、それに重点を置く必要がなかったので、軽く済んでしまった。

最近感じた違和感(1)

2017年7月13日。

最近、違和感を感じることが幾つかある。

その1は「大学生の保護者」。未成年者に対しては、親が保護者なので問題ないが、成年被後見人でもないのに成年に対しても「保護者」ってのが使われている。

今は、成人していてもそんな言葉で大学生を都合よくあしらうのが時代なのかもしれないが。

さて、いくつまで最近感じた違和感をしるせるだろうか。

講義2 平成29年度 第10回目

2017年7月12日。

次回は、前半(熱力学第2法則まで)の試験。講義の最初に次回は前半の試験について、計算問題は出さない、基礎知識を問う(教科書の)穴埋め、用語の定義やその説明を出題します。

化学平衡の法則・質量作用の法則のあらましを再度の黒板に書いてから、標準生成ギブスエネルギーへ。これは、教科書ではプリムソルを付けたΔGの説明がしてあるが、前回の講義では、質量作用の法則の分母に標準圧力が来る形を避け、モル分率で質量作用の法則を表していたため。

平衡定数に出てくるΔGの計算を実験データから計算する方法の説明。まず、うっかり例として挙げてあるアンモニアの生成反応では、ΔGは反応の標準ギブスエネルギー変化ないしは標準反応ギブス自由エネルギーだといてしまい、訂正。標準生成ギブスエネルギーは単体から化合物を生成するときのギブスエネルギー変化なので、この反応の場合は表に載っているものがそのまま使えます。ところが、原系にも化合物が含まれ(生成系にも化合物が含まれ)る反応だと、標準生成ギブスエネルギーの表には載ってませんね。第一法則のところで、詳しくやりませんでしたが、ヘスの法則というものがありました。エンタルピーは状態量だから、経路Iでの反応熱(反応エンタルピー)は、その反応を経路II->経路III->経路IVで起こした場合の各経路での反応熱と同じでした。原系に化合物が含まれてる場合は、単体から化合物が生成する反応を加減して、その反応のギブスエネルギー変化を計算すればいいことになります。

ここでコメントを。皆さん、高校で化学はとっていないんですよね。ヘスの法則のところもそうでしたが、化学らしいですよね、泥臭いですよね。私は物理出身なので、物理系の熱力学の方が(頭に)すんなりはいるので、つい皆さんの顔色を見ながら、泥臭いところを避けるようにして来ました。用語に関しては、化学で使うものも試験には出します。

次に平衡定数の温度変化、温度依存性についてです。この節は、今までのように物理系の熱力学に戻った感じがします。ln K = -ΔG/RTの温度微分を計算するものです。平衡定数そのものを温度で微分するのではなく、対数微分を計算します。発見的なやり方をしましょう。dU=TdS-PdVから出発しましょう。dH=TdS+VdP、dG=-SdT+VdPですね。また、Gの定義はG=H-TSですが、dGの式の第一項から(∂G/∂T)P=-Sなので、H=G+TS=G-T(∂G/∂T)Pですね。既に、ΔH=-T2[∂(ΔG/T)/∂T](ギブス・ヘルムホルツの式H=-T2[∂(G/T)/∂T])とln K = -ΔG/RTから(d/dT)ln K = ΔH/RT2と答を書いていますが、惜しいですね。もし(∂G/∂T)P=-SのSの前がプラスだったら、G+T(∂G/∂T)Pで=[∂(TG)/∂T]P=Hですね。(符号の)間違いじゃないですよ。ln K = -ΔG/RTの温度微分を計算するのですから、G/TをTで微分してみましょう。∂(G/T)/∂T=[(∂G/∂T)T-G]/T2ですね。分子はG-T(∂G/∂T)Pと順番が違っていますので、マイナスが付きますね。ln K = -ΔG/RTの前にもマイナスありますので、・・・おっと、これで(マイナスが付くので)ギブス・ヘルムホルツの式H=-T2[∂(G/T)/∂T])が出てきたんです。既に最初に言っていますが、ln K = -ΔG/RTの前にもマイナスとΔH=-T2[∂(ΔG/T)/∂T]のマイナスが打ち消しあって、(d/dT)ln K = ΔH/RT2にはマイナスは出てきません(最初にマイナスがキャンセルすると言っておきながら、板書では誤ってマイナスを書いていますね)。

さて、物理的解釈です。ΔH>0の場合は、温度が上がるとKは大きくなるんですね。ΔHは反応後のエンタルピーから反応後のエンタルピーを引いたものですから、正のΔHは吸熱反応になりますね。温度を上昇させると、それを緩和するように吸熱反応が進むんですね。温度を下降させた場合は、逆に発熱の方向に反応が進むんです。教科書に書いてあるル・シャトリエの原理ですね。平衡定数の圧力依存性も全く同じです。浸透圧のところでファントホッフの式が出てきますが、平衡定数の変化を表す式にもファントホッフの名前が付いています。圧力微分の場合は、分子のGだけを微分すればいいので、直ぐにVが出てきます。式のこねくり回しに物理的なものを感じてホッしましたか、それとの物理的な解釈のところにホッとしまいしたか。

最後は熱力学と平衡定数の節。まず、反応が完全に右とか左に進んでしまうことがないことに言及。K = exp( -ΔG/RT)なので、限りなくゼロに近づいても(ΔGがひじょうに大きくても無限大になる反応はないから)K>0であり、ΔGが負で大きさがひじょうに大きくても(マイナス無限大のΔGの反応はなから)K<∞です。エネルギー的に反応が右に進むのが有利な場合も、必ず原系の成分がわずか残ってしまうんです。もうわかったでしょう。エネルギー的っていました。そう、エントロピーの効果で残るんですね。完全に反応が完了せずに、わずかに残っていた方が、混合のエントロピーが自由エネルギーを下げるんですね。

さて、今日は化学の流儀、物理の流儀って話を沢山しました。今まで機会を逸して来ましたが、化学ではヘルムホルツエネルギーにAを使いますが、物理ではFを使います。更に、Fと単に自由エネルギーと呼ぶことも多いです。先ほど、試験には計算問題は出さないと言ったときに、自分のレベルに合わない暗算を行う形の答案をクソ暗記して時間内に書き上げるのは有害だといいました。Aを使った答案をクソ暗記していると、同じ議論がFを使って行われたときに、同じものと認識できかったりするんです。翻訳を必要とする、と言った方がいいかも知れません。皆さんいは翻訳できる立場になって欲しいと思います。

フガシティーについて説明して終り。今まで理想混合気体(μiiプリムソル+RT ln (pi/Pプリムソル))について議論して来たが、非理想気体の場合はどうするか、と言う話し。これも、例えば相平衡の問題であれば、温度T、圧力Pと化学ポテンシャルμiが相の間で等しいことを議論すればよく、化学ポテンシャルをT,P,piの関数とみなそうが、T,P,xiの関数とみなそうが、関数が分かっていれば問題は扱えます。物理のセンスはそうですが、化学では ln (pi/Pプリムソル)の形にこだわるんですね。もはや理想気体ではないので、μiiプリムソル+RT ln (pi/Pプリムソル)が成り立たないところ、μiiプリムソル+RT ln (fi(pi)/Pプリムソル)とfi(pi)を定義して、この形を保とうとするんですね。fi(pi)=Pプリムソルexp(μiiプリムソル/RT)∝exp(μi/RT)なので、Kについて対数をとって議論してきたのの逆をやろうとしているともみなせます。私も物理の出身ですので、最初は戸惑いました。

博士前期課程講義 平成29年度 13回目

2017年7月11日。

今日の内容は、ランダム・ウォーク、レビー・フライト、DLA。

ランダム・ウォークについては、ランダムな高分子鎖の広がりないしはコンフォーメーションの模型として(習っている人は)習っているでしょう。回転半径(慣性半径かも知れません)が重合度nに比例する話です。第nステップでの位置をR(n)として、<R2(n)>-<R(n)>2=na2(aは格子間隔)を示した後、粒子の存在確率u(r,t)が連続極限(長時間経過後)に拡散方程式になることをまず示す。その後、空間フーリエ変換を使って拡散方程式をとく。確率分布u(r,t)がわかったので、時刻tに置けるr2の平均が計算でき、それがtに比例することがわかる。もちろん、これは<R2(n)>-<R(n)>2=na2と同じ意味の微視的な式。これから、ランダム・ウォークの軌跡のフラクタル次元はdw=2(空間の次元dによらない)ことが導出できる。

レビー・フライトは、ランダム・ウォークでステップあたりの移動距離が一定となっていた正弦を外し、べき分布としたもの。1<fw≦2ステップの長さsがSより小さい確率をP(S)=(S/a)fwとする(もちろんS≧a)。fw=1の場合は弾道模型なることをコメントし、fw>2nの場合はステップ長一定の場合のと透過である(「中心極限定理により」という難解なもの、とのこと)のコメントも。支配方程式をランダム・ウォークの場合と同じように連続近似して求め、それをフーリエ変換を使って解く。ただし、1次元の場合に限定。ポイントは、最終的に∂u~(q,t)/∂t ~ -qfw

u(q,t)を通じて、u~(q,t)=u~(q,0)exp(-Ddiffqfwt)となること。ランダム・ウォークの場合はu~(q,t)=u~(q,0)exp(-Ddiffq2t)であった。これからdw=fwが導かれる(積分してn ~ Rfwを示すのは困難)。異常拡散(平均二乗変位∝tβ)の話をして次へ。

DLAの実験例は既に挙げてある。少し補足をした後に、DLAのアルゴリズムラプラス方程式に基づいた解析について話。その後、DLAのフラクタル次元の定式を与えたToyoki and Honda (Phys. Rev. Lett.)の理論の紹介をして終了。

一杯まで掛った(30秒未満しか時間が余らなかった)。途中で休憩を入れて、測定中のサンプルのセッティングをしたかったが、とても無理。フーリエ変換を使って拡散方程式を解くことは、他の授業でも需要があるようで、講義終了後に「教えて下さい」という院生あり。