計算機実習 平成28年度その1の第1回目

2016年10月5日。

平成28年度の計算機実習の最初の授業。久しぶりに私一人での授業担当。担当教員のもう一人の助教の先生は出張で不在。また、理工学部改組で先行きが見えないなどの事情でTAも手配されていない。

久しぶりといえば、ブログ書き込みも久しぶり。

また、久しぶりに「プログラミング言語および演習」(2年生)の内容を忘れてしまっている学生がほとんど。私が一人で計算機実習のこの課題をやっていころと同じ状況。開講年次が4年生から3年生に変更になってから、c言語の基礎が忘却の彼方になってしまっている学生は激減していましたが。例えば、ブロックの最初に宣言文を書くことがわかっていない。printf文が第二引数以下を第一引数の形式で標準出力に出力することがわかっていない。比較の「==」と代入の「=」を区別することがわかっていない。

時間数が以前の7コマ(実習は1コマ=3講時)から5コマに減ってから、乱数については復習・予習との扱いとして来たが、本年度はそこからやらざるを得ない。実習の内容は二次元イジング模型のモンテカルロシミュレーション。乱数は、「いろはのい」。σ = +1とσ = -1の二次元配列を○と●で表示することまで、概ね終了した学生が何人か出た。そこで、次回はその次から開始することを授業の最後にアナウンスして終わり。

[0,1) の実数の乱数について、整数の乱数 rand() をdouble型にキャストしてからRAND_MAX で割ったものをdouble型の変数に代入するのが、初歩的かつ移植性も兼ね備えたやり方だと思う。main関数の外で[0,1) の乱数を返すdouble型の関数を定義するのも、移植性がありかつ発展性のあるやり方だと思う。[0,1) の乱数を rnd() としよう。授業のホームページのヒントでは、main関数の中で、rnd() = (double)rand()/RAND_MAX;と書いている。これは、移植性があるのか少し疑問(私だったら、この段落の前半に書いたどちらかを推奨する訳けで、実はこの記述はある時期に一緒に担当していた助教によるもの)。学生には、明日の午前中には授業のホームページに補足のヒントをあげる旨を述べてある。

講義2 平成28年度第16回目

2016年8月3日。

試験です。試験の後に、試験の解説、目標1のレポートに対するコメント、目標2の演習に対する講評、目標2のレポートについてのヒント。うっかり授業評価アンケートを忘れそうに。試験だけ受けて、早退した学生の中に、そのために出席率が60%未満になってしまったものがいたのは、困った。

目標1のレポートについては、問題を解くに当たって、あたりをつける、物理的なイメージを作る、と言ったことを行なうのがいい、ということ。それを行えば、熱力学第一法則のとこの負号のミスは気付くはず。

目標2の演習に付いては、被積分関数の式を一切書くことなく暗算で答えに至った形のものに対し・・・オンサガーというノーベル賞学者がいるんですが、彼の博士論文はレベルが高すぎて審査できなかったと言われています。10年とか20年に一人くらいは、そういう学生はいるんです。今ここにいる学生の8割くらいが、黒板に書いたP=・・・の式を一切書かなくても暗算できるとは到底思えない。もちろん、・・・のところを積分記号とdVの間に書かなくても、P=・・・と書いてあれば、暗算できる人はいると思いますが。試験やその他のレポートから判断すると、それさえも8割ってのは、どうも。

あと、レポートに関し、学位論文はself-containedに書くものであることを認識し、授業のレポートからそれを意識したらいい、と。授業のレポートに関しては、50人について参照を全てたどっていたら、教員の体が持たない、という実情も言う。

目標2のレポートのヒントとしては、部分モル量と化学ポテンシャルの定義式を使う問題であること、「偏微分の順序を変える」というマクスウェル関係式のところの操作を行うことを述べる。

講義2 平成28年度第15回目

2016年7月30日。

昨日。とうとう、来週の試験を残し、最後の回の講義。

沸点上昇と融点降下、浸透圧、活量が本日の節タイトル。

沸点上昇と融点降下のは、沸点上昇のみやる。よくそうしている。融点降下は氷に塩を掛けると0℃以下でになることを第一例に出し、他の例として融雪剤を挙げて終わり。ラウールの法則では、純物質の場合よりも混合溶液との平衡の場合は蒸気圧が下がることを表していた。これは、温度一定の場合の見方。温度を横軸に、圧力を縦軸に取った場合は、縦方向に見た場合。これを横方向に見てみようというイントロになる。蒸気圧の下降ΔPを沸点の上昇ΔTに直すには、クラペイロンの係数を掛ければいい。溶質が不揮発性の場合の希薄溶液と溶媒の蒸気の相平衡の問題を、相平衡の条件を解くというスタイルで扱う。ΔP=p溶媒-p溶媒*をラウールの法則を使って計算して、ΔT=|ΔP|×(dT/dP)共存も途中まではやる。その後、溶媒の化学ポテンシャルが気相と液相で等しい式を書き、気相は純物質のものと等しく、液相は理想溶液のものとして計算。

浸透圧については、まず野菜に塩を掛けると水が出る例を話す。。次に「溶質は透過しないが、溶媒は透過する」半透膜に着いて説明。そして、溶液と純水溶媒を半透膜を介して共存させると、溶液の方が「水が上がる」(溶液と純水溶媒に縦に管を挿した画書いて)ことを説明し、溶液の方が浸透圧πだけ圧力が高いことを説明。あとは、溶媒について両相で化学ポテンシャルが等しい式を書いて計算。最後は、教科書よりも少し進んで、π/c = RT(1/M+A2c+A3c2+...)までやる。

活量は、まず「順序としては、非理想系に対する扱いですね」から。fugacityのところの復習をし、fi ∝ exp[μi/RT]を強調。これと同じように、化学では「対数微分などと逆のやり方に相当する」化学ポテンシャルよりもそのexpで扱う流儀、ai ∝ exp[μi/RT]を説明。μi(T,pi) = C + RT ln f(pi/P)のは純物質の化学ポテンシャルμi* = μi(T,P)だったが、μi(T,P,xi) = C + RT ln f(a(xi))のCはどうだろうか? 溶媒ついては、理想溶液でも理想希薄溶液でもμ溶媒(T,P,x溶媒) =  μ溶媒* + RT ln f(x溶媒)なので(いずれの場合もラウールの法則が成り立つ)、C = μ溶媒*溶媒(T,P,1)とするのが対応が取れてよいことは明らかである。溶質については、理想溶液との対応を取るのがよければ(理想溶液に近くてそれからずれがあると見なすのがよければ)、同様にC = μ溶質*に取るるのがよい。理想希薄溶液との対応を取る方がいい場合はC = μ溶質0に取るるのがよい(プリムソルを0で代用)。前者をラウール・ベース、後者をヘンリー・ベースと呼びます。

もっと時間を余す積りだったが、レポートの問題を配布したら、一杯になってしまった。途中で雑談を挟んだので、半分はよしとするところ。雑談の一つは、浸透圧のファント・ホッフの式のところで、平衡定数の温度依存性のところでもファント・ホッフの名前が出てきたことに触れ、オランダのユトレヒト大学にファント・ホッフ研究所というところがあり、そこのグループはチームとして世界一のソフトマターの研究グループだと言うこと。私は、コロイドやゲルを研究していますが、それらや液晶等をソフトマターと言います。

講義2 平成28年度第14回目

2016年7月28日。

昨日は、講義2の14回目。昨年度は、最後の週は、関節状態が悪く、板書できなかったのでパワーポイント講義だった。本年度は、今は「でものはれもの」状態だが、板書できる。レポート等の採点は遅れている。

まず、液体の化学ポテンシャルの圧力依存性が無視できることと液体が非圧縮性であることが等価ではないことを補足。

次に、部分モル量。まず、理想混合気体や理想溶液の体積のadditivityについて思い出してもらう。それは、ΔmixV = 0 だから。非理想の場合は成り立たない。そこで、部分モル体積なるものを導入する。ギブス・デュエム関係式の導出のところと全く同じうに、温度T、圧力T、体積V、モル数n1、n2・・・の系をλ個合成することを考えましょう。体積についてλV(n1,n2,・・・) = V(λn1,λn2,・・・)が成り立ちますね。TとPは省略しました。ギブス・デュエムのところで行ったように、λで微分してから、最終的にλ = 1と置くなどとすると、同時式に関するオイラーの定理の形になりますね。V = Σ ni(∂V/∂ni)T,P,{nj;j≠i}。ここで、部分体積Vi = (∂V/∂ni)T,P,{nj;j≠i}を定義すると、理想的な場合と同だadditiveな形V = ΣniViになりますね。他の量に付いても同様に部分モル量が定義できます。既にギブスエネルギーGついてはやっていて、部分モルギブスエネルギー = 化学ポテンシャルですね。教科書には、内部エネルギーとエントロピーについてやってありますね。部分モル内部エネルギーの定義では、自然な変数がS,V,・・・なのに、モル数で偏微分を行うときにT,Pを一定に保ってることに注意して下さい。部分モルエントロピーについても同様です。Sについて、何が自然な変数化はdU = TdS - PdV・・・の式をdSについて解き直して見て下さい。他の量についても、全く同様です。部分モル量は「partial molar 何とか」って言います。分圧のことをpartial pressureというので、同類のものかと誤解しがちですが、異なるものです。ダルトンの法則に基づいて理想混合気体について定義されるものです。

その次に、理想希薄溶液。まず、理想溶液について、分子の大きさが等しいことと分子間相互作用が等しいことを復習。前者からΔmixV = 0、後者からΔmixU = 0が出てきて、混合のエントロピーΔmixS = -R Σ ni ln xiのみが残ることに言及(これも復習)。さて、この理想性が出てくるもうひとつの条件を考えましょう、というのがここでやることで、既にセクションたいとるから「希薄」ってわかりますね。その前に、理想溶液は、希薄のような条件に限定はありませんが、軽水と重水とか、メタとパラ(場合によってはオルソも入るかもしれません)とか、物質が限られてくるですね。ΔmixVとΔmixUが無視できて、ΔmixSのみが残るような度合いの希薄を無限希釈といいます。これは、どの物質にも存在します。さて、片方の系が微量な場合の混合を考えましょう。量の少ない方が溶質で多い方が溶媒です。簡単のために微量な分子を点で表します(もう一方はマル)。格子間に点が入る形になるので、微量な物質の体積分だけ体積は減少しますね。しかし、もう一方の物質の体積が十分に大きければ、その体積変化は無視できますね。次に、点の分子が混入したときのエネルギーを考えて見ましょう。(混入によって新たに増えた相互作用を表す線を既にある相互作用を表す線のある図に加え)エネルギーの増分も、元の相互作用を行っている分子対の数が十分に大きければ無視できますね。こうして、希薄な場合には理想的になることがわかりますね。従って、Δmixμi = RT ln xiが出てきます。さて、混合のエントロピーの効果に純物質の効果を加えたトータルの化学ポテンシャルを考えましょう。理想溶液の場合は、μi(T,P,xi) = μi* + RT ln xiで、 μi*は純物質の化学ポテンシャルでした(xi→0とすれば、ln 1 = 0 なので、μi* = μi(T,P,1))。理想希薄溶液の場合は、少し面倒なことになります。μi(T,P,xi) = C + RT ln xiとなりますが、定数Cの解釈が理想溶液のようには行きません。溶媒については、μ溶媒(T,P,x溶媒) = μ溶媒* + RT ln x溶媒です。なぜなら、希薄というのは、 x溶質~0、 x溶媒~1のことなので、 x溶媒→1の極限が取れるからです。溶質については、μ溶質(T,P,x溶質) = μ溶質0 + RT ln x溶質と書けますが、もうμ溶質0 は純物質の化学ポテンシャルとは解釈できません(プリムソルを0で代用)。 x溶質→1とすると、理想性は破れてしまいます。形式的に x溶質→1とすることはできて、左辺は μ溶質0 になりますが、右辺は化学ポテンシャルと解釈できない量になってしまいます。

最後にヘンリーの法則。この前に、演習のレポートを回収するのを忘れていたので、いまから提出して下さい。その後、○分から講義を再開しましょう、とする。さて、ヘンリーの法則は、理想希薄溶液と理想混合気体の相平衡の問題。溶媒と溶質について、両相で化学ポテンシャルが等しい式を書く。溶媒については、理想混合気体と理想希薄溶液(溶媒については、理想溶液と同じ)を用いて、ラウールの法則になることを述べる。溶質に付いてもほぼ同様だが、μ溶質*でなくμ溶質0となっていることが違う。μ溶質0は、純物質の・・・と言うような解釈のできない量だから、ラウールの法則のようには行かない。混合気体の成分iの分圧が溶液の成分iの濃度に比例するという結論だけになる。比例係数はHenry's law constant(おっと、講義ではrawと間違えていた)と呼ばれるが、これは実験的なもの・・・。組成-圧力の図の説明をして終わり。

予定通り定刻より5分くらい前に終了。Henry's law constantが実験的なものであることに関し、材料研究って、そんなもんですよ。原料の配合比をこまめに変えて、材料の物性がどう変わるかを・・・ってこと、私も来月末の共同利用ではやりに行きます。

講義2 平成28年度第13回目

2016年7月23日。

昨日は、講義2の平成28年度第13回目。

まず、クラペイロンの式の板書を開始時刻までにやっておく。これは、前回に板書のスピードが早くてノートテイクできなかったことを示す反応があったから。開始時刻を少し過ぎたので、出席を取ろうとしたが、その雰囲気でなかったので、少し説明。クラペイロン近似に着いても追加していたので、それに付いても言及。

また、「ロボットのように板書すると、分量は多く書けるが、それに関して、昨年度の授業評価アンケートでのコメントを思い出した。授業予定を印刷したものを配布するのがいいけれども・・・というコメントがあった。つまり、配布した授業予定の通りに授業を行うのは、予習の都合がよくていいが・・・と言うことだろう。そのためにロボットのように分量をこなすやり方はちょっと・・・と。そうならないようにしますね」とも。

さて、まずは理想溶液から。理想気体は希薄極限での漸近的性質なので、密なことが本質である液体でその性質が成り立つ、ってのは無理な話です。では、何が理想的何のか、まず理想気体の分子論的なところを。前回、合金に話をしましたよね。そこで、原子の大きさが近い場合には置換型合金になる話をしましたよね。分子の大きさが等しいことが、理想気体における分子の大きさがないこと対応します。A分子からなる物質とB物質からなる物質を混合したとき(置換型の合金の図を描いて説明)、ΔmixV = 0ですよね。わかる人にとっては、これで対応はわかると思います。先に「分子間相互作用が等しい」ことが、理想気体における分子間相互作用がないことに相当することを説明しましょう。また、そうすると、分子の大きさに関してもよりよく納得できるかもしれません。A-AのボンドエネルギーをεAA、B-BのボンドエネルギーεBB、A-BのボンドエネルギーεABとして(エネルギーが A-A + B-B と A-B + B-Aで等しい図を描いて)、2εAB - (εAA - εBB) = 0と明確に定義(「混合後 - 混合前」の流儀に従いましょう)。そうすると、混合してボンドが入れ替わったとき、ΔmixU = 0ですね(ΔmixV = 0に付いては触れず)。これで、混合のエントロピーの効果 ΔmixS = -R(nA ln xA + nB ln xB)のみが残残ることがわかりりますね。ΔmixH = 0は、エントロピーの付いて触れなくてもわかりますね。 ΔmixA = RT(nA ln xA + nB ln xB)もΔmixG = RT(nA ln xA + nB ln xB)も直ぐわかりますね。理想混合気体と同じですね。混合の化学ポテンシャルはΔmixμA = [∂(ΔmixG)/∂nA]T,PおよびΔmixμB = [∂(ΔmixG)/∂nB]T,Pで計算できます。これは、理想混合気体の場合と同じですが、そのときに丁寧にできませんでしたので、繰り返します。尚、モル数での偏微をとるときに、xA = nA/(nA+nB)およびxB = nB/(nA+nB)に注意しなければなりません。ここでは、G = Σniμiオイラーの関係式)に相当するΔmixG = ΣniΔmixμi = n1Δmixμ1 + n2Δmixμ2と比較してΔmixμi = RT ln xi (i=A,B)を理解して下さい。混合のエントロピーの効果と準部室の化学ポテンシャルを合わせて、全体のポテンシャルはμi(T,P,xi) = μi*(T,P) + RT ln xi となります。μi*(T,P)はln 1 = 0であることから、純物質の化学ポテンシャルμi(T,P,1) に等しい。

最後にラウールの法則。理想混合気体と理想混合溶液の相平衡の問題。また、相平衡か? そうで、章タイトルがそうだから。これに付いては、担当講師が私だから、と言う話をします。ということで、オリジナルのところは、シークレット。温度T,圧力Pでn成分系の理想混合気体と理想混合溶液が相平衡にある、と問題を規定。図を描いて両相の組成(モル分率)を書き込む。その後、両相の化学ポテンシャルが等しい条件を書き、その後化学ポテンシャルに理想気体および理想混合溶液の式を適用する。まず、気体の中の成分iの組成が溶液中の成分iの組成に比例する関係を導出する。その式の両辺に全圧Pを掛けて、最終的に「気体中の成分iの分圧が成分iの純物質の蒸気圧(温度Tにおける成分iの気液平衡の圧力)に液体中の成分iのモル分率を掛けたものに等しい」という結論に至る。どの教科書にも明確に「○○の近似を使う」と言うことは書いていないが、私はそれを明確にしています!(講義において学生に対しては、明確にします)、です。

講義2 平成28年度第12回目

2016年7月20日。

前回、うっかり「今日は演習をやる」って伝え忘れ。

さて、今日はまず相律(Gibbs phase rule)。c成分系でp相が平衡に

あるときの熱力学的自由度fを求める問題。まず、fの説明。独立な示強「的」変数の数。水と水蒸気の相平衡条件で、分量の異なる場合でも、例えば1気圧ならば沸騰温度は同じと言う例から、問題にしているのが示強変数であることを言う。蛇足で、沸点というのは、標準圧力におけるboling temperatureのことで、区別をするために沸騰温度と表現し、自由度1の線を点と誤解しないようにしたという。そして、示量変数のを密度量に直すとそれも「示強的」な振舞いをすること、具体的には多成分系を扱うのにモル分率を使ったことを説明。相平衡の条件を再度文章に表現した後に、それをc成分系のp相共存の場合について式で表現。まず独立な式の数を数える。次に、示強「的」変数の数を数え、引き算によって相律の導出は終了。次いで、c=1の場合に、p=1ならばf=2で温度とr力が独立に変えられ、p=2ならばf=1となってboing temperature Tb(P)のような自由度1の線になることを説明。p=3の場合はf=0だから自由度0の点。例として、三重点を説明。相律という形で、統一的にまとめられる。c=2の場合は、組成の自由度が入ってきて、三次元の相図となるが、例えば標準圧力である1気圧に限定して、三次元の相図の断面を見ることになる。

次の章は、二成分系の相平衡で、二成分系の相図の話。先立ってInGaNの組成不均一の話を出して、相図が材料創成のキーであることを強調。まずは全率型の相図から。いわゆる「てこの原理(てこの関係)」の説明は、相図を読むときのキーなので、全率型の場合を例に説明を行う。共沸はさらっと流す。上部臨界共溶温度は、すでにInGaNの例で説明済みだが、ここではエントロピー効果により高温で均一な混合によってエントロピーを得することによる自由エネルギー最小の現象だと説明。下部臨界温度の現れる物質もある。このタイプの相図でも「てこ」が成り立つ。次に共晶の説明。ここでも、「てこ」。そして、合金と溶液と区別せずに扱ったが・・・ということで、alloy、solid solution、mixed crystal混晶など、同義の言葉があり、liquid solution溶液に対してのsolid solution固溶体という見方を受け入れられると、同様であることがわかる、と。この節の最後に置換型合金と格子間原子型合金の説明を行う。もちろん、置換型合金のところでは不規則型と規則型があることも。

クラペイロン・クラウジウスの式の前に演習問題(レポートにするもの)を決める。

少し間が空いたので、後15分で一気にクラペイロンの式を終わらせます、と言ってはじめる。クラペイロンの式が一般的なもので、それにクラペイロン近似といわれるものを行うと、クラペイロン・クラウジウスの式になると述べる。二相共存曲線の傾きを表す式がクラペイロンの式ですと言って、まず温度T、圧力Pでのα相とβ相の二相共存を考える、と問題を定義。二相共存条件は・・・と言って、化学ポテンシャルが等しい式を書く。次に、ギブス・デュエム関係式を書き、化学ポテンシャルの温度微分がモルエントロピーで、圧力微分がモル体積で表されることをいう。そして、T+dT、P+dPにおける相平衡の条件を書き、「もう、dT、dPが小さいとして展開して、dPとdTの関係を求めることはわかるでしょう」と言って、時間がないから省略せずに全部式を書きますね、と進める。が、途中で学生から「あ、まだ消さないで」と言われ、頓挫。5分オーバーでクラペイロンの式の導出まで終了。反省があり、あらかじめ「β相が高温相で、高温相のエントロピーは低温相のエントロピーより低いから」と言って、ΔSをβ相のエントロピーからα相のエントロピーを引くように定義して、ΔS>0としておけばよかった。

 

講義2 平成28年度第11回目

2016年7月13日。

もう11回目か。早い。時間が速い。

目標1の試験をやった後に試験の解説。なので、目標1の8回が全て終了したことになる。11-8=3なので、目標2は8回のうち3終了で、あと4回講義をして、1回試験となる。

試験の解説の前に、集まりが悪かったので始められなかったので、かつてのの目標2のレポートについて触れた。マクスウェルの等面積則を「相平衡の条件から導出せよ」という問題をしばしば出している(化学ポテンシャルが等しいという条件のことですよ)。それを等面積の作図によって引かれる圧力一定の水平線と状態方程式の横Sの部分からなる「8の字を横に倒したような」ループが可逆サイクルであるとして等面積則を導出する(教科書にその演習問題がある)学生がいる、と言うコメント。題意に従わないことを「どうしてもこの理由で」というのを添え書きしてやるなら、受け入れます。いきなりだと、採点のときに戸惑うばかりです。

TAの学生に手伝ってもらったので、楽に済みました。