博士前期課程講義 平成29年度 4回目

2017年5月10日。

もう後半に入っている講義もあれば、この講義はまだ4回目なんだ。昨日の午前後半は博士前期課程の講義の4回目。デバイダー法/カバー法の演習。講義の後に実際の演習を行った。連続した曲線にもかかわらず、フラクタル次元が1以下となったって結果があって、ちょっと困った。

カントール集合を簡単に描いて、このような場合は、カバーの大きさεを小さくしたとき、「ぶち切れの線分」を覆うために必要なカバーの数Nの増加の指数は1より小さくなります。ぶちきれでない場合は、そうならないことはわかるでしょう、と。

山の端について(円での)カバー法を行い、半径によって傾きが変わる「ような」結果が出てきたのは、良かった。

最後には、海岸線について、1.3よりも少し小さい指数がでてきて、それを受講生に見せて(紹介して)、講義を終ることができた。収束して良かった。もちろん、発散させて終る、to be continuedで終る、ってのも必ずしも悪いやり方ではない。

講義1(前期開講分) 平成29年度8回目

2017年5月9日。

月曜の午後イチは、講義1。昨日は、講義(前期開講分)の8回目だが、前半の試験は一週間遅らせて実施するので、後半の1回目。毎回同じように紙に切り込みを入れ、底にレーザーポインターの光を通し、横に光が広がることを見せるのからスタート。縦に切り込みみを入れた場合、光は横に広がる。これが回折で、後半の主題。

先週出題しておいたレポートについて、演習と同じ間違いを犯して欲しくないので、注意点をプリントして配布。ただし、解説は来週の試験の後。さすがにnE=0だと、それをE=0と等価だとみなすことはないだろうが、外積だと三成分あるので、「これは、E=0と等価だとみなしている」というケースが生じ兼ねない。

偏光の右回りと左回りについて、教科書では図と本文に食い違いがあった。「私も先週は、演習の後にゼミがあって、講義までの間に休憩を入れられなくて疲れてしまって。この教科書の著者もこの部分を書いた時にそんな状態だったのかも。なんかわかるな。。。それではいけなくて、それがわかるから、講義では正しいことを言わなければ・・・」。

まず、光波限定なのか、電磁波共通なのか、波動共通なのか、それとも周波数が高い場合に限定なのか、いう話を初回と同様にする。ホイヘンスの原理ということで、波動共通だと言及。スカラー波近似というとも述べる。ホイヘンスの原理では後退波を排除できない欠点があることも言及。後半でやる回折理論では、それが解決されるとも。

回折積分は、グリーンの定理から入るのが定番。いつもは、ヘルムホルツ方程式の境界値問題をグリーンの定理を適用して解く、というい方をして入っている。今回は、開口面における振幅を足し合わせて、観測面における振幅を計算する、ということを先に言ってしまう。その後、ヘルムホルツ方程式に従う振幅の点Pにおける値を、点Pを内部に含む領域の表面における振幅がわかれば、表面積分によって計算できる、という定式化までを行って終わり。私の親切は、グリーンの定理における方向微分の説明を、点Pの回りの半径Rの球形の領域の表面S'の法線に対するものがすんなり理解できるよな定義式を書いていること。また、S'に渡る表面積分は、極座標で表して丁寧に行っている。

演習 平成29年度5回目

2017年5月8日。

これで私の担当分は最後(4回目)で、来週の試験を残すのみ。

本日の演習で感動したのは、コーシーの積分公式を使った解法が余りにも綺麗だったので、テキストを見たところ「N章の演習問題をN+1章のやり方でやっている」ことに私が気付き、「N章のやり方で解く別解があるはずですよ」とコメントしたことに対し、その演習問題をやった学生自身が留数定理を用いた解答を授業時間の後半に行ったこと。しかも、虚数単位iをどこかで忘れ、微妙な食い違いがあるところも、教員が「各自でチェックして下さい、として終わりましょうか」という姿勢になったにもかかわらず、修正もしてくれた。

また、別の問題で、計算ミスをしているのを指摘して修正させるコメントが「聴衆」から出たのも良かった。

一つ、難易度不足の問題の選択があったことは残念だった。

さて、どんな試験問題にしようか。

講義1(前期開講分) 平成29年度7回目

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2017年5月2日。

昨日の午後イチの講義は、後半が最悪。つまり、朝イチで演習、午後の後半にゼミ、其の後の午後イチの講義は、後半には疲れてしまって、些細なミスの修正をとっさにできない。

講義の前半は、何と・・・今まで教科書では「媒質1側から光波が入射し、媒質2との境界面で反射する」とし、媒質1側の屈折率n1が媒質2側の屈折率n2よりも大きな場合として全反射が扱ってあると信じきっていたところ、n2>n1となっていることに気付いてしまった。つまり、媒質2が入射波側。従って、スネルの法則は、n2sinθt=n1sinθt。全反射の臨界核は(sinθt=1から)sinθc=n1/n2。教科書でn1とn2が逆になっていて、式変形の途中で気付いて、修正。「今まで、教科書にこのミスはないと思っていました」です。同じ節の後半では、媒質1側から光波が入射することになっているのも気付く。「全てを統一的に修正することは、今はできないので、各自で確認しておいて下さい」です。グース・ヘンヒェンシフトについては、何とか終了。ポイントは、振幅反射率は、E(r)とE(i)を結び付ける係数で、それが正ならば位相は反転なくて、負ならば反転した。大きさ1の虚数の場合は、反射の位相シフトになる、ということ。

後半は、偏光状態の分類についての一般論。教科書が不十分なので、教科書を参照にしながら、もう少し本格的なもの。疲れてしまって、上手くできなかったのは、実は流儀の問題。講義の最初に、複素振幅をexpp(+iω・・・)とする流儀とexp(-iω・・・)とする流儀と両方ある。また、exp(iφ), φ=ωt - krの流儀とφ=kr - ωtのの流儀があり、初期位相もωtに負号を合わせる流儀とkrに負号を合わせる流儀がある、と言うことを述べてある。以下、光波の進行方向をz軸にとる。偏光状態を論ずる場合、後者に関連して、Δ = Φx - Φyとするか、Δ = Φy - Φxとするか。あるいは、Δの前に負号が付くか付かないかの場合が生じる。円偏光の右回りと左周りは、Δ=π/2+mπのmが奇数が偶数かに対応するが、流儀によって対応関係が逆になる。[Ex,Ey]=E[cos(φ'),sin(φ')]の形ならば左回り、[Ex,Ey]=E[cos(φ'),-sin(φ')]の形ならば右回りとなる(φ'=ωt -・・・)。mが奇数か偶数かは、従って、本質的ではない。教科書はΔの前がマイナスのものだが、自分のノートはプラスのものであって、奇数と偶数を数回書き直した。cos(φ'-Δ)=cos(φ')cos(Δ)+sin(φ')sin(Δ)なので、Δの前がマイナスの場合は、偶数が左回りで奇数が右回り・・・教科書は、図が正しくて、本文中の記述が間違い(写真は、"Optics" (Hecht) 3rd ed. p.321より)。紙面から光が観測者に向かって進行する方向に見て、右回り・左回りを定義する。

来年度は、同じ日に二つの授業を入れないようにしようと思う。時間割上、間に授業のない時間帯が挟まっていても、その時間に会議が入ったら休憩は挟めないことになるので。

演習 平成29年度4回目

2017年5月1日。

もう、5月ですね。クォーター制の授業の中間試験の時期にであること意味してもいます。

朝イチの数学演習。複素数複素関数複素関数微分複素関数微分のとろは、具体的な関数について、正則であることを確認したり、コーシーリーマンの関係式に関する計算を行う問題は、学生が選択しなかった(2問ともコーシーリーマンの関係についての一般論)。演習の説明を担当学生にやらせた後、具体的な計算で解けなかった問題があったら、試験に出てもいいようここでやりましょうとの問い掛けに、無反応。

複素数複素関数のところの一つは「一般的な公式の証明」の類。最初にやってくれた問題は、複素数zについいてz3=1の解を求める問題。「解をすべて求めよ」の意味を正確に把握していないよう。つまり、極形式で書くと、条件を満たす偏角θは無数にあることになる(e=1を満たすφは、φ=2nπでnは整数)。しかし、それらは3つの場合に分類できて、最終的には(例えば)θ=0、±2π/3で尽きている。いろいろな論理展開が可能ではあるが、複素平面上にzを表示すれば、一目瞭然。

午前の後半にゼミ。昼のミニゼミは欠席して昼食を取らないと、午後イチの講義に支障がでる。午前後半のゼミの続きを午後の後半に。その後、夕方には新4年生の歓迎会。タフな1日になる。

講義1(前期開講分) 平成29年度6回目

2017年4月27日。

昨日の午後イチは、講義1(前期開講分)の 平成29年度6回目。フレネルの公式のところを終らせ、エネルギー反射率・透過率へ。ブルースター角についても。更に、全反射のところへ。全反射は、当然、エバネッセント波とグース・ヘンヒェンシフトも(ただし、例年グース・ヘンヒェンシフトは第7回に行っていて、今年度も同様)。

前回の演習の秀逸さの影響、未だ覚めやらず。教科書では、TM偏光については磁場がy軸の負の方向を向いた図が書いてある。「流儀」に関する断りの説明を一切していないのは、ある意味で不親切、confusionである。ある意味では、間違いとも言えるので、そう解釈する学生もいるかもしれません。そんなコメントを加える。その後の講義は、良くない。「ことごとく書を信ずれば、書なきが如し」なので、教科書の内容を全て講ずることはしないが、強弱のつけ方が良くない。教科書の記述の一部をスキップするに当たって、記号・変数が少しconfusingになり、途中で修正した。また、sinとcosを逆に書いてしまい、後で訂正した。

前回、各自で宿題とした計算(添字1の方が前か、添字2の方が前か)だけでなく、それから係数をn/μにしたもの、更にそれに対して媒質1と媒質2の透磁率が等しい場合として教科書に書いてある式になることをまずサイドの黒板に書いて説明。その後に、具体的にn2/n1に数値を代入しての計算結果を示す。その箇所でブルースター角も全反射の臨界角も説明はする。もちろん、垂直入射に対して、TM偏光とTE偏光で符号が異なっていることも、再度念押し。

次にエネルギー反射率・透過率について。まず、光波の振幅は電場の振幅で現す流儀であることを再度述べた後、光強度が(屈折率)×(振幅)2に比例することの説明をポインティングベクトルSの計算に基づいた式を使って行う。電磁場のエネルギー密度に基づいた説明は、時間の都合上割愛すると述べる。当然、光束に垂直でない面を通過するエネルギー流速は、面法線nを使ってSnなので、nと光波の進行方向の単位ベクトル(波面法線)aの角度のコサインが掛って来る。時間平均を行うと係数1/2が出てくることの説明を行うが、その際に教科書の「振幅そのもものを観測できない」というところの説明をした。教科書にあるエネルギー反射率・透過率の説明に移る。エネルギー反射率については、屈折率もcosθも入射波と反射波で共通なので、振幅反射率を二乗するだけだという説明。エネルギー透過率に関しては、まず「屈折率に比例」から単に振幅透過率を二乗するだけではすまなくて、nが掛ってくると説明。次に、コサインは斜入射の効果で、入射波と反射波と違い、入射波と透過波で異なる、と言及。次にcosθiとcosθtがnとは逆になっているでしょう、と。図を描いて、斜入射の場合、斜に傾けば傾くほど境界面と光束の断面は広がり、単位面積当たりエネルギーの流れは小さくなる。と説明。

次にブルースター角。教科書では、エネルギー反射率の後で出てきていて、大抵がその順序で教えられています。つまり、TM偏光(P偏光)エネルギー反射率がゼロになる入射角という定義がされますが、既にTM偏光(P偏光)の振幅反射率がゼロになる入射角として説明済です。振幅反射率=0からブルスター角の式tanθB=n2/n1を説明します。TM偏光の振幅透過率の式の分子=0として、これを導出することもできます。しかし、大抵の教科書では、振幅透過率の式にスネルの法則を適用してn2/n1を消去した式で分母=無限大から導出しています。分母tan(θit)が無限大になるのは、θit=π/2のときですね。これと、スネルの法則の式から・・・ありきたりな説明で終り。

何とか後30分、全反射のところができる。全てはできません。幾何光学的には全反射が起きると透過波はなくなる訳ですが、マクスウェル方程式に基づいた理論では、完全にのっぺらぼうではありません。マクスウェル方程式の解としては、電磁場が存在するのです。もちろん、振動解、ある伝搬定数で伝搬する解ではありません。波動方程式を変数分離法で解いたとき、変数分離定数を-ω2とか-k2とか、負に設定しましたよね。これは、振動解を見つけたかったからです。今回は振動しない解、減衰解が出てきます。波数ベクトルの成分が虚数になることは、屁理屈ではなくて、このような物理を見ようとしているのです。kは、伝搬定数ではなくて、減衰定数という意味なります。・・・最後は時間切れで、「マイナスの方は、exp(-z/d)で減衰する形ですね。エバネッセント波といいます。減衰距離dは入射角に依存することは直ぐにわかりますが、分散関係を用いて波数kを使って書き換えてから、更に波長で書き換えれば、dが波長程度の距離であることがわかります。」で終了。

博士前期課程講義 平成29年度 3回目

2017年4月26日。

昨日の午前の後半は、博士前期過程の講義の3回目。身近なフラクタルの実例を実演。

液体糊に墨汁を垂らしても、フラクタルフラクタルもどきも生じない。墨汁も粘度が高いからだと予想される。墨流しは、次回の「デバイダ法」による解析の実習に使えそうなものができた。写真を撮らせ、次回にプリントアウトして持参するように指示。紙に墨汁を垂らすのは、少し難しい。撮影が難しい。つまり、垂らすとフラクタルパターンは生じるが、時間経過に伴って直ぐに鈍ってしまう。スマホのカメラを別の学生に構えさせ、鈍る前に写真を撮らせた。

フラクタルもどきでさえないが、フラクタル解析が使える例として、水と油を混ぜたものを皿に広げたものを見せた。様々なサイズの「油滴」が存在しているので、拡大縮小したときに同じパターンになるかもしれない、と思わせるもの。もしそうならフラクタルである。実際に過渡的なアイランド分布でそういうパターンは存在しても不思議ではない。理論的には、平衡二相界面は臨界点でフラクタルパターンとなる。これは、実演に先立って講義で述べた。実際のパターンを見せて述べたことは、アイランドサイズ分布という、フラクタル解析の手法が適用できること。

さて、次回も楽しく実習を行いましょう。